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診断、化学療法について

[管理番号:2924]
性別:女性
年齢:37歳
はじめまして。
いつも参考にさせていただいております。
宜しくお願いいたします。
このたび、乳がんと診断されました。
既往歴:授乳中の乳腺炎(左)(1人目のとき)、汎血球減少症(切迫早産のときに用いた薬剤でなり、それ以来、39℃などの高熱を良く出すようになりました)があります。
家族歴:祖母と祖母の3姉妹が皆、閉経後乳がん。
腫瘍が大きくⅢ期と
診断されましたが手術して高齢まで生存しました。
現病歴:子ども2人を母乳で育て、2人目授乳中に左胸に硬い部分がありましたが、乳腺炎の名残だと思い3年間授乳を続けました。
断乳後1年経過し、アデノウイルスにかかり脇や首のリンパ節がパンパンに腫れて40℃の熱が3日間出ました。
その後、インフルエンザウイルスのワクチンを左腕に打ちました。
その後から左腕がだるくて、触ってみると左脇のリンパ節が腫れていて、胸にもしこりを見つけました。
すぐに近くの乳腺クリニックを受診し、マンモグラフィー、エコー、針生検をしてもらいました。
そのときのエコーでは、「腫瘤に血流が結構ある」と言われました。
1週間後、結果では「浸潤性」腋かリンパ節は「クラスⅠ」と出ました。
腋かリンパ節の腫瘍は、エコー上、真っ黒で転移が疑わしい、何度も穿刺すると浸潤させてしまうので、もう穿刺しないとのことでした。
サブタイプはまだ出ていませんでした。
乳がんの手術件数が多い、地域の中核病院を紹介してもらい、乳房MRIと骨シンチをとりました。
結果、「パラパラとたくさんの腫瘍がある」「最大腫瘍径18mm」でした。
頸部リンパ節がずっと腫大しており、エコーでは軟らかく腫瘍には見えないということでしたが、全身検索のためPET-CTを撮りました。
結果、「左乳房に淡い造影を有する腫瘤が複数みられ、多発乳がんもしくは乳房内転移」「左腋かに複数の集積みられ、リンパ節転移疑い」「他、頸部は炎症性腫大が考えやすい」「左骨盤部に集積あり。
少し位置がずれているが、性周期に伴う卵巣の生理的集積で矛盾しない」
「左肺上区、右横隔膜近くの胸膜下に結節影あるが、炎症後変化で矛盾しない」との結果でした。
骨シンチでは骨転移なしでした。
その後出たサブタイプ等の結果
左乳房多発腫瘤、最大18mm、MMGでは不整腫瘤像のみ、
CNB 本体乳頭近い最大のもの IDC ER(90%) Pgr(-)Her2
(―) Ki67(50%)ルミナールB like
ABC 右リンパ節クラスⅠも臨床上転移疑い
以上の結果を踏まえ、術前化学療法、左乳房全摘術、放射線療法、ホルモン療法10年をする予定となりました。
乳腺科は混みこみで手術も2カ月待ちになるから、先に化学療法を…とい
うことでした。
現在、術前化学療法中で、Weekly パクリタキセル12回終了し、次にFECを4クール施行する予定です。
パクリタキセルの効果判定はエコーで行っていますが、全体的に腫瘍が薄くなったのと、腫瘍の大きさも少し縮んでいるので、
効いているということになると説明を受けました。
そこで質問させてください。
①パクリタキセルの最期の2回で、1日心臓が痛む日があったので、次の抗がん剤の心毒性について恐怖があります。
心エコーなどは受けており、特に心疾患などは無く、若い人に問題は起こったことは無いと主治医は説明されましたが、次の薬剤をFECからACへ変更した場合、効果はどの程度変わるのでしょうか?蓄毒性がある限り、若くてもダメージは強いのでしょうか?
②パクリタキセルでは、触った感じでは腫瘍はほとんど変わっていません。
パクリタキセルであまり効果がみられなくても、FECが効く場合もあるのでしょうか。
③エコーでは腫瘍は10個、チェックされています。
7個程は左乳房の、
乳腺に沿う形であり、3個程は脇のリンパ節にあります。
これは、やはり、「クラスⅠ」でも「浸潤性」の疑いが強いということには間違いはないのでしょうか?
(現在は、頸部リンパ節の腫れは引いています)
④リンパ節郭清もすると思うのですが、この拡がりだと普通はどこまで取るのでしょうか。
大胸筋、小胸筋も切除する可能性はあるのでしょうか。
⑤これだけ腫瘍が拡がっていれば、放射線もした方が良いとの主治医の意見ですが、やはりそうなのでしょうか?
⑥遺伝性の可能性も言われています。もし、遺伝性の場合、抗がん剤や
放射線によって、遺伝子が傷つきやすく、2次癌になりやすいという説もありますが、ガイドラインでは治療によって再発しやすいという有意差は無いため、標準治療を行うとされていると思います。
先生のご経験上でも、遺伝性が疑われる方の場合でも、標準治療を行った方が予後が良いという感触をお持ちでしょうか?
⑦遺伝性の場合、卵巣がんにも注意すべきかと思います。
以前より、卵巣が腫れていると何度か言われたことがあり、PET-CTでも集積が見られたようですが、どのような検査をどのような機関でどの間隔で受けたら良いでしょうか?
診断を受けてから悶々と様々なことを考えてきましたが、FECを受ける前に不安が募り、質問させていただきました。
お忙しいとは思いますが、どうか、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「次の薬剤をFECからACへ変更した場合、効果はどの程度変わるのでしょうか?」
⇒同じ回数であればACの方が効果が高いでしょう。(FEC6回がAC4回と同等の効果があります。)
 上記臨床試験があるのに「未だにFECを行う」施設があることに大いに疑問を感じています。
 
「若くてもダメージは強いのでしょうか?」
⇒問題ありません。
 アンスラサイクリンは「許容量以下」であれば問題ありません。(術前術後に行う化学療法で、許容量を超えることはありません)
 E(ファルモルビシン)800-900mg/m2
A(アドリアシン)450-500mg/m2
 
「パクリタキセルであまり効果がみられなくても、FECが効く場合もあるのでしょうか。」
⇒あります。
 タキサンとアンスラサイクリンは全く別です。
 
「「クラスⅠ」でも「浸潤性」の疑いが強いということには間違いはないのでしょうか?」
⇒リンパ節の場合は「浸潤性ではなく転移性」と表現します。
 細胞診のクラス1は担当医の手技の問題にすぎません(腋窩細胞診が満足にできないのであれば、敢えてしなければいいのに…)
 画像所見からは、「転移性リンパ節」と考えるべきだと思います。
 
「リンパ節郭清もすると思うのですが、この拡がりだと普通はどこまで取るのでしょうか。」
⇒記載内容からは「レベル1のみ」のようです。
 
「大胸筋、小胸筋も切除する可能性はあるのでしょうか。」
⇒ありません。
 
「これだけ腫瘍が拡がっていれば、放射線もした方が良いとの主治医の意見ですが、やはりそうなのでしょうか?」
⇒放射線照射の適応は「腫瘍の拡がり」ではなく、「リンパ節転移の個数」です。
 ○術前抗がん剤を始めた以上、「手術時のリンパ節転移の個数は無意味」となります。
 あくまで画像評価(US、この場合にはPETも参考に)で「4個以上」ならば放射線照射の適応となります。
 
「遺伝性の場合、抗がん剤や放射線によって、遺伝子が傷つきやすく、2次癌になりやすいという説」
⇒全く机上の空論です。
 標準治療すべきです。
 
「先生のご経験上でも、遺伝性が疑われる方の場合でも、標準治療を行った方が予後が良いという感触をお持ちでしょうか?」
⇒その通りです。
 ただし、「(遺伝子検査にて)遺伝性乳癌とわかっている」方の経験は多くはありません。
 「経験」も「統計」上も、明らかなものが無い以上、標準治療すべきです。
 
「どのような検査をどのような機関でどの間隔で受けたら良いでしょうか?」
⇒遺伝子検査で「遺伝性乳癌と証明」されてない限り「腫瘍マーカーで十分」だと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生こんにちは。
以前は相談に載っていただき、たいへんほっとして治療に臨むことができ感謝しております。
手術が終わり、また新たにご相談させていただきたく存じます。
いつもありがとうございます。
<術前診断>
最大腫瘍径17mm 他にも多数あり エストロゲン90% プロゲステロン
(-) Her2(-)ki67 50%
腋のリンパ節へ数か所転移あり 浸潤性乳管がん
術前Weeklyパクリタキセル+FEC4クール施行後、MRI上完全奏功
8月末 左全摘出 リンパ節郭清術
<術後の病理結果>
硬癌 エストロゲン(+)プロゲステロン(-) Her2(-)
腫瘍径9cm(DCISその中に浸潤性のものが3か所ほど)
最大浸潤径18mm(残っているのはnuclearタイプ)
リンパ節転移 センチネル2/4 レベルⅡ 4/9 レベルⅠ 1/1
DCIS断端ギリギリ陽性?(主治医は焼いているから大丈夫と思うと)
主治医は、浸潤径の割に転移(微小ではなく2mmのものもあった)が多かったので、小さくても転移するタイプの癌かもとのことです。
主治医は放射線を普通は首まで当てないけど首まで当てるのと、DCIS断端陽性の可能性がある部分に当てると言っておりますが、首までとは鎖骨上窩リンパのことでしょうか。
また、もし希望するならいつでもDCISがあるかもしれない部分を再手術すると言っていただいていますが、再手術と放射線、先生ならどちらが良いと思われますか?
また、DCISの部分には、一般的にはブースト照射(total60Gy)するのでしょうか?主治医からは何も聞いておりません。
また、放射線は胸骨リンパ節には当てなくてよいでしょうか?主治医は、放射線科の先生の意見によると言っています。
放射線治療を、従来の機械で当てるか、true beamで当てるか迷っています。
True beamは4門の接線照射とのことですが、これは標準治療と考えてよいのでしょうか。
また、もしブースト照射した場合、皮膚がカチコチになったりしませんか?
放射線後、期間を決めて点滴で抗がん剤をするか、内服で抗がん剤をするか(強いものか弱いものか)、ホルモン剤だけでいくか相談になると言われておりますが、先生はどれが良いと思われますか。
できれば、具体的な薬剤の名称も教えていただけると助かります。
主治医は、術前の抗がん剤がよく効いたからもっとやればもっと効くかもと思うかもしれないが、やって効いてないから効かないタイプが残っていると考えて、
抗がん剤をするなら違うのをやったほうがいいと思うとおっしゃっています。
小さい子どもが2人おり、なるべく長生きしたいです。
先生のご回答を頼りに決めたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「主治医は、浸潤径の割に転移(微小ではなく2mmのものもあった)が多かったので、小さくても転移するタイプの癌かも」
⇒馬鹿馬鹿しい。(言葉が悪くてすみません)
 術前抗がん剤後の「浸潤径」で話をしても無意味です。
「首までとは鎖骨上窩リンパのことでしょうか。」
⇒その通りです。
「また、もし希望するならいつでもDCISがあるかもしれない部分を再手術すると言っていただいていますが、再手術と放射線、先生ならどちらが良いと思われますか?」
⇒全摘しているのですよね?
 (これ以上)「何処を切除するつもり」なのでしょうか?
 もともと「胸壁照射」も推奨されますので(リンパ節転移4個以上あったわけですから)それでいいでしょう。
「また、DCISの部分には、一般的にはブースト照射(total60Gy)するのでしょうか?主治医からは何も聞いておりません。」
⇒そうだと思います。
「また、放射線は胸骨リンパ節には当てなくてよいでしょうか?主治医は、放射線科の先生の意見によると言っています。」
⇒胸骨傍リンパ節parasternal lymph node は、通常は照射しません。(あくまでも転移を疑った時だけです)
「True beamは4門の接線照射とのことですが、これは標準治療と考えてよいのでしょうか。」
⇒その通りです。
「また、もしブースト照射した場合、皮膚がカチコチになったりしませんか?」
⇒関係ありません。
「先生はどれが良いと思われますか。」
⇒術前抗がん剤をしているのだから術後に化学療法は不要です。
 
 ホルモン療法単独となります。
「主治医は、術前の抗がん剤がよく効いたからもっとやればもっと効くかもと思うかもしれないが、やって効いてないから効かないタイプが残っていると考えて、抗がん剤をするなら違うのをやったほうがいいと思うとおっしゃっています。」
⇒根本的に「考え方」が間違っています。
 術前化学療法の効果を見て「術後も化学療法を行う」べきではありません。(術前術後の抗ガン剤はきまっているのです)