[管理番号:7077]
性別:女性
年齢:64歳
病名:乳腺 トリプルネガティブ ステージ1a
症状:術後1カ月
いつもこちらのサイトを読んでは色々勉強させていただいています。
この度は質問の機会を与えていただき、ありがとうございます。
64歳の母のことで質問です。
11月初旬に乳ガンの告知をされ、
手術で全摘出後、本日病理検査の結果が出ました。
病理結果:Invasive ductal
carcinoma, tubule forming
type, of the right breast
, mastectomy rt, C, f,
ly0, v0, Tis(+), EIC(-),
comedo(+), ductal spread
slight, 浸潤径16×15mm,
HG(2,3,3), N-SAS 3, B&R
3, pN0:0/3 SLNs, ER(-)
0%, PrR(-) 0%, HEAR2
score 0, Ki-67 40%
脈管侵襲 血管やリンパ管への広
がり なし
ステージ1a
トリプルネガティブのため1月末より抗がん剤TC 4回予定です。
1.今後の治療に問題はないでしょうか。
6カ月コースのほうが再発率を下げれますか?
2.母の無再発率、生存率は抗がん剤をした場合としない場合ではどれくらいになるでしょうか?
主治医がステージは低いがトリプルネガティブでグレート、Kiともに高いため抗がん剤をして50%上乗せだとおしゃっていました。
とういうことは仮に無治療の場合の無再発率は、ステージ1なのに50%しかないということでしょうか。
母は自分がトリプルネガティブであることを凄く気にしています。
先生がいつも予後はステージで決まる、トリプルネガティブを悪者にしてはいけないとおっしゃっていられるので、その言葉を信じて母を励ましています。
なぜみなさんトリプルネガティブにマイナスイメージを与えようとするのでしょうか。
お忙しい中申し訳ありませんが、
ご返信よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
時々コメントしていますが…
サブタイプの概念が入ってきたのは、この20年の話です。
それまでは至ってシンプルに「1期(リンパ節転移もなく、腫瘍径も小さい)」に抗がん剤をするという発想自体ありませんでした。
つまり、20年前だったら、質問者(の母)は主治医から「早期でよかった! 無治療です」と100%間違いなく言われていたのです。
(それで)20年前に、そのような患者さんが沢山再発したのか?
全くそんなことはありませんでした。
その当時の診療を知っている私からみると、「サブタイプの概念が出たからって、
(早期がんに対して、「トリプルネガティブだ!悪者だ!」などと)急に掌を返すような扱いをすること自体、全くナンセンス」と感じます。
★実臨床を知らない(経験不足の医師や、若手の頭でっかちな医師達)が、今回のように騒ぎ立てることは極めてナンセンス!(私にとっては)不愉快とさえ言えます。
「1.今後の治療に問題はないでしょうか。」
→標準治療は「アンスラ(3M)-タキサン(3M)」です。
年齢を考慮してのTCなのでしょう。
「「6カ月コースのほうが再発率を下げれますか?」
→実際は、殆ど影響ないでしょう。
「2.母の無再発率、生存率は抗がん剤をした場合としない場合ではどれくらいになるでしょうか?」
→ 私の主観ですが…
しなかった場合(無再発生存)85% →すると92%
この数値のイメージは(サブタイプに応じた標準治療を行えば)ステージ1は(サブタイプに関係なく)90%以上となる+抗がん剤は(トリプルネガティブにおいては)再発率を半分近くにする
「仮に無治療の場合の無再発率は、ステージ1なのに50%しかないということでしょうか。」
→とんでもない!!
(もしも、そんなことがあったら)20年前の現場は大騒ぎとなってしまいます!!
「なぜみなさんトリプルネガティブにマイナスイメージを与えようとするのでしょうか。」
→これには3つの背景がありそうです。
1.「新しい治験」(20年だから「新しい」は言い過ぎですが)や「専門的」なことを、強調したがる。(医師が多い)
→「早期だから大丈夫です。」と言うよりも、(「私は詳しいことを知っているのだ」とばかりに)「あなた方、素人には解らないでしょうが、トリプルネガティブとは…」みたいに、言うことで「箔がつく」と考える人は多そうですよね?
2.実際に(ある程度進行している場合:イメージとしては3期以上)抗がん剤をしない場合には再発率は高いと思います。(抗がん剤をすることで、他のサブタイプと同等となるのです)
3.実際に診療していて実感するのは、(初診時に)ある程度進行した乳癌を診た際に、「ルミナールタイプだと、数年放置」もザラですが、「トリプルネガティブの中には、急速に大きく(「シコリを自覚して1か月で明らかに大きく」みたいな)ケースもある」のです。
→「後者」を実際に経験すると、(一部の印象に引っ張られて)、我々乳腺外科医の頭の中で「トリプルネガティブは手ごわいな」というイメージが作り上げられていくのです。
★ただし、実際に最も重要なのは「トリプルネガティブは、単一の集団ではない」ということです。
例えば「ルミナールタイプ(ER, PgRが陽性)」とか、「HER2タイプ(HER2が陽性)」のように、(臨床的に)大変大きな特徴を持った集団として(立派に)一括りにできるのですが…
一方で「トリプルネガティブ」は上記に当てはまらない(ER,PgR,HER2が陰性)ことだけが共通である「雑多な集団(これから医学が進歩することにより細分化していく筈)」なのです。
◎結論からいえばトリプルネガティブは
1.その中には「抗がん剤が著効」する群もあるし、「抗がん剤が全く無効」な群も当然混じっているが、(現時点では「それを区別することができない」以上)、標準治療として(現時点では)抗がん剤をせざるをえない(必須である)
2.その中には(たしかに)急速に増大して予後が悪い群が混じっているが、(当然ながら)「とても予後がいい群」も混じっている。
もうひとつ個人的印象をお話すれば…
(トリプルネガティブの中でも)本当に予後の悪い群は、おそらく(早期である時期が、極めて短い:あっという間に増大し転移するので)早期で見つかるケースが少ないのでは?と考えています。
つまり、(裏を返せば)早期で見つかった時点で「予後良好群」と言ってもいいのです。
質問者様から 【質問2 】
転移の可能性について
性別:女性
年齢:65歳
病名:乳癌 トリプルネガティブ ステージ1
症状:耳鳴り、めまい、嘔吐
昨年母が乳癌になった際、こちらに質問させていただいたきました。
あれから1年が経ちました。
田澤先生の言葉に母も元気をもらい、
一生懸命治療に取り組んできました。
本当にありがとうございました。
その母のことでまた質問させてください。
12月初旬から耳鳴りめまいがするとのことで、病院を受診しましたところ、
突発性難聴と診断されました。
その後、ステロイドの点滴を1週間、ステロイドの錠剤を1週間服用し、
現在回復傾向にあります。
またステロイドの点滴後、胸やけと嘔吐が数日ありました。
今はその症状も軽くなっています。
主治医に乳癌のことも伝えており、転移とは関係ないと言われましたが、
心配で質問させていただきました。
上記のような症状は脳転移した際に起ったりするのでしょうか。
また、耳鼻科の主治医から、「何千人に一人、脳腫瘍から同じような症状を発する人がいるので、安心のためにもMRIを受けた方がいいでしょう。」
と言われ、来週の火曜日にMRIを受ける予定となっております。
万が一脳転移の場合、MRIでわかりますか?
現在は少し体力が落ちてるものの、仕事も家事も普通にこなしています。
あまり考えすぎないほうが良いでしょうか。
お忙しい中申し訳ございませんが、先生の見解をお聞かせください。
宜しくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「上記のような症状は脳転移した際に起ったりするのでしょうか。」
→典型的ではありません。
「万が一脳転移の場合、MRIでわかりますか?」
→解ります。
「あまり考えすぎないほうが良いでしょうか。」
→素直に…
耳鼻科医のいう事を信用しましょう。
質問者様から 【質問3 】
トリプルネガティブ ステージ1 母親の術後経過について
性別:女性
年齢:66歳 母親
病名:乳がん トリプルネガティブ ステージ1 全摘
症状:全摘後にできたデキモノ?しこり?
投稿日:2020年8月28日
管理番号:7077
田澤先生、気になることがあり再度質問させていただきます。
お忙しいところ申し訳ございませんが、宜しくお願いいたします。
66歳の母の術後経過についてです。
1週間前の8/(下旬)に定期検診があり、エコーはせず先生の触診と血液検査を受けました。
その時は、触診に関して特に問題なしという結果でした。
昨日8/(下旬)の夜、お風呂上りに手術の傷痕の10センチほど下に赤いできものがあると母が言ったので、私も確認してみましたが素人の私にはもちろん良くわからず、本日8/(下旬)に再度受診しました。
主治医にこれですと指差しして説明しました。
先生の見解は、「手術の後、管を通したときにできた傷痕です」とのことでした。
次の11月の定期検診でも変化がないか見ておきましねとおっしゃっていました。
またこの時、血液検査の結果も聞かされ、問題なしでした。
今日その赤いできものは肌の色に戻っており、どちらかというと針で刺したような凹みがあることに気づきました。
私は母から受診時の話を間接的に聞いただけですが、主治医の先生がおっしゃっていることが正しいんだろう思いました。
しかし母はかなり心配症で、今まで一度も気にならなかったのに本当に傷痕なのか、よく触ってみると小さなしこりのようにも感じると不安がっています。
また、主治医がエコーをせずに見ただけでそのように答えたそうです。
これだけの文章で伝わりにくいかと思いますが、先生の見解を聞かせていただけないでしょうか。
この母が気にしている傷?しこり?は局所再発の可能性はありますか?
また、最近定期検診でもエコーをせずに触診だけだと言っていましたが、
エコーは毎回しなくても大丈夫なんでしょうか。
(次の11月の検診は2年検診になるので、エコー・マンモを行うそうです)
田澤先生から 【回答3】
こんにちは田澤です。
「これだけの文章で伝わりにくいかと思いますが、先生の見解を聞かせていただけないでしょうか。」
⇒主治医は無論ドレーンの位置を覚えているわけだから、「手術の後、管を通したときにできた傷痕です」で正解だと思います。
質問者様から 【質問4 】
トリプルネガティブの抗がん剤
性別:女性
年齢:66歳
病名:トリプルネガティブ乳がん ステージ1
症状:
投稿日:2020年10月16日
いつも少しの疑問でも親身になって回答していただき、本当にありがとうございます。
母のことで再度質問させてください。
トリプルネガティブ乳がんを患い、2年が経ちました。
今のところ再発せずに元気にしております。
母が受けた抗がん剤の種類について疑問があります。
母はTC療法×4クールをしましたが、トリプルネガティブの場合
標準治療はアンスラ(3M)-タキサン(3M)ですよね?
田澤先生も年齢的にTCにされたのだろうとおっしゃっていましたが、
トリプルネガティブにTC療法はあまり効かないと耳にしました。
(すみません、ネット情報です)
それならば無理にでもアンスラ(3M)-タキサン(3M)をしたほうが、再発率が下がったのではないのだろうかと不安に思えてきました。
トリプルネガティブでもTC療法はある程度有効なのでしょうか?
主治医は再発した際の最後の砦として、アンスラ(3M)-タキサン(3M)を残したのかなと考えてしまいますが、考えすぎでしょうか・・・
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「トリプルネガティブでもTC療法はある程度有効なのでしょうか?」
⇒その通り。
今更考えることではありません。
「主治医は再発した際の最後の砦として、アンスラ(3M)-タキサン(3M)を残したのかなと考えてしまいますが、考えすぎでしょうか・」
⇒考えすぎ!
質問者様から 【質問5 】
左肩甲骨から腕の痛み
性別:女性
年齢:67歳
病名:トリプルネガティブ、ステージ1
症状:左肩甲骨から腕に痛み
投稿日:2020年12月21日
田澤先生、いつも質問に答えていただきありがとうございます。
本日もお忙しい中申し訳ございませんが、宜しくお願いいたします。
母のことで気になることがあります。
2年前にトリプルネガティブ(ステージ1)になり、
11月の2年検診は問題なくクリアしました。
2年検診とちょうど同じくらいから、左肩甲骨が痛いと言っては整骨院に通っていましたが一向に良くならず、
腕にまで痛みが出てきました。
今は肩甲骨は少しマシになり、腕の方が痛いそうです。
我慢できないほどの痛みではないらしいのですが、
なんとなく重いビリビリする、という感じです。
先日整形外科に行ってきて、レントゲンを4枚撮りました。
整形外科の先生は、レントゲンを見る限り骨に異常はないが、母の首が元々人より長く、肩こりから来ているとおっしゃっていました。
その場で注射を打っていただき、痛み止めをもらいました。
痛み止めを飲むとだいぶマシになるそうです。
そこで田澤先生にお伺いしたいのですが、レントゲンで骨転移かどうかはわかるものなのでしょうか?
また、もしも骨転移だった場合、痛み止めを飲んでも良くはなりませんか?
私はかなり心配性なので、大きな病院で骨シンチの検査をしたほうがいいのではないかと思っていますが、そこまでしなくてもいいでしょうか?
田澤先生の見解をお聞かせいただければと思います。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは田澤です。
「そこで田澤先生にお伺いしたいのですが、レントゲンで骨転移かどうかはわかるものなのでしょうか?」
⇒解ります。
特に痛みの原因となるほどの転移であればXpで解ると思います。
整形外科医のいう事を信用しましょう。