[管理番号:2776]
性別:女性
年齢:47歳
はじめまして
2月に悪性腫瘍が見つかり、わきの下の腫瘍を
3月に手術しました。
乳がん由来のガンで潜在性乳がんとのことです。
病理の結果は、ホルモンERとPRともに陽性 Ki67は10%
HER2も陽性です、グレードなどは胸に所見がないので何とも言えないのですが2くらい。
ルミナールBタイプだそうです。
EC療法半年とハーセプチン1年あと5年以上のホルモン剤と言われました。
オカルト乳がんとは珍しいタイプだと思いますが
セカンドオピニオンもせず、主治医もいい先生なので
そのまま従うべきと覚悟は決めたものの。。。
田澤先生の見解もお聞きできればと
思って初めて問い合わせさせていただきました。
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
腋窩の潜在性乳癌=occult cancerということですが、以下の点について確認してください。
○腋窩には副乳があります。
そのため、腋窩にできた腫瘤が「乳癌を疑うもの」であった際には、それが『(腋窩副乳由来の)副乳癌なのか、(副乳癌ではなく)「乳癌のリンパ節転移」なのか?』
今回、「腋窩の潜在性乳癌」との診断ですが、『腋窩リンパ節転移があるけど、(乳腺内には)原発病巣が不明』であることを指します。
この場合には「この腫瘤自体が転移性リンパ節」だから(原発相不明の)「リンパ節転移陽性」となります。
これに対し、(腋窩副乳由来の)「副乳癌」であれば、(そもそも乳腺に原発巣などなく)よって、「潜在性乳癌とは言わない」のです。
★何故、このようなことをコメントしているのかというと…
私が江戸川病院に赴任した当初、(大学病院の非常勤医師達の診療を引き継いだのですが…)明らかな副乳癌を(腋窩リンパ節転移と勘違いして)「潜在性乳癌として診療していた」ことを見つけたからです。
もしかして、質問者の担当医も「副乳癌に思い至らずに、勘違いしている」可能性を感じたからです。
「乳がん由来のガンで潜在性乳がんとのことです。」
⇒もしも病理組織に「リンパ組織が無ければ」腋窩の「副乳癌」かもしれません(潜在性乳癌などではなく)
「病理の結果は、ホルモンERとPRともに陽性 Ki67は10%HER2も陽性です、グレードなどは胸に所見がないので何とも言えないのですが2くらい。ルミナールBタイプだそうです。」
⇒普通に副乳癌のように思えるのですが…
「EC療法半年とハーセプチン1年あと5年以上のホルモン剤と言われました。」
⇒これは質問者の勘違いです。
正確に言うと、ECは4回(3カ月)その後に「タキサン+ハーセプチン」(3カ月)その後「ハーセプチン単剤」(9カ月)+ホルモン療法5年だと思います。
少なくともECを8回(6ヵ月)行うことは「標準療法ではない」ので注意しましょう。
「オカルト乳がんとは珍しいタイプだと思います」
⇒「Occult cancerなのか、副乳癌なのか」
ただ、どちらにしても「HER2+」であれば、「抗HER2療法は必須」です。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、ご丁寧に質問にお答えいただき
ありがとうございます。
始めは 副乳がんということで手術いたしましたが、
病理の結果 腫瘍そのものがリンパ節であり、
オカルト乳がんとなったようです。
ただ、それ以外のリンパには転移は見られなかったとのことです。
結論からいいますと、HER2陽性である以上、抗がん剤治療は
つきものになるのですよね?
GW明けから治療開始となるのですが、
病理結果が間違うということはほぼないですよね?
そうなると、副乳がんでも オカルト乳がんでも
同じ治療になりますか?
本当は、抗がん剤はなるべくやりたくないのですが、
ハーセプチンをするには、抗がん剤をするしかないとのことで
あきらめてこの治療を受け入れることにしました。
それで間違いないという意見がききたかったのかもしれないです。
本当にありがとうございました。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
本物のoccult cancerだったのですね。
「HER2陽性である以上、抗がん剤治療つきものになるのですよね?」
⇒その通りです。
抗HER2療法は「再発率を半分にする、とても重要な治療」です。
ただし、本当に質問者のいうように「EC療法半年とハーセプチン1年あと5年以上の
ホルモン剤」というレジメンだとしたら「疑問を呈し」ます。
○抗HER2療法のgolden standardは「アンスラサイクリン」+「タキサン+ハーセプチン」⇒「ハーセプチン単剤」であり、これをmodefyしたものが「非アンスラサイクリンレジメン」です。
HER2療法との組み合わせは、あくまでも「タキサンが主役」なのです。
もしも本当に(質問者の言う様に)、(タキサン抜きの)「アンスラサイクリン
+ハーセプチン」だとしたら… 「如何なものか?」
「病理結果が間違うということはほぼないですよね?」
⇒その「腫瘍組織自体にリンパ組織が存在すれば」間違いありません。
「そうなると、副乳がんでも オカルト乳がんでも同じ治療になりますか?」
⇒全く同じです。
「ハーセプチンをするには、抗がん剤をするしかないとのことであきらめてこの治療を受け入れることにしました。それで間違いないという意見がききたかったのかもしれないです。」
⇒それで「間違い」ありません。