[管理番号:44]
性別:女性
年齢:31歳
先生はじめまして。
長くなりますがよろしくお願いします。
7年ほど前に始めて受けた乳がん検診で乳腺症と診断され、それから毎年定期的に検診を受けています。
妊娠、出産を2回経験し、断乳して2年ほど経ちました。これまで良性のしこりがありましたが断乳後いつの間にか無くなっていました。
去年の夏に左胸に押すと痛いコリコリしたものを見つけてすぐにいつも診てもらっている乳腺外科に行きエコーしてもらいましたが、しこりらしきものは何もないと言われました。
でもどうしても気になって違う病院に行き、時間をかけてとても丁寧にエコーでみてくれましたが、やはりなにもないと言われ乳腺を触れているのではないかということでした。
二つの病院でみてもらい大丈夫と言われたから安心していたのですが、相変わらずそのコリコリはあり、押すと痛みがあります。ただ、その周辺全体的に痛いので、そのコリコリ自体が本当に痛いのかがよく分からず。
コリコリしたものは、しこりというより筋の一部を触っているような気もするし、5ミリくらいの楕円形です。
そして半年経った今も変わらずそのコリコリはあります。大きさは全く変わりません。
生理前、排卵日あたりになると若干大きくなる気もします。
それで先週去年マンモの予約をしていたのでエコーも一緒にみてもらいました。
その時に医師に対して不信感がでてきてしまったのです。
去年は何もないといっていたのに、私がやっぱりここにコリコリしたものがある。と訴えたら触診で、「あぁこれかな?」
と言ったのです。去年のことを覚えていないのか?見落としなのか、、
反対側の胸に触っても全然わからないのですが、しこりがあるらしく線維腺腫だと言われました。
エコー見せてもらいましたが、黒いきれいな楕円形のものが写っていました。
コリコリしたものもそれと同じような感じだから
経過観察でいいよ。
と言われました。
安心しましたが、なぜ去年はないと言ったのにこの前は見つけたのかが不安になってしまいました。
その医師は病院の副院長先生で、ちゃんと乳がん学会認定医を持っておられる医師です。
キャリアも長いはずなので安心はしているのですが、今回のことで少し不安になってしまいました。
他の乳腺外科でもう一度みてもらったほうがいいでしょうか?大丈夫と言われたなら気にしないほうがいいのでしょうか。
A.回答
こんにちは。田澤です。
ご質問ありがとうございます。
心配される気持ちは良く解ります。
それでは回答いたします。
回答
是非、別の乳腺外科で診てもらってください。
ただ、矛盾するようですが、状況から考えて乳癌の可能性は極めて低いと思います。
乳腺症だと思います。理由は以下の3点です。
・痛みを伴うしこり
・超音波で認識しずらい(2つの病院でみてもらっての所見)
・31歳という年齢
※「反対側の乳腺にあり、今回超音波で指摘された、黒いきれいな楕円形」は線維腺腫でしょう。
ただ、気にされている側の「5mm位のしこり」は、(触診では認識してもらったが)結局今回も超音波では所見が無かった。という事ですよね。
線維腺腫であれば、超音波で認識される筈です。
マンモグラフィーとは違って、超音波検査は術者の技量が大きく影響します。超音波で「乳腺症」の所見を指摘できなかった可能性は十分あります。
乳癌の可能性は極めて低いのに
「別の病院の」乳腺外科受診を勧める理由
様子をみてもいいはずですが、何故、受診を勧めるのか?
それは、安心してもらうためです。
不信感のままでは良くありません。
◎患者さんに安心をもたらすのも大事な医療の役割だからです。
「気になるしこり」が何であるのか? きちんと回答できなければ乳腺専門医とは言えません。
「~と同じような感じだから経過観察でいいよ。」という曖昧で不安感のある事ではいけないと思います。
画像診断(基本的には超音波だけでOKです。MRIなんてものは、鑑別診断にはなりません)で、疾患名が確定できないのであれば「針生検」という組織診断も検討されなければいけません。
最終的に、きちんと「あなたの気にされているしこりは、○○です。」という姿勢が必要なのです。
必ず、あなたの不安を解消してくれる乳腺専門医がいるはずです。
東京であれば当院を受診していただけるのですが、ご検討ください。
質問者様より 【質問2】
田澤先生、お返事ありがとうございました。
先生からの回答を拝見し、かなり安心しました。
気になっている側とは反対のしこりは繊維腺腫と言われたのですが、気になっているほうのしこりについては、右側と同じ感じだね。ということだったので恐らく線維腺腫という診断だったのだと思います。
ただ、毎年検診を受けていて、なんでこんなにもスッキリしないのかなと考えたとき、きちんとこのしこりは何なのか説明を受けていないからなんだとおもいます。
先生のおっしゃる通り、別の乳腺外科でもう一度診てもらおうと思います。
是非先生のところで受診したいのですが、東北に住んでいる為、難しいです。
そこでまた2点、質問させてください。
- 今まさに生理前で、乳房全体的に痛みがあります。病院に行くのは生理後でもいいでしょうか?
- 気になって触りすぎて痛みが強くなった気がします。触りすぎると当然痛みはでますか?
全体的に押すと痛いのですが、そのコリコリを触りすぎて痛みがあるのかないのか分からなくなるときがあります。
また、触りすぎてそのコリコリが見当たらなくなるときがあります。
ご回答お待ちしております。
お忙しいところすみませんが、宜しくお願い致します。
田澤先生より 【回答2】
こんにちは。田澤です。
再度のご質問ありがとうございます。
それでは回答いたします。
回答
①病院に行くのは生理後でもいいか?
⇒もちろん、生理後でも構いません。
と、いうか是非生理後にしてください。
今回の外来受診の目的は「気になるしこりが、何であるのか?」という事に絞るべきです。
その意味で、全体的に張りがあり、痛みのある「生理前」ではポイントがぼやけてしまう可能性があります。
●是非、他のものが気にならず「そのしこりだけ」が気になる時に受診してください。
②触りすぎると痛みが強くなるか?
⇒その通りです。
気になる気持ちは解りますが、触りすぎるのは良くありません。
※外部との連絡はない(皮膚から雑菌が入り込まない)ので化膿することはありませんが、圧迫しすぎると炎症を起こすことはあります。(その場合には痛みや時には赤みが出ます)
質問者様より 【質問3】
田澤先生、お返事ありがとうございます。
生理後に病院に行ってきます。
もう一つだけ質問させてください。
脇の下周辺をたまたま触っていたら、ゴリゴリするものがあるのですが、これは乳腺ですか?
右にも左にもあります。
細長いものや小さい?もの。。
押すと痛いです。
脇から胸にかけて押さえるとかなり痛いです。
生理前で乳腺がはっているからですか?
ゴリゴリするのは乳腺ですか?
田澤先生より 【回答3】
こんにちは。田澤です。
腋の下周辺のしこりですね。
それでは早速回答します。
回答
副乳にある正常乳腺組織だと思います。ただ副乳にある乳腺組織も乳房にある乳腺組織同様に乳腺症様変化を起こすので、線維化で通常よりはやや硬くなっているかもしれません。
勿論実際に診察していないので、「腋の下周辺」というその位置が正確に副乳の場所なのか判断はできませんが。
ただ、実際に診療をしていると、「腋の下が気になる」という症状の方は結構いらっしゃいます。
その殆どが「副乳」です。 副乳の乳腺も乳房の乳腺と同様に生理前に張ったり圧痛があることは珍しくありません。
●腋窩リンパ節の可能性も無いわけではありませんが、左右対称であり「細長いものや小さいもの」という表現から、いずれ心配なものではないでしょう。
参考にしてください
哺乳類は腋の下から鼠径部にかけて複数の対をなす乳腺組織(これを乳腺提といいます)を持ち、人の場合は胸部(乳房)の乳腺以外は退縮します。
乳房以外の乳腺組織が退縮しきれずに残っている状態を副乳といいます。稀に乳頭を持つ場合「副乳頭」と呼びます。
圧倒的に多いのは腋窩部です。その次には乳房の下内側です。
通常は存在を主張しないのですが、生理前など女性ホルモン分泌が高い時期に「張ってきたり、痛み出す」事で、気がつくことが多いのです。(妊娠期も同様です)
質問者様より 【質問4 行ってきました。】
さきほど、別の乳腺外科を受診してきました。
エコーと触診してもらった結果、私が気にしている痛みのあるコリコリは乳腺が張っているだけ。とのことでした。
安心したのですが、2点質問させてください。
気になってるところと逆側に他院で線維腺腫を指摘されたのですが、今回なにもないと言われました…キレイな楕円形が見えていたのですが今日ありませんでした…
そんなことってありますか??
それと、エコーのとき腕を下ろした状態での診察だったのですが、腕をあげるのが普通ではないのですか?これによって見え方等違いが出たりしますか?
医師に質問したところ、これがうちのやり方だし、上げ下げして見え方が変わるもん
ではない。とのことでしたが。
悪いものはないし、気になってる側にもなにかありましたが、線維腺腫にもみえるし、こちら側のほうが全体的に張っていたので張りがそうみえることもある。
小さいし今すぐ細胞取って調べる必要性はない。とのことでした。
田澤先生より 【回答4】
こんにちは。田澤です。
別の乳腺外科を受診されたのですね。
ご苦労様です。
「気になるしこり」は「乳腺が張っているだけ=正常乳腺」と言われたのですね。過去の他院での診療結果からすると、その結論でOKと思います。
※ ちなみに私が以前お話しした「乳腺症」の正体は「正常乳腺が線維化などで硬くなるもの」です。
ところが、「安心した半面、疑問も湧いた」というところですね。
それでは私の診療経験からそれらの疑問について回答します。
回答
「痛みのあるしこりの逆側の乳腺に、以前の病院では超音波で線維腺腫が指摘されたのに、今回は所見が指摘できない。という事がありえるのか?」
⇒(残念ながら)あり得ます。
超音波検査は「術者の技量によって、その精度にかなりのバラツキ」があります。
つまり、「本来あるものを見落とす可能性」や、逆に「偽の所見(本来無い物)を誤って所見として捉える可能性」もあります。
今回のように、「線維腺腫がある。と主張する病院」と「線維腺腫はない。と主張する病院」は、どちらかが誤っているのですが、それを判断するのは容易ではありません。
◎唯一確実に証明する方法は、「線維腺腫があると主張する病院」へもう一度行って、それを針生検してもらう事です。
本当にそれが、線維腺腫であれば、病理組織結果で「線維腺腫」となりますし、線維腺腫ではない(例えば乳腺内の脂肪)ものであれば、病理組織検査結果で「脂肪」となり確認できます。
※マンモグラフィーの場合は写真なので、(極端に言えば)誰が撮ってもどこで撮っても同じです。
「腕の上げ下げで、所見が変わるか?」
⇒所見は変わりません。
但し、(質問者のおっしゃるように)腕を挙げて超音波をする方が一般的です。
それは、腕を伸ばすことで「乳腺が伸びて、扁平となり検査がしやすい=見落としが少なくなる」からです。
※ちなみに、これは日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)のガイドラインでも推奨しています。
参考までに
私なりに状況判断しますので、参考にしてください。
「痛みのあるしこり」
⇒これは心配ないようです。
乳腺が張っているだけ=正常乳腺=正常乳腺の線維化などによる硬い変化=乳腺症
※これらには(表現が異なるだけで)厳密な区別はありません。
いずれ心配無いということです。
「反対側の線維腺腫?らしきもの」
⇒これは本当に線維腺腫なのか、乳腺内脂肪がたまたま線維腺腫のように見えたのか。どちらかだと思います。
「小さいし今すぐ細胞取って調べる必要性はない」
⇒これには、私は賛成できません。(残念ながら、そのように考える乳腺外科医が実際に多いのですが)
◎私の中には、「組織検査をすべき基準」があります。
楕円形(扁平)で境界が整(クリア)のものは線維腺腫と断定して、(患者さんからの希望が無い限りは)組織検査しません。
それ以外(扁平でない=張りがあるものや、境界がクリアでないボソボソしたもの)はどんなに小さくても組織検査を勧めます。
例え小さくても(3mm程度でも)癌は見つかるのです。(実際、数多く見つけています)
「小さいから大丈夫」という事はありません。
●できるだけ小さいうちに見つける事こそが我々専門家の本来の役目だと私は考えています。 早期発見に勝る治療はありません。