[管理番号:4849]
性別:女性
年齢:49歳
田澤先生こんにちは。
この様な質問の機会を与えていただけて、うれしく思います。
質問ですが、私はH21年3月に乳癌のオペをしました。
オペ前の診断が左非浸潤癌、オペ後の病理結果は非浸潤癌11cm×10.5cm、浸潤癌(乳頭腺菅癌)0.5cm×0.4cmが1個あり。
リンパ節転移、脈菅浸潤なし。
高度ホルモン反応性、グレード2、ハーツー染色法1+で扇状切除(非浸潤癌が乳頭まであり、乳首も切除しました)、断端2箇所陽性で放射線治療を6週間行いました。
去年の7月にオペした病院でマンモ施行した時は異常無しでしたが、通院中のクリニックでの採血で去年8月、
1型コラーゲンCテロ3.7→先月4.4 CEA1.5→2.2 CA15-3 28.2→55.9と上昇、とても不安になり3日前に知り合いの呼吸器内科のドクターのクリニックで全身の単純CTを撮影してもらい、残存乳房に石灰化があると言われました。
また左リンパ節が2~3個腫脹しているといわれました。
ただ、左脇はセンチネル後、副乳見たくなっており、就寝時左向きで眠る事が多く、時々脇の下が筋肉痛の様に痛くなります。
また、4/(下旬)日に飼い犬(室内犬に左手掌と左肩の下(丁度筋肉注射を打つ辺りを噛まれ、ビジターム貼付し治療も今も押すと痛いです。
断端陽性だった事もあり、やはり再発かなと思っているのですが、浸潤癌0.5×0.4でもリンパ節転移無しでも、遠隔転移する事はあるのでしょうか? ホルモン療法は1年だけしましたが副作用(ふくらはぎの浮腫、疼痛、膝の後ろも痛く正座もできなくなり中止しましたが、薬を辞めて7年経った今でも改善しません) CTの結果から再発、リンパにも転移しているのではないかと不安です。
来週水曜日にオペした病院に受診予定ですが、出来ましたら田澤先生に治療してもらいたいと考えています。
不安で先生が良く仰られているホルモン刺激症状か乳腺症の時の疼痛のようなものがあり、乳腺がゴリゴリと硬く痛いです。
要領の得ない文章で申し訳ありません。
宜しくお願い申し上げます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
今回のメール内容を読みました。
注意点が幾つかあります。
1.再発は「温存乳房内再発」と「遠隔転移再発」に明確に分ける。
まず、そもそもの乳癌が微小浸潤を伴う広範囲の非浸潤癌であり「ほぼ非浸潤癌」なので「遠隔転移再発のリスクは殆どない」が、(非浸潤癌が広範囲であり、結果断端陽性より)「温存乳房内再発のリスクはやや高い」。
2.マーカーの推移はCA15-3の上昇は有意な所見として経過観察は必要
ただし、「乳房内再発では通常、マーカーに動きはない」
3.CTで見えるような石灰化は(癌を疑うような)「微細石灰化」ではなく、寧ろ(術後瘢痕部の異栄養性石灰化である)「粗大石灰化」を捉えている可能性の方が高そう
4.腋窩リンパ節の腫大は「飼い犬に噛まれた」ことによる「反応性腫大」の可能性が十分にある。
「CTの結果から再発、リンパにも転移しているのではないかと不安」
⇒上記コメントのように
私が判断する限り、CT所見(残存乳腺の粗大石灰化? や反応性リンパ節腫大?)は再発とは無関係なようです。
☆ただし、2でコメントしたようにCA15-3は気になるので「3カ月後再検⇒もしも上昇傾向あるならPET」がいいと思います。
また、(マーカーの動きとは無関係だと思いますが)犬に噛まれたとはいえ「本当に反応性リンパ節腫大なのか?」エコーで確認すべきでしょう。
それに、「温存乳房内再発のリスクは(マーカーの動きとは無関係に)通常よりはやや高め」だとは思うので、この機会に「マンモグラフィーで粗大石灰化なのか確認」も行っておきましょう(これは急ぎません)
質問者様から 【質問2】
田澤先生こんにちは。
前回は質問に答えていただき、有難うございました。
先日、○大受診しマンモと左脇のエコーをしたのですが、マンモは昨年より石灰化が増えているような感じかするが、傷を縫い合わせた場所なので良くわからない。
エコーでは1箇所?腫れている所があると言われ、その部位を当てている所に痛みがあったので、そこが痛みますとつげました。
主治医は犬に噛まれたせいで腫れているのか良くわから
ないので、来週造影CTを撮りましょうと言われました(腫瘍マーカーも少し上昇しているのでCTを撮って、異常があれば検査を追加して行くと言われました)。
エコーで犬に噛まれたせいでリンパが腫れているのか、
転移で腫れているのか分からないものなのでしょうか?
前回、田澤先生にお伝えするのを忘れていましたが、私は子供の頃から左頚部のリンパ腺に小さなシコリがあり、風邪で熱が出る時は必ずそれが腫れます。
今回、風邪は引いてませんが犬に噛まれたせい?か気づいたら少し腫れていて、一昨日になって元の大きさに戻っていました。
こ
れもリンパ転移?と関係あるのでしょうか?
書き忘れましたが、犬に腕を噛まれた時にガーゼとテープで固定したのですが、2日間貼りっぱなしだった為、脇の下がテープかぶれをし、少し赤くなり、4~5日痛痒かったです。
マンモ、エコー上はシコリは無いようだといわれました。
造影CTは行った方が良いのでしょうか?
主治医は4月から変わり、若い女医さんになったのですが、これからの事を考えると不安になります。
私の地域にはあまり病院が無いので。
できましたら納得した診断、治療を受けたいと思っているので、田澤先生の病院で診察、治療を受ける事はできますでしょうか?
宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
其の若い女医は、「自分でエコー」してますか?
確かに、「反応性腫大と転移性の腫大は時に区別し難い」ことはあります。
○ただ、それは「あくまでも自分自身で詳細にエコーしての話」です。
技師さんのエコー写真だけで「区別しがたい」などとコメントしているのだとしたら、それは「根本的な誤り」なのです。
「主治医は犬に噛まれたせいで腫れているのか良くわからないので、来週造影CT」
⇒この発想も全くの誤りです。
其の区別は造影CTでも解りません。
○ではどうするか?
答えは簡単です。
「怪しい=より転移を疑う」場合には「細胞診をすべき」だし、(逆に)「おそらく反応性?」と思った場合には「経過観察」でいいのです。
☆質問者に指摘したい重要な大原則『癌は決して小さくならないが、炎症は必ず小さくなる。 それはリンパ節も全く同様です』
「マンモは昨年より石灰化が増えているような感じかするが、傷を縫い合わせた場所なので良くわからない。」
⇒この辺が「経験の無さ」を露呈しています。
「正常を正常と判断」することは容易ですが、(同じ正常でも)「術後変化はイレギュラーだから、(慣れないと)正常だと断定することが難しい」ということです。
☆私が、「この内容を読む限り」全く問題ないようです。(術後の瘢痕部の異栄養性石灰化の変化をいっているようです)
「エコーで犬に噛まれたせいでリンパが腫れているのか、転移で腫れているのか分からないものなのでしょうか?」
⇒上記コメントのように…
「時に」区別が難しい事はあります。
ただ、それは「自分自身で超音波をした上での話」です。
「気づいたら少し腫れていて、一昨日になって元の大きさに戻っていました。これもリンパ転移?と関係あるのでしょうか?」
⇒全く無関係です。
冒頭で示した大原則『癌は決して小さくならないが、炎症は必ず小さくなる。 それはリンパ節も全く同様』なのです。(「元の大きさにもどって」いる時点で、転移は完全否定されます)
「造影CTは行った方が良いのでしょうか?」
⇒無意味です。
何のための造影CTか?
1.リンパ節の評価?
それは全く無意味です。(冒頭でコメントしたように、反応性腫大との鑑別にはなりません)
2.全身の再発スクリーニング目的?
(CA15-3の動きから)「全身スクリーニング」としての意味は有るかもしれませんが、(其の目的なら)「PETの方がより適役」です。
♯すでに「単純CT」を撮影しているので、そこに「造影CT]を追加しても、(それによる)情報量はあまりないのです。
「納得した診断、治療を受けたいと思っているので、田澤先生の病院で診察、治療を受ける事はできますでしょうか?」
⇒それなら、「メディカルプラザ市川駅」
で予約しましょう。
現状は「慌てる状況ではない」と言えます。
焦点は2つ
1.反応性リンパ節腫大なのか?
2.CA15-3の上昇は有意なのか?
☆その、「どちらも」経過観察が妥当だからです。(マーカーもリンパ節も3カ月程度経過観察することで、よりはっきりします)