[管理番号:2333]
性別:女性
年齢:46歳
はじめまして。
よろしくお願い致します。
現在46歳、2015年6月の健康診断時に触診とマンモ実施、その際には所見なしでしたが、乳腺高濃度不均一、
ということで次回はエコーをお勧めします、との表記がありました。
その後11月に自身でしこりを確認。
近所の病院での初診を経て現在の病院へ。
細胞診断の結果、浸潤性乳癌、ホルモン受容体+、HER2-、ki67は10%、核グレード2、です。
しこりの大きさは11月のエコー時で2センチ、1月のCT,MRI時では2センチプラス乳頭の方へ少し出ていることがわかり、全体では23ミリということになりました。
現在の検査内では他へのあきらかな転移は認められない、という状況です。
出来るだけ抗がん剤は使用したくない、という気持ちがあり、術前化学療法は行わず、部分切除手術を行うことになりました。
部分切除でいけるぎりぎりの大きさ、ということで、左右の乳房の大きさが変わってしまうことは納得済みです。
今現在はまだ一切の治療をしておりません。
主治医の先生が、できるだけ癌の状態を正確に見たいので術後の病理検査をしてから治療方針を確定させたい、とのお話しでした。
それで、センチネルリンパ節生検をすることになりますが、これについてはまだ簡単な説明があっただけで、転移が認められればリンパ郭清となる、というくらいの説明しかありません。
3日後に手術説明の日が設けられているのでその日に詳細をお伺いできるのだと思っています。
自分自身としては、もしリンパへの転移が認められてもできるだけ切除はしない方針でいきたいのですが、それを主治医の先生にご相談することはできるのでしょうか?
一般的に考えてどうなのでしょうか?
もちろん先生は治療として最善の案を提案して下さるのだと思いますが、様々な事前情報を得るにつれて、もし今後の再発率にあまり差がないようであれば、予防的なリンパ切除は避けたいと思うのです。
また、術後もできる限り抗がん剤治療は避けたいと思っています。
抗がん剤の使用については術後の病理検査の後にはっきり方針を決める、ということになっていますが、抗がん剤を使用しない方針の場合、リンパ切除の有無がどのように影響してくるか、ご教示願えれば幸いです。
環境は、フルタイム勤務で仕事は継続する予定、まだ子どもも小さく術後は普通に生活ができることが希望です。
よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
cT2(23mm), cN0, luminalA(Ki67=10%), NG2
「それで、センチネルリンパ節生検、転移が認められればリンパ郭清となる、というくらいの説明」「自分自身としては、もしリンパへの転移が認められてもできるだけ切除はしない方針でいきたいのですが、それを主治医の先生にご相談することはできるのでしょうか?一般的に考えてどうなのでしょうか?」
⇒まずセンチネルリンパ節生検についての考え方を以下に載せます。
①SLN(センチネルリンパ節)に転移を認めない場合には「腋窩郭清は省略」する
これについては「疑問の余地」はありません。
世界のスタンダードと考えていただいて結構です。
もしもいまだに「日本の地方のどこかで(ひっそりと)明らかなN0症例に対して、センチネルリンパ節生検をせずに腋窩郭清をしている(一般)外科医が居るとしたら、非難されるべき時代」と言えます。
②SLNに微小転移(2mm以下)を認めた場合
これについても「腋窩郭清は省略する」でほぼ意思統一されている。と考えて結構です。
IBCSG 23-01(臨床試験)で934症例での「微小転移症例の非郭清と郭清群との比較」で「生存率も再発率も差がない」ことが証明されています。
これを受けて「乳癌診療ガイドライン」でも「腋窩郭清の省略が勧められる」乳癌ガイドライン推奨グレードBとなっています。
♯Bとはなっていますが、内容的にはAと思います。
③SLNに肉眼的転移(>2mm)を認めた場合
ここが、正に「議論の多い」ところです。
・SLN転移陽性患者の約半数は非SLN転移を有していない
・ACOSOG Z0011(臨床試験)では、以下の条件
「腫瘍径5cm以下で画像上リンパ節転移を疑わない」「SLN転移2個以下」
「温存手術(術後照射を行う)」「術後薬物療法あり」を満たす場合には「郭清の有無で生存率も再発率も差がない」との結果
・2014のASCOガイドラインでは「照射を行う温存手術」であれば「2個までの転移」であれば、腋窩郭清を省略すべき
これらの中で「適切な基準に基づいて腋窩郭清省略を考慮しても良い」乳癌ガイドライン推奨グレードC1となっています。
この「適切な基準」というのが各施設で様々なのが現状です。
★このような基準が有る事を前提として、「ご自身の希望がどの位置にあるのかを考えるべき」です。
現時点でバランスがいいのが②として私自身は②で行っています。
ただ追加郭清といっても「その程度」には様々あることに注意が必要です。
♯術前の画像診断や術中所見を参考にするべきです。
どこぞの大学病院では「センチネルリンパ節に転移があれば、レベルⅡまでずたずたに格清」しているようですが、私は賛成しません。(そして結局 SLN1/1 レベル1 0/20 レベル2 0/3みたいな悲惨なことになるのです)
○質問者が③を望むのならば、なおのこと事前に「きちんと担当医と相談」すべきです。
「抗がん剤を使用しない方針の場合、リンパ切除の有無がどのように影響してくるか」
⇒全く影響しません。
乳癌の治療は「局所療法」と「全身療法」にきちんと分けて考えるべきです。
「luminal Aであり、乳房温存手術を予定している」質問者の場合には
「局所療法=手術+放射線」であり、「全身療法=ホルモン療法±抗がん剤」となるのです。
♯(局所療法としての「リンパ節切除をどうするか?」と(全身療法である)「抗癌剤をどうするか?」は『全く無関係』なのです。
★質問者のケース(luminalA)では「リンパ節転移4個以上」以外では「ホルモン療法単剤」でいいと思います。