[管理番号:3569]
性別:女性
年齢:54歳
いつもQ&Aを拝見しております。
自分に近い症状の方の質問、先生の丁寧な回答に、勇気や希望をいただいております。
今日は自分の乳がんについてお伺い致します。
5月に右胸にしこりを発見し、乳がんの確定診断を受け、7月に部分切除(リンパ廓清)を行いました。
術後の傷や体調も回復し、ここまでは順調だと感謝しております。
ただ今後の治療方針について、前向きになれない日々を過ごしております。
術後の病理検査結果は以下です。
浸潤性小葉がん(1病巣) pT2 pN1 pM0 ⅡB
核異型1 核分裂1(2/10 HPF) 核グレード1
波及度gf リンパ管侵襲ly0 静脈侵襲v0
断端側方close insitu ca+ 娘結節- comedo-
リンパ節転移 3/9
SNB(1/1)LevelⅠ(1/5)LevelⅡ(1/3)
サブタイプ ルミナルA
ER(5+3) PgR(4+2) HER2(1+) Ki-67(5%)
医師による治療方針は、抗がん剤優先(EC+アブラキサン)、
その後放射線治療(鎖骨を含む)、閉経後ホルモン剤という説明です。
説明についてはよく理解しているのですが、
病理結果も含め、抗がん剤が本当に必要なのでしょうか。
抗がん剤をしない治療を希望しましたが、リンパ節転移の事実、全身への危険性を強く言われています。
リンパ節転移の個数3/9個は、ガイドラインによる4個以下ではありますが、もう少し範囲を広く廓清すれば4/10個になる可能性がないとは言えないとのこと。
術中の染めた結果でこの範囲になったのも事実だと思うのですが、3/9個の考え方はどう捉えたら良いのでしょうか。
お医者様が患者・病気の事を思い、最大の効果をあげる治療を勧めるのは良くわかりますが、できれば必要以上の治療は避けたい気持ちです。
次回家族を伴い、治療方針について再度面談が有ります。
先生のご意見を伺いたくお願い申し上げます。
どうぞ宜しくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
施設によっては、「いまだにリンパ節転移陽性=(サブタイプにかかわらず)術後化学療法の対象」としているところもあるようです。
ただし、OncotypeDXでの検証やSABCS(2015)の発表など、やはり「ルミナールAには(リンパ節転移の有無にかかわらず)抗癌剤は効かない」という見解が示されている事に注意が必要です。(やれば、いいというものではありません)
「病理結果も含め、抗がん剤が本当に必要なのでしょうか。」
⇒不要です。
質問者は「典型的な大人しい小葉癌(MC=1, Ki67=5%)」です。
文句なしのルミナールAです。
抗癌剤が効くとは思えません。
「抗がん剤をしない治療を希望しましたが、リンパ節転移の事実、全身への危険性を強く言われています。」
⇒前時代的な考え方です。
「リンパ節転移の個数3/9個は、ガイドラインによる4個以下ではありますが、もう少し範囲を広く廓清すれば4/10個になる可能性がないとは言えないとのこと。」
⇒詭弁です。
もう少し踏み込むと「リンパ節の取り残しの可能性を考えるようでは、執刀医として如何なものか?」
「術中の染めた結果でこの範囲になったのも事実だと思うのですが、3/9個の考え方はどう捉えたら良いのでしょうか。」
⇒きちんとした郭清をすれば、それ以上の転移はありません。(それよりも上流にあれば術中に解ります)
質問者様から 【質問2】
先日は回答ありがとうございました。
Q&Aで先生が何度も説明されていらっしゃるように、私の場合も「ルミナルAは抗がん剤不要」であることよくわかりました。
(皆さんの質問から、ルミナルAでも抗がん剤推奨・治療されてる方の多さに驚きます)
再度の質問で申し訳ありません。
主治医の方針は、
・病巣しこりは切除し、放射線治療で局所再発を防ぐ
・ホルモン剤は局所・全身を含めた予防治療
しかし、やはりリンパ節転移があったことで、全身へのリスクを強調されます。
「見えないガンがリンパや血液を通ってどこかに潜んでいるかもしれない。
それは放射線やホルモン剤では殺せない」
「血液検査や画像に出てからでは遅い」
「あの時抗がん剤をしておけばと後悔しないように」と説得されるのです。
田澤先生は、
・ルミナルAの場合、局所治療だけで大丈夫というお考えでしょうか
・しこりからリンパ節へ進んでいても、全身へ進む可能性は低いということでしょうか
現在はホルモン剤服用中、放射線治療も始まっています。
今後抗がん剤は選択しないつもりですが、大人しいサブタイプであってもリンパ節まで転移した事実(能力なのか時間なのか?)が不安です。
再質問になりますが、どうぞ宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
ルミナールAでは抗ガン剤は不要
「リンパ節転移の個数や腫瘍径にかかわらず、ルミナールAでは化学療法によるベネフィットが無い」
これはDBCG77B無作為化試験の結果がSABCS:San Antonio Breast Cancer Symposium
2015で発表された内容です。
「「見えないガンがリンパや血液を通ってどこかに潜んでいるかもしれない。それは放射線やホルモン剤では殺せない」
⇒担当医は「ホルモン療法」をすることで再発率や生存率が実際に上昇する事実をどう説明するつもりですか???
こうなると、質問者が「担当医か私かどちらを信用するか?」という問題となります。
勿論質問者が(私で無く)担当医を信頼して、抗ガン剤をすることに異議を唱える必要はありませんが、(少なくとも)「担当医の意見で私を説得することは不可能」です。(参考までに)
「・ルミナルAの場合、局所治療だけで大丈夫というお考えでしょうか」
⇒質問者は重大な勘違いをしています。
ホルモン療法は「立派な全身治療」ですよ!!!
「局所療法だけで大丈夫」などとは一言もいっていません(是非、ご確認を)
「・しこりからリンパ節へ進んでいても、全身へ進む可能性は低いということでしょうか」
⇒是非、冒頭に挙げた論文をお読みください。
(印象だけで)事実を曲げても、何の意味もありません。
質問者様から 【質問3】
前回は質問内容が上手く表現できず、申し訳ございません。
自分の中では抗がん剤をしない選択に決めているのですがその決断に自信がなく気持ちが揺れます。
自分に近いタイプの質問を探したり、それに対する先生のアドバイスを読んで、考える日々です。
私のようなルミナルAでも抗がん剤優先の治療は、大学病院やがんセンターでは珍しいことではないのかもしれませんが、
抗がん剤をしない選択を伝えるのはとても難しいです。
前回もそのつもりで面談したものの、複数の医師から説得されると、患者としては迷ってしまいます。
自分が「リンパ節転移あり」の為、こちらのQ&Aでたくさんの患者さんのデータを見ても、どうしても「リンパ節転移あり・なし」に目がいき、そこで病状の線引きをしてしまいがちです。
抗がん剤治療も「リンパ節転移あり」だからと言われると、そこが重大な問題に感じます。
「リンパ節転移あり」は病状の中でどのように捉え、それでも抗がん剤なしを選択する自信につながるでしょうか。
(あくまでも数字は確率、時間でしか証明できないのでしょうが)
リンパ節転移があっても、抗がん剤なしで長くお元気でいらっしゃる患者さんがたくさんいること、もっと知りたいです。
今回もデータや病状の質問ではなく申し訳ありません。
どうぞ宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
私に何を要求しているのですか?
私は「大学病院や癌センターの医師の考え方」には全く興味もありません。
治療は「正しいエビデンスにも届いて」行われるべきものです。
「リンパ節転移があっても、抗がん剤なしで長くお元気でいらっしゃる患者さんがたくさんいること、もっと知りたいです。」
⇒「リンパ節転移の個数や腫瘍径にかかわらず、ルミナールAでは化学療法によるベネフィットが無い」
これはDBCG77B無作為化試験の結果がSABCS:San Antonio Breast Cancer Symposium
2015で発表された内容です。
○これは、実際に「抗ガン剤をしなくても元気でいる」ことの裏返しにはなりませんか?