Site Overlay

乳がん転移

[管理番号:128]
性別:女性
年齢:42歳
初めまして。
よろしくお願い致します。
 
約3年前に、左胸の皮下乳腺全摘手術をしました。
非浸潤がんと言われていましたが、術後に浸潤がんとの診断でした。ノルバデックスを服用していましたが、しこりがあったため検査をしたところ再発していました。
さらに、PET検査をしたら、多発リンパ節転移、多発肺転移とのことです。
 
今は、ゾラデックスの注射をしています。
セカンドオピニオンでは、ゾラデックスとANA、EXE、LETの併用を推奨するとのことでした。
 
完治することはないかと思いますが、先生は今後の治療をどのように考えられますか?

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 再発との事、大変ご心痛のことと思います。
 それでは回答します。

状況の確認

 術後タモキシフェン単剤での治療という事はluminal typeですね。
 HER2はどうなのでしょうか? もしluminal B(HER2 type)ならば、間違い無くハーセプチンも併用します。
 

回答

 私であれば「ゾラデックス+AI(ANA,EXE,LET)」はしません。
 学会発表としては、そのような治療法が有効との報告がありますが、十分なエビデンスとは考えません。
 薬剤適応上もゾラデックス:閉経前乳癌
 AI(ANA,EXE,LET):閉経後乳癌
であり、保険診療からはずれてしまいます。
 
 「ゾラデックス」単独とするか、化学療法を併用するかでしょう。(今回はHER2陰性として回答します)
 今まで化学療法をした事がなく「タモキシフェン非感受性」であれば化学療法が有効な可能性が十分あります。
 
 「多発リンパ節転移」はいいとしても「多発肺転移」の場合には化学療法の併用も考慮しなくてはならないと思います。
 化学療法(ゾラデックス併用で)を行って、病変を十分小さくすることができれば、その後「ゾラデックス」単剤での維持も安心できるからです。
 ※私の家族であれば、間違い無く「最初に化学療法の併用」を行います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

 以前、管理番号128でアドバイスをいただきましたが、再度、今後の治療法について質問させてください。
 これまでの経緯は以下の通りです。
・2012年3月、左乳房皮下乳腺全摘。
浸潤径5ミリ、リンパ転移なし、
ルミナールAで、術後ノルバデックスの服用開始。
・2014年秋、左胸内側にしこりを発見して針生検。
局所再発確定となり、PET検査を受けたところ、そのほかに多発リンパ節転移、多発肺転移が見つかる。
・ノルバデックスが中止となり、ゾラデックス単独(4か月)→ゾラデックス+エキセメスタン(2か月)後、再度PET検査。
リンパ、肺ともに病状が進行しており、ゾラデックスもエキセメスタンも中止に。
・2015年9月からFECを4クール。
12月のPET検査の結果、リンパの転移は画像上完全に消え、肺転移もほんの少し影が残る程度に。
・2016年1月末から、地元の主治医の了解を得て、鹿児島のUMSオンコロジークリニックで放射線治療。
5週間をかけて転移があった場所すべてにピンポイント照射。
この間、経口薬は服用せず。
・2016年3月からアリミデックスの服用開始。
・2016年4月にPET検査。
新しく腸骨に1センチの転移が見つかる。
・2016年5月、鹿児島で腸骨の転移巣にピンポイント照射。
 現在、リンパと肺の転移巣は消えていて、引き続きアリミデックスを服用しています。
地元の主治医は、ホルモン剤は効果が出るまでに時間がかかるから、もうしばらくアリミデックスで様子を見ようとの判断ですが、薬剤の変更、あるいは継続について、田澤先生はどう思われますか?
 ホルモン剤の治療効果は、何か月くらいでわかるものなのでしょうか?
 ちなみに、FEC2クール目(去年の10月ごろ)に久しぶりに生理がきましたが、それ以降はきていません。
ゾラデックスやリュープリンを併用したほうがいいでしょうか?
 また、このQ&Aでも度々出てくるフルベストラントが気になっています。
主治医から、血液検査の数値上は閉経状態だといわれましたが、現在の私に適用はあるのでしょうか?
 転移がわかってからも、まったく症状が出ることなく元気に暮らしていますので、できればこのまま放射線治療(標準治療ではないことはわかっています)とホルモン剤でQOLを優先していきたいです。
田澤先生なら、どんな薬剤を勧めてくださいますか? やはり抗がん剤をしたほうがいいのでしょうか?
 よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「現在、リンパと肺の転移巣は消えていて、引き続きアリミデックスを服用しています。」
⇒まず、私は「薬剤の適応外使用」は行いません。
 質問者はおそらく「FEC後の化学療法閉経」にあるのだと思います。
 それであれば、「アロマターゼインヒビターではなく」閉経前の薬剤(タモキシフェン)であるべきです。
 ☆化学療法閉経でアロマターゼインヒビターを用いることで月経が回復することがあり、これが予後不良の原因となる事が解っているのです。
 
 
「アリミデックスで様子を見ようとの判断ですが、薬剤の変更、あるいは継続について、田澤先生はどう思われますか?」
⇒化学療法閉経で「アロマターゼインヒビターを用いる」ことは危険なことです。
  
「 ホルモン剤の治療効果は、何か月くらいでわかるものなのでしょうか?」
⇒3カ月位です。
 ただ、この場合のホルモン療法の効果は「アンダーパワー」なので「病勢維持を良し」とするべきです。
 私の考えでは「化学療法で病勢を下げて」それを「ホルモン療法で維持」です。
 もしも「ホルモン療法で維持しきれない」状態となれば「経口抗がん剤も検討すべき」です。
 
「 ちなみに、FEC2クール目(去年の10月ごろ)に久しぶりに生理がきましたが、それ以降はきていません。ゾラデックスやリュープリンを併用したほうがいいでしょうか?」
⇒これは化学療法閉経であり、本当の閉経ではありません。
 閉経前のホルモン療法(タモキシフェン+LH-RHagonist)とすべきでしょう。
 
「 また、このQ&Aでも度々出てくるフルベストラントが気になっています。主治医から、血液検査の数値上は閉経状態だといわれましたが、現在の私に適用はあるのでしょうか?」
⇒化学療法閉経ではお勧めしません。(理由は上記☆)
 
「田澤先生なら、どんな薬剤を勧めてくださいますか? やはり抗がん剤をしたほうがいいのでしょうか?」
⇒骨転移であれば(現時点で放射線照射の効果があるとしても)骨吸収抑制剤(ゾレドロン酸やデノスマブ)は用いるべきです。
 「放射線」+「ホルモン療法」で維持するのは賛成ですが…
 ○(FECしか用いていない)ことに注目すると「タキサンをどうするか?」というところが焦点となります。
  次に病勢が進行した際には(迷うことなく)「タキサン(できればbevacizumab+weekly PTXとして)」で「きっちり叩く」ことをお勧めします。
 一度「病勢を抑え込む」ことが「その後の維持療法にとっても重要」なのです。
  
 よろしくお願いします。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

 田澤先生、お世話になります。
管理番号128で以前にも二度ほどご相
談させていただきました。
 昨年1月から今年2月まで、放射線のピンポイント照射とホルモン治療を続けてきましたが、病勢の進行を止められず、骨転移による背中の激痛と度重なる嘔吐により、4月初旬からは入退院を繰り返しております。
 現在、骨、肺、肝臓などに多発転移巣があり、ランマークと60%に薄めたFECで治療中で、ワンデュロパッチとオキノームで痛みのコントロールをしています。
ちなみに、FECを選択したのは、一昨年の投与時
に劇的な効果があったことから、こちらから希望しました。
 先日、主治医に抗がん剤の効果のほどを聞いたところ、現状維持とのこと。
ただ、骨髄抑制が激しいことからFECは中止で、次回からは薬剤が変更となりそうです。
私としては以前、田澤先生に助言いただいた
bevacizumab+weekly PTXに移りたいのですが、こちらも骨髄抑制の副作用は激しいのでしょうか? 現在、白血球はジーラスタで2500程度まで回復したものの、血小板が2万を切っています(何度か輸血もしています)。
 4月以降、全身状態も良好とはいえず、食欲が減り、寝ている時間が多いことから体力も落ちていますが、治療に耐えられる体力を付けようと、現在は頑張って食べ始めたところです。
今回、田澤先生にお聞きしたいのは、以下の5つです。
1、bevacizumab+weekly PTXに移行できる可能性はありますか?
2、どうしたら血小板を増やせますか?
3、骨髄抑制があまり起こらない抗がん剤はありますか?
4、田澤先生だったら、どういった治療計画を立てますか?
5、全身状態の回復のために一番重要なのは?
 抗がん剤はまだFECしかやっておらず、体力を取り戻しながら、あらゆる可能性を探っていきたいです。
お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
血小板2万では化学療法は中止せざるをえません。
休薬による自然回復を期待するしかありません。
「1、bevacizumab+weekly PTXに移行できる可能性はありますか?」
⇒骨髄抑制は殆どありませんが、さすがに血小板が10万を超えるまでは「待ち」でしょう。
「2、どうしたら血小板を増やせますか?」
⇒待つしかありません。(血小板輸血しても、一時的であり、数日で壊されるだけです。あくまでも緊急処置です)
「3、骨髄抑制があまり起こらない抗がん剤はありますか?」
⇒bevacizumab+paclitaxelも起こし難いです。
「4、田澤先生だったら、どういった治療計画を立てますか?」
⇒血小板回復を待つしか方法はありません。
「5、全身状態の回復のために一番重要なのは?」
⇒何もしないことです。