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不思議な結果

[管理番号:3088]
性別:女性
年齢:50歳
田澤先生、はじめまして。
いつもこちらのQ&Aを参考にさせていただいております。
4月に右胸の部分切除の手術を受け、6月始め頃から放射線治療、6月末頃からホルモン治療の予定です。
実は今までの経緯と病理検査の結果に不思議な点があり、放射線治療とホルモン治療を躊躇しています。
今までの経緯は下記の通りです。
去年11月に市の検診でシコリが見つかり要検査となり、
12月に別病院にて針生検を受けましたが、採取量が少なく異型が弱いため確定診断に
躊躇しますとの結果が出て、再度マンモトーム生検を追加で受けました。
一週間後に最終的な結果が出たのですが、マンモトーム生検ではガンは見つからず、
最初に行った針生検で免疫染色を行った結果、浸潤がんの最終結果が出ました。
Ca(+)2/3、Scirrhous carcinoma or Tubular carcinoma in site(-) NA:1 MC:
1 NG:1  ER +50%以上 PgR +50%以上 HER2 0
この時点で不思議な結果だったのですが、ガンがあった事は事実だという説明を理解し、
大学病院を紹介していただき、4月末に手術を受け、5月初旬に最終病理結果が出ました。
その結果、取った検体からは浸潤ガンは見つかりませんでした。
その為、下記の最終病理結果の組織型と浸潤径、組織学的異形度は、術前の針生検を参照しましたとの事。
腫瘍径(浸潤部) 0.1cm×0.04cm
腫瘍の広がり(ductal spreadを含める) 0.5cm×0.3cm
組織型 special type tubular carcinoma
浸潤度 g+ f-
脈管浸潤 -
娘結節 -
切除断端 - 乳頭側断端にADHが見られます
Intraductal spreadin + EIC -
壊死comedo - punctual - 石灰化 -
組織学的異形度
Tibilar formation 1 Mitosis score 1 Nuclear stypia 2  Total score 4 グレード1
リンパ節転移 センチネル 0/2
主治医の説明に納得して6月から放射線治療とホルモン治療を受ける予定ですが、
考えるとどうしても疑問が残ります。
母が乳癌、父と祖母が白血病で早くに他界しており、家族歴的に放射線治療による医療被爆と二次ガンを心配しています。
田澤先生はこの状況をどのようにご判断されますか。
ご意見伺えれば幸いです。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
そもそも、健診でみつかった「しこりがどの程度の大きさだったのか?」興味があるところですが…
そのしこり自体は「5mm以上あった」と推測します。
それは「最初の針生検で 5mmの非浸潤がを伴う1mmの浸潤癌」が採取された後に、
「マンモトーム生検」をしているから推測されます。(針生検後にもマンモトーム生検をするターゲットがあった訳ですから)
つまり「検診でみつかったしこりの一部のみ(5mm)が癌であった(浸潤癌はその内1mm)」 『しこりの大部分は良性(硬化性腺症?)だった』と結論されます。
このケースでは放射線治療は不要でしょう。(私であれば放射線照射は省略します)
さらに「浸潤径1mm」ではホルモン療法もしません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

早速のご回答ありがとうございます。
明日、放射線治療の初回診療の為、続けて質問させていただく事をお許し下さい。
田澤先生は放射線治療もホルモン治療も省略されるという事で、さらに迷いが出てきました。
最初の検診では、マンモは異常なし、触診で小さなシコリがあるのでエコーを受けることになり、エコーの結果は7mmの線維腺腫の疑い。
しかし、悪性の可能性も否定できないという事で、経過観察でも良いがどうしますか?と言われて、結局別の病院で針生検を受けました。
(検診を受けた病院では針生検が出来なかったため)
主治医は、家族歴などからどうしても放射線治療を受けたくない場合は省略する選択肢もあるが受けることを勧めるとおっしゃっています。
針生検とマンモトームを受けたクリニックの先生は、後で後悔しないためにも放射線とホルモン治療は受けるべきとおっしゃっています。
部分切除の場合は放射線治療を受けるのが標準だと聞きました。
田澤先生が省略されるとおっしゃったのは、私の場合は超初期で例外的にという意味でしょうか?私の家族歴なども考慮して、放射線治療とホルモン治療を受けることで再発・転移を防ぐメリットより二次癌等のデメリットの方が大きいとお考えでしょうか?
先生がおっしゃるように、5mmの非浸潤癌を伴う1mmの浸潤癌であれば、何故2回目に受けたエコー下マンモトームで何も出なかったのかが疑問です。
針生検を受けたクリニックの先生は、私はレアケースだとおっしゃっていたので、ひょっとすると何処か別の場所に癌が潜んでいるのではないかと不安になります。
(一応、術前の胸部CTとMRIでその他の部分は異常なしと言われていますが)
何よりも再発・転移が心配なので、後で後悔しない治療を受けたいと思っています。
ある程度の(重篤ではない)副作用は覚悟しています。
がしかし、自分の家族歴などから、二次癌が心配です。
痛し痒しです。
以下、質問です。
①放射線治療による白血病などの二次ガンの確率と、ホルモン治療(タモキシフェン5年間)による子宮がんの確率はどれくらいでしょうか?(4cmの子宮筋腫が2個あります)
②最初に受けた針生検でしか浸潤ガンは見つからなかったのですが、それでも最終病理結果は浸潤癌となるのでしょうか?(ステージ0ではなくステージ1ですか?)
③術後検体から浸潤癌が見つからなかったため、最終病理結果の組織型と浸潤径と組織学的異形度は針生検時のものを参考にしているとのことですか、術後検体の非浸潤癌の組織型と組織学的異形度は何故分からないのでしょうか?非浸潤癌には組織型や異形度などの指標はないのでしょうか?
④ADHがあっても断端陰性ですか?これについての治療は必要ないのでしょか?
⑤私の場合、再発・転移の確率はどれくらいでしょうか?
⑥対側(左側)にも3mmと5mmのシコリ2個がエコーで確認されています。
これは良性(線維腺腫)でしょうと言われていますが、今後ガンになる可能性はありますか?今回取った右のシコリも最初は線維腺腫でしょうとの事でしたので心配です。
エコーで見ると似たような形をしていました。
⑦管状癌は同側・対側多発が多いという情報もあるので、予防的な治療は必要ないでしょうか?
長々と申し訳ありませんが、ご回答どうぞよろしくお願いたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
 前回の内容では「病変は針生検で取り切れてしまった」程、小さいわけですよね?
 しかも、その針生検は「採取量が少なく、異型が弱いため(最初)確定できない程」だったのですよね?
 
 そんな『診断確定できない程の少ない採取で取り切れてしまった病変』というものを想像してみてください。
 そんな程度の病変で「大きめに切除」しているのだから「放射線をかけるまでもない」と思ったのです。
 ○しかし、それよりも私がひっかかったのは「CTを撮影」していることです。
 どう考えても「少ない採取の針生検で取り切れてしまうほどの病変」でCTなど必要ですか?
 担当医は「何が見たかった(何を確認したかった)のか?」
 そんな病変で「転移が存在する可能性などゼロ」です。其の程度の認識もないのか。
 少々、悲しくなってきます。
 
「田澤先生が省略されるとおっしゃったのは、私の場合は超初期で例外的にという意味でしょうか?」
⇒その通りです。
 「5mmの非浸潤癌を伴う1mmの浸潤癌」というよりも「少ない採取の針生検で取り切れてしまうほどのちっぽけな病変」と言う事です。
 
「私の家族歴なども考慮して、放射線治療とホルモン治療を受けることで再発・転移を防ぐメリットより二次癌等のデメリットの方が大きいとお考えでしょうか?」
⇒この程度の病変で「再発する」など考える必要性がありません。
 無駄な治療をすればいいというものではありません。
 
「①放射線治療による白血病などの二次ガンの確率と、ホルモン治療(タモキシフェン5年間)による子宮がんの確率はどれくらいでしょうか?(4cmの子宮筋腫が2個あります)」
⇒抗ガン剤(特にアンスラサイクリン系)による白血病のリスクについては言われていますが、「温存乳房照射で白血病は極めて稀」でしょう。
 温存乳房照射では「血管肉腫の頻度が100倍」に上がる(もともと少ないですが 0.0005%⇒0.05%など)とも言われています。
 SOFT試験では「タモキシフェン5年投与で子宮体癌及び肺塞栓による死亡が0.2%増加」となっています。
 
「②最初に受けた針生検でしか浸潤ガンは見つからなかったのですが、それでも最終病理結果は浸潤癌となるのでしょうか?(ステージ0ではなくステージ1ですか?)」
⇒そうです。
 T1mi(微小浸潤)であり、pT1mi, pN0, pStage1です。
 
「③術後検体から浸潤癌が見つからなかったため、最終病理結果の組織型と浸潤径と組織学的異形度は針生検時のものを参考にしているとのことですか、術後検体の非浸潤癌の組織型と組織学的異形度は何故分からないのでしょうか?非浸潤癌には組織型や異形度などの指標はないのでしょうか?」
⇒「組織学的異形度 Tibilar formation 1 Mitosis score 1 Nuclear stypia 2  Total score 4 グレード1」という記載があります。
 非浸潤癌は気にしなくてもいいでしょう。
 
「④ADHがあっても断端陰性ですか?これについての治療は必要ないのでしょか?」
⇒断端陰性です。
 不要です。
 
「⑤私の場合、再発・転移の確率はどれくらいでしょうか?」
⇒ほぼゼロです。
 
「⑥対側(左側)にも3mmと5mmのシコリ2個がエコーで確認されています。これは良性(線維腺腫)でしょうと言われていますが、今後ガンになる可能性はありますか?今回取った右のシコリも最初は線維腺腫でしょうとの事でしたので心配です。」
⇒質問者は勘違いしています。
 良性は悪性には決してならないし、「逆もまた真なり」です。
 もしも心配ならば「針生検してもらいましょう」
 良性ならば、決して悪性にはならないのです。
 
「⑦管状癌は同側・対側多発が多いという情報もあるので、予防的な治療は必要ないでしょう?」
⇒その情報には根拠が全くありません。
 余計な心配は無用です。
 ご安心を。