[管理番号:3162]
性別:女性
年齢:60歳
田澤先生、こんにちは。
今月頭に右乳房を全摘し、先日初回の抗がん剤治療(1年間)を開始しました。
病理検査の結果が出ましたので是非先生のご意見を聞かせて下さい。
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右乳腺 operation
Invasive ductal carcinoma, scirrhous carcinoma
腫瘍径: 22×20mm
Fat (f), ly(+), v(-), comedocomponent(+), EIC(-) Nuclear grade 3 (Nuclear
atypia: Score 2, Mitotic counts: Score 3) 断片(-)
やや不整な類円形、大小不同腫大した核を有した好酸性polygonalな胞体の
cancercall
が、不規則充実胞巣状~索状に、一部tubularで、scirrhousな浸潤増生を示しています。
ER: J-Score 0
PgR: J-Score 0
HER2 Score: 3+
MIB-1 LI: 40%
リンパ節 Level Ⅰ 14個
Lymph nodes; Level-Ⅰ:1/9にmetastasisがみられます。
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先生にお聞きしたい事は、
○上記の検査結果をもう少し分かり易く説明して頂けると助かります。
○担当医からはステージ2bと言われましたが、リンパ節転移14個という数字を見ると
ステージ3ではと思うのですが…このような転移の場合でもステージ2なのでしょうか?
○改めて私のサブタイプはどのタイプになりますか?
もしトリプルネガティブだとすれば、抗がん剤の効き目(再発予防)に期待はありますか?
○書類にKi-67の文字が見当たらないのですが、上記の【LI:40%】の事でしょうか?
○核グレード3ということは【顔つきの悪い腫瘍】に当てはまり、細胞の増殖率も強く、
これからの予後・再発に大きく影響してきますか?
○抗がん剤の副作用というのは勿論個人差があると聞きますが、私の年齢でも耐えられるでしょうか…?
○私自身の近親者に乳がんを患った者は居ないのですが、子どもへの遺伝性の危険はありますか?
○もし先生でしたら術後どのような治療方法をお考えになりますか?(軽度の心疾患があります。
一時期、少しの間だけ内服しておりましたが現在はこれと言って特に何もしていない状態です。)
沢山質問してしまい大変申し訳ありません、この時期だと何かと先生もお忙しいのではないでしょうか…。
このHPの存在や、先生に勇気づけられる方々も多くいらっしゃる事と思います。
どうか先生もお身体ご自愛なさって下さい。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「○上記の検査結果をもう少し分かり易く説明して頂けると助かります。」
⇒硬癌
pT2(22mm), pN1, pStage2B(腫瘍径22mm リンパ節転移1個 ステージ2B)
深達度f(脂肪層)
リンパ管侵襲あり、血管侵襲無
コメド壊死(癌細胞の中心性壊死)あり
乳管内進展無(癌細胞が乳管の中を拡がっているような様子は無)
核グレード3(核異型:癌の顔つき3段階の2、核分裂:3段階の3)
HER2タイプ
MIB-1 LI: 40%(これがKi67の事です。Ki67=40%)
摘出した9個のリンパ節の中で1個に転移を認めます。
「○担当医からはステージ2bと言われましたが、リンパ節転移14個という数字を見ると ステージ3ではと思うのですが…このような転移の場合でもステージ2なのでしょうか?」
⇒ステージ2Bです。(上記で示した様に)
リンパ節転移は1個のようです。
「○改めて私のサブタイプはどのタイプになりますか? もしトリプルネガティブだとすれば、抗がん剤の効き目(再発予防)に期待はありますか?」
⇒HER2タイプです。
抗HER2療法(ハーセプチン+化学療法)は最強の治療であり、間違いなく効果があります。(再発率を半分にします)
「○書類にKi-67の文字が見当たらないのですが、上記の【LI:40%】の事でしょうか?」
⇒MIB-1 labeling indexがKi67 labeling index(LI)の事です。
「○核グレード3ということは【顔つきの悪い腫瘍】に当てはまり、細胞の増殖率も強く、これからの予後・再発に大きく影響してきますか?」
⇒あんまり関係ありません。
「○抗がん剤の副作用というのは勿論個人差があると聞きますが、私の年齢でも耐えられるでしょうか…?」
⇒勿論です。
60歳は「若い」と言えます。
75歳以上なら「考えます」が…
「○私自身の近親者に乳がんを患った者は居ないのですが、子どもへの遺伝性の危険はありますか?」
⇒ありません。
「30代の乳癌、かつトリプルネガティブ」の場合、可能性があります。(それでも
全てではありません)
「○もし先生でしたら術後どのような治療方法をお考えになりますか?(軽度の心疾患があります。」
⇒それであれば、「非アンスラサイクリンレジメン」です。
その中でも「パクリタキセル+ハーセプチン」療法をお勧めします。
「ハーセプチン+パクリタキセル」x12回(毎週)⇒「ハーセプチン単独」(3週毎で9カ月)
これであれば副作用は安心です。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、前回はとても分かり易く回答して頂き有難うございます。
現在3週間に1回ペースの抗癌剤投与が4回分無事に終了し、
来月からは副作用も軽めの抗癌剤にてまた3週間に1回ペース(4回)で始まる予定です。
質問ですが、主治医から9月から始まる抗癌剤投与の際に造影CTもさせて欲しいと言われました。
私としては造影CTは術前のイメージが強く、初診や再発した場合にしこりを詳しく検査する手段ではと思っておりましたので少し驚いています。
主治医からは術後、綺麗に腫瘍を取り除けたと言って頂けたのですが、「きちんと腫瘍を取り切れているのかを改めてCTで確認したい」と言われました。
そして恐らく聞き間違いだとは思いますが、「3か月に1回CT検査」とも言われたような気もします。
(会話の中で沢山数字が出て来ましたので勘違いだとは思いますが…)
乳癌の術後フォローアップは「マンモグラフィーと定期的な診察」だけだと田澤先生の
コメントを拝見し、安易な素人考えですが、もし「取り切れたのか確認したい」だけなのであれば造影CTの検査は避けたいと考えております。
田澤先生はどうお考えになりますか?
1回であれば、それこそ再発の事を考えて検査を受けておくべきなのでしょうか…?
その場合、CT後直ぐの抗癌剤投与には問題ありませんか?
造影剤も個人差はあれど副作用があると聞きましたので少し心配です。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「田澤先生はどうお考えになりますか?」
⇒全く不要です。
無駄な検査は「健康にも経済的にも(国の財政にも)」良くありません。
「1回であれば、それこそ再発の事を考えて検査を受けておくべきなのでしょうか…?」
⇒不要です。
腫瘍マーカー採血していないのですか?
それが正常であれば「無用な心配」です。
「その場合、CT後直ぐの抗癌剤投与には問題ありませんか?
造影剤も個人差はあれど副作用があると聞きましたので少し心配です。」
⇒抗ガン剤には影響ありませんが…
無駄な検査は止めましょう。