[管理番号:2791]
性別:女性
年齢:55歳
こんにちは。
初めて質問させていただきます。
私の母(55歳)が先日、4/(上旬)に乳がんと診断されました。
腫瘍の大きさは2cmで右乳房です。
父と母が、医師が何と言ってたかを話してくれるのですが、
私には疑問点が多々あり、
先生に質問させていただければ幸いです。
以下、長文にて失礼します。
【経緯】
★まず、2末の健康診断で、母は乳癌の疑いがあると言われました。
マンモグラフィではひっかからなかったのですが、
超音波で、2cmの影が見えるとのこと。
※1年に一回は人間ドッグを欠かさず受けています
★3 月初旬に、総合病院の乳腺外科を訪れ、検査。
■マンモグラフィ→触診→超音波→医師の診察→細胞診の流れでした。
医師の診察で、細胞診の結果は出ていないけど、
「おそらく良性でしょう」と言われます。
マンモには何も映らず、触診してもしこりはない。
超音波にはうつるけど、悪いものではなさそうです、とのこと。
念のため、細胞診を行い、
その検査結果を待ちましょうという流れになります。
★3月中旬に、細胞診の結果が戻ってきます。
結果は、グレー。
悪いものは見つからなかったが、100%良いものだとも言えない。
なので、MRIと生検を行いましょうと言われます。
★3月下旬にMRIをとります。
ここでも結果はグレー。
完全に悪いわけではないが、
良いともいいずらい。
しかし、もし乳がんであったとしても、
ステージ0の非浸潤性乳がんでしょう、と言われます。
★4月(上旬)日に生検を行います
★4月(上旬)日に最終結果が出ます。
そこでの検査結果は、浸潤性乳癌でした。
おそらくステージ1か2あたりだが、転移の可能性もある。
肺や骨に転移しやすいし、転移していたらステージ4の可能性もある、
と診断されます。
【質問】
1) 良性腫瘍に見えても、検査の結果がグレーになり、生検を受けることはよくあると聞きます。
細胞診の段階で、グレーで悪性とは
言い切れないのだから、がんだとしてもステージ0の非浸潤性乳がん
である可能性が高いと医師が言っていたようです。
でも現実は違いました。
細胞診、MRIがグレーなのに、ステージ1以上、場合によってはステージ4
なんてことは起こりうるのでしょうか?
また、2cmもある腫瘍なのに、細胞診でわからないなんて、
細胞診を行った医師が、うまく採取できていなかったなんて
可能性はあるのでしょうか?
2) 母は毎年、1年に一回は、人間ドッグを受けていました。
調べたところ、乳癌の腫瘍は、1cm育つのに7年ほどかかるとのことでした。
1年前は異常なしであったのに、進行がゆっくりなはずの乳癌がたった1年で
2cmもの腫瘍に育ってしまうことはあるのでしょうか。
よほど進行性のあるがんだということでしょうか。
3) 肺や骨への転移もないとはいえないとのことですが、
ここまで調べてもなかなかがんだと診断できなかったがんが、
遠隔転移までしていることはあるのでしょうか。
肺や骨にまで転移しているほどのがんならすぐにわかっても
よさそうなのに…と思ってしまっています。
以上です。
私が直接医師に聞けたらよいのですが、
母と父から間接的にしか聞けず、
どうしても納得できない点があったので、
この場で質問させていただきました。
もう2週間もすると、どこまで転移しているのか、
大体わかってくるのですが、その前にある程度知っておきたく。
お手数ですが、何卒ご回答のほどよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「結果は、グレー。悪いものは見つからなかったが、100%良いものだとも言えない。 なので、MRIと生検を行いましょうと言われます。」
⇒MRIは「診断には不要」です。
「針生検を最初からすべきだった」と思います。
「肺や骨に転移しやすいし、転移していたらステージ4の可能性もある」
⇒ばかばかしい。
遠隔転移などありえません。
単に、「再発しやすい臓器を羅列しているだけ」にすぎません。
「細胞診、MRIがグレーなのに」
⇒まずは「細胞診」ですが…
「細胞診の手技の精度が悪かった」 ようです。
本来は確実に「クラス5」を出せなくては「一人前」とは言えません。
次にMRIですが…
そもそも「MRIを診断に使うべき」ではありません。
診断で「MRIに頼る」ようだから、「細胞診が,上手くできるようにならない」とも言えます。
「ステージ1以上、場合によってはステージ4なんてことは起こりうるのでしょうか?」
⇒浸潤癌で2cmを超えるとステージは2となってしまいます。
大きさからは「その可能性もある」とは思います。
ただ、この状況で「ステージ4の可能性に言及」すること自体、診療技術に問題があります。
遠隔転移などないので、ご心配なく。
「また、2cmもある腫瘍なのに、細胞診でわからないなんて、細胞診を行った医師が、うまく採取できていなかったなんて可能性はあるのでしょうか?」の
⇒大学病院なのか、どこかの「大病院」なのか、わかりませんが…
そのような病院には「往々にして」その程度の「診断技術の医師」があふれているのです。(大変残念なことですが…)
ちなみに、(針生検にくらべれば)「細胞診の技術は経験の要する」ことは確かです。
「1年前は異常なしであったのに、進行がゆっくりなはずの乳癌がたった1年で 2cmもの腫瘍に育ってしまうことはあるのでしょうか。」
⇒質問者は大きな勘違いをしています。
まず「1年前に病変が無かった」ことは、ありえません。
「毎年受けている検診」のメニューは何でしょうか?
もしも「マンモグラフィー」であれば、「1年前に1cmの腫瘍があっても見逃している(検出できない)可能性が十分にあります」
○超音波だとすれば、「5mmくらいあれば、検出できは筈」ですが…
「よほど進行性のあるがんだということでしょうか。」
⇒そんなものは「乳癌にはありえません」
ご安心を。
検診での「検出力」には注意が必要です。
「肺や骨への転移もないとはいえないとのこと」
⇒100%ありえないのでご心配なく。
「ここまで調べてもなかなかがんだと診断できなかったがんが、遠隔転移までしていることはあるのでしょうか」
⇒絶対にありません。
ご安心を。
○如何に「診療を解っていない医師」が診療をすると「本来必要のない心配」をしなくてはならないかを痛感させられます。
このQandAを通して、そのようなことが少しでも減ることを願っています。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、こんにちは。
以前は長文での質問にも関わらず、
ご丁寧に回答いただきまして
ありがとうございました。
先生からの回答をみて、
父とともに少し安心し、
母は手術に挑みました。
追加でお伺いしたいことがあり、
以下質問させていただきます。
お忙しい中恐れいりますが、
ご回答いただけますと幸いです。
引き続き、
母の乳がんに関する質問となります。
術前検査で、肺、骨への遠隔転移は認められず、
2016/4/(下旬)に、右乳房の温存手術を行いました。
■腫瘍の大きさ:2.1cn
■場所:右乳房
直前の触診でもしこれりにはふれず、
マンモでも確認できず、
超音波でのみ影が見える、わかりづらい場所にある乳管がんでした。
手術と同時にリンパを部分切除し、
簡易病理検査にまわしたところ、
リンパに転移なし。
術後、2週間して、切除した腫瘍に関する
病理検査の結果が出ました。
結果は、リンパへの転移は認められず、
遠隔転移もない。
手術によって腫瘍はすべて切除できたそうです。
しかし、まさかの、トリプルネガティブ。
ホルモン治療がまったく効果がないとのことで、
抗がん剤治療をスタートすることになりました。
抗がん剤治療は、アンスラサイクリン系と呼ばれる抗がん剤を用いたEC療法になるそうです。
3週間に一度×4で、
術後の体調が落ち着いたタイミングからスタートするそうです。
主治医より、3つの化学療法を提示され、
中には髪も抜けず、副作用の少ない治療もあったそうですが、
徹底的にたたき、がんを根絶したいという母の希望で、中でも一番副作用が強い、EC療法に決めたそうです。
■質問■
1) リンパ転移なし、遠隔転移なし、トリプルネガティブという母の症状の場合、
抗がん剤治療を行えば、完治も見込めるのでしょうか?
トリプルネガティブの場合、その他の乳がんと比べ、再発率が高いと聞きました。
トリプルネガティブという事実を重く受け止め、いつ再発してもおかしくないと家族して、覚悟しておくべきでしょうか。
2) トリプルネガティブだと、抗がん剤治療→放射線治療が終わると、
その後は、数か月に一度の検診以外、特に投薬などもないとのことでした。
トリプルネガティブだと、抗がん剤治療後は本当に何もしようがないのでしょうか?
何もできないからこそ、再発リスクが他の乳がんと比べ、高まるのでしょうか?ほかの乳がんだと、5年ほどホルモン剤を飲むそうなので、そのことで、再発リスクを抑えられるのかなと思いました。
二転三転あった後、無事手術が終わり、
転移もなく安堵していたところに
まさかのトリプルネガティブの結果で、
家族一同動揺していますが、
そんな母をしっかり家族でサポートしていきたいと思っております。
長文の質問で恐縮ですが、
ご教示いただけますと幸いです。
宜しくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
早期乳癌(腫瘍径21mm, リンパ節転移なし)で良かったです。
この状態で「転移していたらステージ4の可能性もある」とか「くだらないコメント」をしていた担当医の良識を疑います。(脅かせばいいというものではありません。本来医師は患者さんに無用な心配をさせないようにすべきと私は思います)
私が常々「苦々しく」思っている事のひとつに「トリプルネガティブに対する誤解」です。
ネットを見ると「いろいろ書いてある」のでしょうが、「即刻、そんなもの見るのは止めましょう」
実際に診療していて「トリプルネガティブが特別再発しやすい」などという感覚はありません。
やはり、「ステージが予後には物を言う」のです。
○単純にトリプルネガティブは「ルミナールタイプ⇒ホルモン療法」「ハーツータイプ⇒抗ハーツー療法」のように『ターゲットが無いから、通常の抗ガン剤をしましょう』ということです。
「ホルモン治療がまったく効果がないとのことで、抗がん剤治療をスタートすることになりました。」
⇒その通りです。
ターゲットが無い以上「再発予防としては」通常の抗ガン剤が選択されるのです。
「抗がん剤治療は、アンスラサイクリン系と呼ばれる抗がん剤を用いたEC療法になるそうです。」
⇒この選択には疑問です。
アンスラサイクリン単独ということのようですが…
本来の「トリプルネガティブ」ではゴールデンスタンダードとしては「アンスラサイクリン+タキサン」が選択されます。
○おそらく担当医は「リンパ節転移がない、早期だから」ということで「アンスラサイクリン単独でいいか」という意図なのでしょうが…
早期だから、単独にするのであれば、タキサンにすべきでしょう。
TC>ACが証明されているのに、「何故アンスラサイクリン単剤とするのか」
理解に苦しみます。(かつてのFEC全盛期の名残なのでしょうが…)
「1) リンパ転移なし、遠隔転移なし、トリプルネガティブという母の症状の場合、 抗がん剤治療を行えば、完治も見込めるのでしょうか?」
⇒本当に「完治が見込めない」と思っているのですか?
トリプルネガティブの人が「全員再発する」とでも、「本気で思っている」のですか?
今すぐ、「くだらないネットを見るのは止めましょう」
「トリプルネガティブという事実を重く受け止め、いつ再発してもおかしくないと家族して、覚悟しておくべきでしょうか。」
⇒本気でそう思っているのですか?
早期乳癌ですよ。
再発しない方が「圧倒的に高い」です。
「2トリプルネガティブだと、抗がん剤治療後は本当に何もしようがないのでしょうか?」
⇒抗ガン剤治療で十分です。
☆☆ルミナールタイプは「ホルモン療法」、ハーツータイプは「抗ハーツー療法」どちらも、(長さの差異はあれ)「終われば無治療になる」どれも同じです。
「何もできないからこそ、再発リスクが他の乳がんと比べ、高まるのでしょうか?」
⇒質問者は勘違いしています。
術後の抗ガン剤は「何もできない」事とは異なります。
立派に再発率の減少効果があります。
「ほかの乳がんだと、5年ほどホルモン剤を飲むそうなので、そのことで、再発リスクを抑えられるのかなと思いました。」
⇒それぞれのタイプで、行う事が決まっている(☆☆参照)、わざわざ「トリプルネガティブを悪者扱い」する必要はありません。
「まさかのトリプルネガティブの結果で、家族一同動揺しています」
⇒余計な情報はシャットアウトすることです。
そんなことより、「早期である事(21mm リンパ節転移無では十分な低リスクです)
を喜ぶべき」です。
おかしな時代になったものです。