[管理番号:2257]
性別:女性
年齢:50才
田澤先生、いつも拝見させていただいております。
丁寧なご回答にとても信頼感を感じております。
5年前に左乳房の温存手術を受けました。
当初の針生検の病理検査の結果は
NSAS-BC:grade1(atypia2+mitosis1)
m-SBR: grade1(atypia2+mitosis+tubular formation1) Her2:1+ ER:99% PgR:99%
MIB-1:20%
でした。
リンパには転移はないものの腫瘤が大きかったらしく(正確には何センチか聞いていませんでした。)
主治医からはリンパには転移がないのでステージ2aと言われました。
手術前に抗がん剤治療(EC4回、ドキタセル4回)で小さくなったので温存手術を受けました。
手術の時、主人は「抗がん剤で小さくならなかったら全摘しなければならなかった」と言われたそうです。
5年経った現在、ここを切り取ったんだなというのが自分でわかりますが、切り取った部分は大きいように思います。
(胸を乳頭を境に上下半分にした上側がごっそり無くなっています。
下側のふくらみのある部分が残っています。
脂肪を移植してくれたそうですがなじまず固まってしまいました。)
それでも術後は術後の病理検査で切り取った断面付近に癌があったらしく、放射線治療30回、ノルバデックスの服用、3ヶ月ごとのリュープリン注射、6ヶ月に一回のエコー、一年に一回のマンモ検査をしてきました。
5年間何事もなくすごしてまいりましたが、つい先日のエコーの検査で手術したほうと逆のリンパが大きくなってることがわかり細胞検査を受けました。
悪性所見はなしとのことでしたが、結果が出るまでの間、転移かと頭が真っ白になってしまったということがありました。
田澤先生はリンパ転移がなければ遠隔転移はないとおっしゃっていますがわたしの場合も心配ないでしょうか?
先生は腫瘍の大きさのこともよくおっしゃっていますが、大きかった場合はその時の検査でリンパに転移がないといわれても目に見えない癌が体を流れている可能性はあったのでしょうか?
そして今後のことで相談なのですが
5年経過した一区切りということでリュープリン注射は終わりにしました
そのタモキシフェンについては、再発の予防にもなるとのおはなしだっ
たので今後も続けることにしました。
5年間は元気に過ごしてまいりましたが、今後も再発、転移の可能性は高いのでしょうか?タモキシフェンを服用している間は大丈夫なのでしょうか?
お忙しいところ大変申し訳ないのですが、よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「5年前に左乳房の温存手術を受けました。
NSAS-BC:grade1(atypia2+mitosis1)m-SBR: grade1(atypia2+mitosis+tubular
formation1) Her2:1+ ER:99% PgR:99% MIB-1:20% リンパには転移がないのでステージ2aと言われました。」
⇒これらの事実からは pT2(20mm<腫瘍径≦50mm), pN0, pStage2A, luminal Aということがわかります。
「手術前に抗がん剤治療(EC4回、ドキタセル4回)で小さくなったので温存手術を受けました。」
⇒術前抗がん剤の正しい使い方です。
「術後の病理検査で切り取った断面付近に癌があったらしく、放射線治療30回、ノルバデックスの服用、3ヶ月ごとのリュープリン注射、6ヶ月に一回のエコー、一年に一回のマンモ検査」
⇒今なら「SOFT試験からLH-RHagonistの適応が?」というところですが、おおよそ正しいと思います。
「田澤先生はリンパ転移がなければ遠隔転移はないとおっしゃっていますがわたしの場合も心配ないでしょうか?」
⇒これは勘違いされています。
「リンパ節転移もしていないような乳癌」は初診時には「遠隔転移など無い」という意味です。
○術後の長い経過の中で「リンパ節転移が無ければ、遠隔転移は存在しない」という意味ではありません。
術後では『(リンパ節転移などの)局所再発は非常に稀なため、(リンパ節などが腫れずに)遠隔転移は起こります』
「先生は腫瘍の大きさのこともよくおっしゃっていますが、大きかった場合はその時
の検査でリンパに転移がないといわれても目に見えない癌が体を流れている可能性はあったのでしょうか?」
⇒これも誤解です。
pT2は私の中では「大きな腫瘍」の内に入りません。
「10cm近い大きさ」のことを言っているのです。
「5年間は元気に過ごしてまいりましたが、今後も再発、転移の可能性は高いのでしょうか?」
⇒高くはありません。
5年過ぎて「だいぶ下がって」います。
「タモキシフェンを服用している間は大丈夫なのでしょうか?」
⇒そうとは言い切れませんが…
十分な抑性効果があることは間違いありません。
10年続けましょう。
質問者様から 【質問2】
先生、先日は丁寧に回答くださり有難うございました。
5年経過で転移の疑問やタモキシフェン服用について相談させていただいた者です。
おかげさまでこれまで受けてきた治療が正しかったことが確認できたこと、ずっと抱えていた心配が解消できたことで今後も前向きに頑張っていこうと元気が出てきました。
本当に有難うございました。
それで今後についてもう少しだけ先生のご意見をお聞かいただけたらと思います。
初診時にリンパ転移がない場合に遠隔転移はないが術後の長い経過の中では遠隔転移は起こるということでしたが、それは確率的にはおおいのでしょうか?
また、わたしは今は乳腺、脇のリンパ、鎖骨あたりのエコーは定期的に見ていただいていますが他の臓器への転移を想定した場合、定期的にCTなどの検査を受けていた方がいいのでしょうか?
年に一回人間ドックは受けていますが、その程度で大丈夫でしょうか?
乳腺外科では定期的な血液検査もしていません。
先生は術後の患者さんへの対応をどのようにされていらっしゃいますか?
わたしは5年経過の現在、乳腺外科での半年に1回のエコー、1年に1回のマンモ、タモキシフェンの服用(10年続けるつもりです。)をしております。
このほかにしてしておいた方が良いことがあれば教えてください。
お忙しいところ大変申し訳ないのですがよろしくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「初診時にリンパ転移がない場合に遠隔転移はないが術後の長い経過の中では遠隔転移は起こるということでしたが、それは確率的にはおおいのでしょうか?」
⇒多くはありません。
ただ「それを抑性させる(確率を低下させる)ために」術後補助療法(この場合はホルモン療法)を続けているのです。
「また、わたしは今は乳腺、脇のリンパ、鎖骨あたりのエコーは定期的に見ていただいていますが他の臓器への転移を想定した場合、定期的にCTなどの検査を受けていた方がいいのでしょうか?」
⇒不要です。
定期的な画像診断(CT,骨シンチ、PETなど)は「有効では無い」ことが証明されています。
それどころか「医療被曝の問題」もあります。
「年に一回人間ドックは受けていますが、その程度で大丈夫でしょうか?乳腺外科では定期的な血液検査もしていません。」
⇒「術後5年経過」であれば「年に1回程度の腫瘍マーカー」を調べてもいいと思います。
「先生は術後の患者さんへの対応をどのようにされていらっしゃいますか?」「わたしは5年経過の現在、乳腺外科での半年に1回のエコー、1年に1回のマンモ、タモキシフェンの服用(10年続けるつもりです。)をしております。」
⇒(5年経過であれば)私の考えとほぼ同様ですが…
唯一「採血腫瘍マーカー」を年に1回行っています。
「このほかにしてしておいた方が良いことがあれば教えてください。」
⇒「年に1回の腫瘍マーカー採血」です。