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嚢胞内腫瘍について

[管理番号:655]
性別:女性
年齢:49歳
はじめまして。
大変参考にさせていただいております。不安があるので質問させてください。
今年の3月、乳癌検診のマンモを撮った際、血性分泌があり、要検査となりました。
最初の診察では、マンモ、エコーともに腫瘍が見つけられず、3か月の経過観察。
6月の診察で再エコーを撮ったところ2ミリほどの影(黒いもの)を認め、
「診断のため(病変があるかどうか)MRIで確認させてください」とのこと。
MRIを撮ったところ、エコーでの影と同じ場所に病変が白く映っており(4ミリ位、白い丸にうつっていました)、
その日のうちに、もう一度エコーを見ながら確認し、その場で針生検となりました。
主治医の説明では「嚢胞」であり、それが血性分泌の出所だと考えられること、
嚢胞の中に腫瘍があると思われること、針生検で確定診断できるはず。
癌であった場合でもMRIを見る限りでは広がりがない早期のものであるとのことでした。
まだ、確定診断待ちですが、いろいろ調べるうちに不安になってきました。
お伺いしたいのは。
①主治医の説明の感じから、ほぼ確定しているような印象を受けたのですが、MRIと再エコーで、良性が悪性かのだいたいの診断はつくものですか?
それとも、嚢胞内腫瘍=悪性が多いのでしょうか。
②こちらでも「嚢胞」の針生検はがん細胞が散ってしまう?リスクがあるため、摘出生検すべきと記載がありましたが、バネ式のバチンバチンという針生検をしてしまいました。
これによって、せっかく非浸潤だったものでも浸潤癌になってしまったということはあるのでしょうか?
また、針生検をしたことによって、温存手術をした後の放射線治療は必須となってしまうのでしょうか?
実は、リウマチの疾患を持っており、(再発の可能性があったとしても)放射線治療はなるべく避けたいと考えています。
主治医はとても丁寧に説明をしてくれたのですが、針生検についてのリスクの説明はありませんでした。流れのままに嚢胞の針生検を受けてしまったことを、とても後悔しています。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「血性分泌」を伴う「嚢胞内腫瘍」
 本来の診断は 「乳管造影」⇒「乳管区域切除術」です。

回答

「血性分泌があり、要検査となりました。最初の診察では、マンモ、エコーともに腫瘍が見つけられず、3か月の経過観察」
⇒血性分泌があるのに、「乳管造影もせず」に経過観察は誤った診療です。
 早期発見の機会をみすみす見逃してしまうのです。
 ♯質問者に今更言っても勿論無意味ですが、このブログを見てくれた方達の今後の参考のために敢えて記載します。
 
「MRIと再エコーで、良性が悪性かのだいたいの診断はつくものですか?」
⇒形状でだいたい解ります。
 更に造影MRIであれば、Time Intensity Curveを用いると、その造影パターンで検討が付けられます。
 ♯ 血性分泌ということで「可能性が高い」と考えていることころもあるでしょう。
 
「嚢胞内腫瘍=悪性が多いのでしょうか」
⇒違います。
 嚢胞内腫瘍の大部分は乳管内乳頭腫(良性)です。
 
「せっかく非浸潤だったものでも浸潤癌になってしまったということはあるのでしょうか?」
⇒これは(多くの方が陥る)勘違いです。
 非浸潤癌は間質浸潤する能力が無いものであり、「遺伝子変異で浸潤能を獲得しない限り」浸潤癌にはなりません。
 「乳管を針で破って」癌細胞が外に出ると「浸潤癌になる訳ではない」のです。
 ○それでは何故「嚢胞内癌を針生検すべきではないのか?」というと、「嚢胞内容液と一緒に、癌細胞が拡がる」リスクがあるからです。
 ♯拡がったとしても「浸潤癌になる訳ではありません」あくまでも非浸潤癌が拡がる可能性です。
 
「針生検をしたことによって、温存手術をした後の放射線治療は必須となってしまうのでしょうか?」
⇒必ずしもそうではありません。
 実際には「切除範囲を大きくする」工夫が必要となるでしょう。
 
 

 

質問者様から 【質問2 嚢胞内腫瘍について】

お忙しいなか、早速ご回答いただき、ありがとうございます。
嚢胞が破れて外に出たとたん、「非浸潤」が「浸潤」になるわけではないのですね。
まさに思い込みでした。
また、MRIの画像からも良・悪性のおおよその判断がつくとのこと、
覚悟を決めて確定診断を待つしかないという心境ですが、まだ落ち着きません。
①先生のご回答に、「(放射線なしの場合は)切除範囲を大きくする工夫」とありますが、
切除すべきリスク部分は、執刀されるドクターは手術時に見てわかるものなのでしょうか?
②「血性分泌についての緊急告知」を読みました。
50歳以上は乳癌>乳頭腫、とありましたが、それは統計的に年齢が上になるほどその
割合が高くなるということですか? それとも、「閉経前」「閉経後」でその割合が逆転
するということなのでしょうか? 49歳なので気になりました。
③主治医は、針生検で「これで白黒つく」と考えていらっしゃるようでした。
でも、小さな嚢胞内腫瘍は判断が難しいときいて心配です。
「良性だった場合は、手術などはしません」と最後に一言、おっしゃったのですが、
もし針生検で「良性」となったら、それを確定診断として問題ないのでしょうか?
質問ばかりで申し訳ありません。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 「血性分泌を伴う嚢胞内腫瘍」ですね。

回答

「切除すべきリスク部分は、執刀されるドクターは手術時に見てわかるものなのでしょうか?」
⇒わかります。
 特に「嚢胞内腫瘍」は「境界が解り易い」ので、そこから「指1本分」とか「2本分」とか「大きく切除する」わけです。
 
「統計的に年齢が上になるほどその割合が高くなるということですか? それとも、「閉経前」「閉経後」でその割合が逆転するということなのでしょうか?」
⇒そのような統計学的データはありません。
 あくまでも「私の臨床的経験」からです。
 そもそも「50歳以上」で「新たな腫瘍」ができる際には「乳癌が多くなる」ことも明らかです。
 
 無論「閉経前後」で分けても「差は出る」と思いますが、明確に「閉経前後で逆転」という訳ではないと思います。
 「癌>乳管内乳頭腫」となる正確な年齢は50歳代くらいだと思います。(データは無いのですが)
 
「針生検で「良性」となったら、それを確定診断として問題ないのでしょうか?」
⇒結果によります。
 ①完全な良性 ほぼ良性と考えていいと思います。
 ②鑑別困難(この場合は「摘出生検を勧める」とか、「要経過観察」などの病理医のコメントがつきます) これはやはり摘出するべきでしょう。