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トリプルネガティブ乳癌

[管理番号:2597]
性別:女性
年齢:38歳
はじめまして、こんにちは。
約1ヵ月前に腋窩のシコリに気付き、MMGでは不明瞭、エコーで癌を疑われました。
1年半前のMMG、触診では異常なしでした。
諸々の検査結果で、左乳癌(乳頭腺管癌.充実性腺管癌)、左リンパ節転移と診断されました。
エコーでは20mm大が2~3個と言われましたが、造影MRIでは53mm大の腫瘤が認められました。
PETにて遠隔転移なし、左腋窩リンパ節転移(レベルⅠ.Ⅱ)、右腋窩リンパ節転移疑い(レベルⅠ、細胞診結果待ち)。
病理組織検査でトリプルネガティブ、Ki67:50~85%でした。
私は元々胸が小さいのと、子供2人を完全母乳で育てたため胸に未練はなく、全摘を希望し主治医にも伝えています。
主治医は術前ケモをすすめてきますが、こちらで勉強させて頂き、疑問を抱いています。
小さくして取った方が、とか、消える人もいるんだよ、と言われました。
5月中旬に大事な試験があることを話したからの配慮なのか分かりませんが…。
まず2週に1回を4回と言われています。
薬剤名は忘れてしまいました。
①術前ケモが必要なのか
②今の状態でのオペは難しいのか
③右リンパ節転移は右乳房に癌がなくても起こりうるのか
④今後のトリプルネガティブ乳癌治療のために治験に参加することは出来るのか
以上長くなりましたが、よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「主治医は術前ケモをすすめてきますが、こちらで勉強させて頂き、疑問を抱いています。」
⇒当然の疑問です。
 勧める理由が不明です。
 本来の術前化学療法の目的は「小さくして温存」ということを再認識すべきです。
 
「小さくして取った方が、とか、消える人もいるんだよ、と言われました。」
⇒「小さくして取った方が」と言う意味は「小さくして温存」という意味ですか?
 それであれば、「正しい治療」と言えます。
 しかし、「質問者本人が、全摘を希望」しているのであれば、何ら正当性がありません。私には、その医師が(手術する際に)『手術操作を楽にするために、つまり自分のために術前抗がん剤を勧めている』ようにしか見えません。
 「消える人もいるんだよ」というコメントは「何を意味する」のでしょうか?
 術前抗がん剤で「消えた=画像上消失」したとしても、結局「手術は、通常通りする」のです。
 それは、何のメリットにもなりません。(消失したから、手術はしなくていいという訳では無いのです)
 『病理学的完全寛解(pathological complete response:pCR)すると予後がいい』ことは事実ですが、これが意味する事を良く考えてみてほしい者です(むやみに不適切な理由で術前抗がん剤を勧める医師達に)
 その患者さんがpCRであったということは、その患者さんに「抗ガン剤が著効する」ことを意味しており、「予後がいいのは当然」となります。
 仮に、この患者さんが(術前化学療法を選択せずに)術後に化学療法をすることを選択したとすれば、『当然、抗ガン剤が著効し(ただ、それが目に見えないだけ)結果的には(同様に)予後良好となる』わけです。
 つまり、『化学療法は術前でも術後でも予後は同等である』という事実から、外れる事はないのです。
「まず2週に1回を4回と言われています。薬剤名は忘れてしまいました。」
⇒これは、おそらく「AC」でしょう。
 どうやら、「dose dense」を勧めているようです。
 
「①術前ケモが必要なのか」
⇒「全摘希望」ならば、全く不要です。
 
「②今の状態でのオペは難しいのか」
⇒全くそんな事はありません(その担当医にとっては、どうかは不明ですが、一般的には)
 
「③右リンパ節転移は右乳房に癌がなくても起こりうるのか」
⇒これは、ありません。
 「対側の腋窩リンパ節」は、例えるなら「銀河系」よりも遠い位置なのです。
 ○体側腋窩リンパ節転移がもしもあれば、それは「遠隔転移」扱いとなり、質問者がそんな状況にあるとは「とても思えません」
 
「④今後のトリプルネガティブ乳癌治療のために治験に参加することは出来るのか」
⇒もしも「遺伝子検査」を受けて「BRCA遺伝子変異」があれば、OlympiAで「オラパリブ」投与に参加できます。
 このPARP阻害剤は、一度は「トリプルネガティブでの有用性は否定:米国2011ASCO」されています。
 ただし、「トリプルネガティブの中でもBRCA遺伝子変異に絞れば有効性があるのでは?」というのが現在日本で行われているOlympiAなのです。