[管理番号:4718]
性別:女性
年齢:21歳
21歳女性です。
今から約1年半前、左胸にしこりを発見しました。近隣
病院を受診して、エコーで約1.9センチのため経過観
察となりました。
その後大きくなってきたように思われたため、紹介病院
にて、マンモとMRIを行いましたが、良性かどうかの判
別がつかず、生検を実施しました。
病理のコメントでは、「腫瘍は良性で線維腺腫と思われ
るが再発性のものも完全に否定できない」というもので
した。
その後も経過観察していましたが、2.9センチ(1年
で1センチ大きくなった)になり、ドクターから3セン
チを超えると5センチになるのはあっという間だと言わ
れ、手術することになりました。
今年4月ドクターから、「大きくなるスピードと、再発
性のものも完全に否定できないという病理のコメントを
考慮して、手術は全身麻酔で左乳輪周囲にそって切除、
腫瘍の2~3ミリ多めに切除、埋没縫合し皮膚用ボンド
で処置」という説明を受けました。また、腫瘍を取れば
胸も元に戻ると言われ、同意書に署名捺印しました。
しかし、手術前日になって、「腫瘍だけ取る。見た目の
こともあるし、線維腺腫ならこれで終わりだから。」と
突然言われました。腫瘍だけ取って再発性のものならどう
するのですかという質問に対しては、出来たらまた取っ
たらいいからとの回答でした。
結局、ベテランのドクターの意見にそれ以上は言えず、
腫瘍のみを摘出しました。
術後、ドクターから、「線維腺腫でいいと思うし、再発
性のタイプは数パーセントというイメージで、後は病理
の結果待ち」との説明がありました。
ほっとしたのもつかの間、手術1週間後の受診の際、葉状腫瘍
だったと言われました。病理のコメントは、「異型性は
なく、核分裂部分もなく良性の葉状腫瘍。断端陽性。」
でした。
ドクターからは、もしまたできたら、腫瘍1センチくら
いでマージンを大きめに取って切るからと説明を受けま
した。
もしまたできた際に大きめに取ったらもうできませんか
という質問に対しては、芽が残っていたらまたできると
の回答でした。
結局3か月後のエコー経過観察となりましたが、マージ ンを全く取らず、断端陽性というのがとても気になり色 々サイトを調べていると、葉状腫瘍は初回の手術がとて も重要だと知りました。
葉状腫瘍について調べれば調べるほど再発が怖いです。
以前のQ&Aに先生が、良性でも断端陽性なら追加手術をしたほうが良いとコメントされていまので、追加手術を考えています。
手術は4月半ばにしましたが、まだ間に合いますでしょうか?また、追加手術はどういうアプローチがあるのか、詳しく教えていただきたいです。
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
どうも、私には(質問者自身が感じている様に)執刀医のやり方は無責任に感じます。
葉状腫瘍の可能性があり、しかも(せっかく)「全身麻酔」としているのに(敢えて)ギリギリ切除して「再発してしまったら、それはそれ。その時考える。」みたいなのは…
♯勿論、質問者が21歳であり「なるべく目立たない様に」という配慮なのでしょうが…
「手術は4月半ばにしましたが、まだ間に合いますでしょうか?」
⇒勿論、問題ありません。(あくまでも「良性」なのです。)
「また、追加手術はどういうアプローチがあるのか、詳しく教えていただきたいです。」
⇒(初回の)「手術でできた瘢痕部」をマージンをつけて切除することになります。
ただし、「きちんとしたマージンをつける」には「傍乳輪切開では困難」かもしれません。
その際にはどちら(根治性と美容面)を優先するのか? 質問者自身が答えを出さなくてはなりません。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、先日はお忙しい中回答していただき、本当に有難うございました。
追加手術についてですが、私は根治性を優先させたいと思います。
左乳房乳輪寄りA領域に腫瘍があったのですが、傍乳輪切開では困難と考えてよろしいでしようか?
先日は、マンモトーム生検(左乳房AB領域)の病理のコメント(ドクターが口頭で教え
てくださったもの)を書き留めてあったものをお伝えしましたが、正式なコメントは、
組織診断:fibroepithelial lesiond「6個の標本のいずれにも上皮とmoxoidな間質の増殖が見られます。
間質のみの増殖は明らかでなく、間質細胞の異型も目立ちませんが、
間質が広い部分があり、phyllodes tumer(葉状腫瘍)の可能性が否定できません。」だと分かりました。
(また、マンモトーム生検前に乳房造影MRIをしましたが、その際はドクターから、
画像診断が(左乳房A領域に)粘液癌>線維腺腫を疑うが、識別は難しいとなっているので、
生検をすると言われました。)
手術病理標本は3分割で、病理の正式コメントは、組織診断:phyllodes tumer(葉状腫瘍)「境界の比較的明瞭な結節状の病変が見られます。
上皮と間質の増殖が見られます。
上皮に異型は認めません。
葉状の増殖パターンが見られます。
間質細胞の異型は目立たず、核分裂像は明らかではありません。
良性のphyllodes tumer(葉状腫瘍)とします。
辺縁で被膜様の線維性組織が見られない部分もあり、断端は陽性と思われます。」
だと分かりました。
摘出した腫瘍(3月末での大きさ:横27.6mm/縦29.3mm/高16.0mm)の病理の結果が一番
正しいと思うのですが、手術病理標本はなるべく多くの面を作成して、性度や断端に関して情報を集めた方がいいことを学びました。
手術病理標本は3分割で問題ありませんでしょうか?
以上から、追加手術でどれくらいマージンをつけたほうがいいでしょうか?
長文申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
葉状腫瘍のポイントは「細胞異型」「核分裂」「間質の一方的増殖」にあります。
これらが殆ど(全く)無いこと、唯一「葉状の増殖パターン」だけが「葉状腫瘍の診断根拠」となっているようです。
その意味では「線維腺腫に限り無く近い」葉状腫瘍ということができます。
「3分割で問題ありませんでしょうか?」
⇒癌や(境界悪性以上の)葉状腫瘍でもない限り、そんなものです。
「以上から、追加手術でどれくらいマージンをつけたほうがいいでしょうか?」
⇒「最低限のマージン」でいいと思います。
ただ、腫瘍を摘出した後に(正確に)「○○cmのマージン」と判断することは不可能であり、実質的には(摘出部の)「瘢痕部を大きめにとる(どの位大きめにとるかが、マージンの役目)」となります。