[管理番号:176]
性別:女性
年齢:48歳
質問者様の別の質問質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。 |
お世話になります。
多忙の中このような質問コーナーまで対応していただき、乳がん患者としては本当にありがたいです。下記質問をしますのでご回答を何卒よろしくお願いします。
2013年9月に左乳房切除手術を受けました。ステージ2a(2.2cm)でリンパ転移なし。ルミナルAとのことです。ノルバデックスを飲み始めて1年3ヶ月になります。
ところが手術前は毎月(多少不順)あった生理が手術後(ノルバデックス飲み出してから)止まり、先日の受診でホルモン値も低い状態が1年続いております。
(質問)
- ノルバデックス飲み出してから生理が止まったのですが閉経とみてアリミデックスへの変更をして良いのでしょうか。それとも48歳という年齢から閉経前後としてノルバデックスを続けた方がいいのでしょうか。もし続けるとしたらあと何年くらいでしょうか。
- 閉経後も使用できるノルバデックスを2-3年続けた後にアリミデックスに変更した場合と、閉経後はすぐにアリミデックスに変更した場合と予後に違いはあるのでしょうか。
- アリミデックス5年を終了後はどのような治療が考えられますか。
以上、お忙しいところ恐縮ですがよろしくお願いします。
(2015年3月の質問)
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「ルミナールA術後、内分泌療法中」ですね。
閉経前投与されていたタモキシフェンを閉経後にアロマターゼインヒビター(アリミデックス、アロマシン、フェマーラなど)に変更することについては幾つか臨床試験があり「ある程度のコンセンサス」が得られています。
それでは回答します。
回答
「ノルバデックス飲み出してから生理が止まったのですが閉経とみてアリミデックスへの変更をして良いのでしょうか。」
⇒閉経とみて、アロマターゼ阻害薬(アリミデックスなど)へ変更すべきです。
閉経の定義は「1年以上月経をみない場合」となっており、更に「ホルモン値が低い状態が1年続いている」ことも確認されています。
ノルバデックスには「抗癌剤やゴセレリンとは異なり」卵巣機能抑制効果は無く、(薬剤による閉経ではなく)自然閉経と判断します。
※「抗癌剤(卵巣機能抑制)による」閉経の場合には、アロマターゼ阻害薬を使用することで「月経回復」が起こり、かえって悪影響を及ぼしますが、今回はあくまでも「自然閉経」と考えます。
※たしかに「48歳という年齢」ですが、「血中ホルモン値」もチェックされ、「自然閉経」として問題ありません。
「閉経後も使用できるノルバデックスを2-3年続けた後にアリミデックスに変更した場合と、閉経後はすぐにアリミデックスに変更した場合と予後に違いはあるのでしょうか。」
⇒アリミデックスの投与年数によります。
- (ケース①)ノルバデックスとアリミデックスの合計で5年とした場合
⇒ノルバデックスを2-3年投与してアリミデックスに変更して合計で5年ならば⇒すぐにアリミデックスに変更して合計5年の方が予後良好です。
- (ケース②)(ノルバデックスの投与期間にかかわらず)アリミデックスを5年間とした場合
⇒このケースでは(アリミデックス投与が5年間と同じ場合での)ノルバデックスを2-3年追加投与した事がどの程度の意味があるのか?
となりますが、実はこのようなケースでのエビデンス(証拠)はありません。
※ 参考となるのは
タモキシフェン5年vs タモキシフェン⇒アロマターゼ阻害薬(計5年)
タモキシフェン⇒アロマターゼ阻害薬(計5年)vs アロマターゼ阻害薬5年
タモキシフェン5年vs タモキシフェン5年+アロマターゼ阻害薬(5年)
●私の印象では(アリミデックスを何年間内服するかは別として)「ノルバデックスを2-3年投与してからアリミデックス」よりも「すぐにアリミデックスへ変更」の方がいいと思います。
「アリミデックス5年を終了後はどのような治療が考えられますか。」
⇒更なるアリミデックスの継続が候補となります。
現在アリミデックス5年vsアリミデックス10年の臨床試験が我が国で進行中です。
この結果によっては、「アリミデックスをそのまま10年間継続」となるかもしれません。
質問者様より 【質問2】
超多忙の中、早速の丁寧なご回答をいただき感激しました。本当にありがとうございます。
また質問がありますのでよろしくお願いします。
- 先生の印象ではすぐにアリミデックスに変更した方が良いとのことでしたが、それは1年以上ホルモン値が低く生理が無いという理由からでしょうか。
- アリミデックスの副作用で肝機能悪化が一番重篤そうですが、どのような症状が出た場合に乳腺外科を受診すべきでしょうか。またはかかりつけ医院などで先に診てもらってもいいでしょうか。(予約外診察は主治医が多忙のためご迷惑になることが多いです)
- ノルバデックス服用開始時に筋肉痛、関節痛が非常に強く、やっと最近緩和してきました。女性ホルモンは既にかなり低い状態ですが、アリミデックスに変更した場合、関節痛などの副作用はまた新たに出ることはありますか。
副作用を気にしていては治療はできないと思うので薬剤変更にためらいはないのですが、お聞きしたく。よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
せっかく慣れてきた「ノルバデックス」を「アロマターゼインヒビター」へ変更することに対しての不安だと思います。
それでは私の経験から回答します。
回答
「1年以上ホルモン値が低く生理が無いという理由からでしょうか。」
⇒閉経状態(自然閉経)と判断したからです。
※閉経前の患者さんが「ノルバデックス」を内服して「ある一定期間して閉経状態」となった際に、そのまま「ノルバデックス継続」よりも「アロマターゼインヒビターへ変更」の方が明らかに有効であることが臨床試験より解っているからです。
★前回回答したように、「更にノルバデックスを1~2年継続した後、アロマターゼインヒビターを5年」という選択肢が検討されていないのですが、閉経が確認された場合には「ノルバデックスをアロマターゼインヒビターへ変更」することが推奨されていることは確かです。
「アリミデックスの副作用で肝機能悪化が一番重篤そうですが、どのような症状が出た場合に乳腺外科を受診すべきでしょうか。またはかかりつけ医院などで先に診てもらってもいいでしょうか。」
⇒実際のところ、肝機能障害は殆どありません。
私の経験上、「もともと脂肪肝などで肝機能予備力が低い」方ではごく稀に「肝機能障害」が出ることはありますが、「もともと正常の方」に肝機能障害が出ることは ありませんでした。
回答
「1年以上ホルモン値が低く生理が無いという理由からでしょうか。」
⇒閉経状態(自然閉経)と判断したからです。
※閉経前の患者さんが「ノルバデックス」を内服して「ある一定期間して閉経状態」となった際に、そのまま「ノルバデックス継続」よりも「アロマターゼインヒビターへ変更」の方が明らかに有効であることは臨床試験より解っているからです。
★前回回答したように、「更にノルバデックスを1~2年継続した後、アロマターゼインヒビターを5年」という選択肢は検討されていないのですが、閉経が確認された場合には「ノルバデックスをアロマターゼインヒビターへ変更」することが推奨されていることは確かです。
「アリミデックスの副作用で肝機能悪化が一番重篤そうですが、どのような症状が出た場合に乳腺外科を受診すべきでしょうか。またはかかりつけ医院などで先に診てもらってもいいでしょうか。」
⇒実際のところ、肝機能障害は殆どありません。
私の経験上、「もともと脂肪肝などで肝機能予備力が低い」方ではごく稀に「肝機能障害」が出ることはありますが、「もともと正常の方」に肝機能障害が出ることは ありませんでした。
と、いうことで肝機能障害はそれほど心配は無いと思います。
ただ、念のため「肝機能障害」について記載します。
「肝臓は沈黙の臓器」と呼ばれているのはご存じでしょうか?
つまり、よほど肝機能障害が進まない限り症状はでません。
肝機能障害が出る場合:症状は「だるさ、易疲労感」但し、このような症状が出る前に「採血検査」でチェックが必要です。
★つまり、「アロマターゼ インヒビターへ変更」したら1か月後に「採血で肝機能チェック」すれば良いのです。
肝機能障害はそれでOKです。
実際に多い副作用は圧倒的に「起床時の手指の痺れ」です。暫く動かしていると軽快します。
その他は「骨密度の低下」ですが、これは1年に1回のチェックが必要です。
あと、「珍しい副作用ですが、 中止せざるを得ない」副作用としては「味覚障害」があります。
◎「だるい」とか「味覚障害」があるときには、「乳腺外科を受診」して薬剤の変更などの相談が必要となります。
「アリミデックスに変更した場合、関節痛などの副作用はまた新たに出ることはありますか。」
⇒(起床時の)手指のこわばりはあるかもしれませんが、全身の関節痛はそれほど無いと思います。