[管理番号:2204]
性別:女性
年齢:48歳
はじめまして。
昨年12月初旬に、左乳房を全摘しました。
手術直後からドレーンも無く、腕も上がり浮腫も無く術後経過は良好です。
担当医師より1月下旬より抗がん剤治療(TC×4回)、その後内分泌療法と言われました。
病理診断は以下のとおりでした。
T1c N1 M0
組織型:乳頭腺管癌(浸潤性)
腫瘍径:20mm
リンパ転移:2/9
エストロゲン受容体:陽性
プロゲステロン受容体:陽性
HER2蛋白スコア:1+(陰性)
切除断端:陰性
Ki-67:30.9%
術前検査では転移は見受けられないと言われていたため、リンパ転移はやはりショックでした。
抗がん剤投与はある程度覚悟しておりましたが不安です。
やはりKi-67値が高いからでしょうか。
また、反対側の右乳房にも良性のしこりが2個あります。
切除した左側にも実は悪性1個含めて3個(良性2個)あったため、再発も怖いので全摘を希望しました。
癌(しこり)ができ易い体質なのでしょうか。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1c(20mm), pN1, luminal type
「左乳房を全摘 手術直後からドレーンも無く、腕も上がり浮腫も無く術後経過は良好です。」
⇒大変うれしい事です。
私以外に「ドレーン無しの手術(特に乳房切除や腋窩郭清していても)」をする医師が居る事に素直にうれしさを感じます。
「精度を上げること」で患者さんに大変な利益となるのです。
♯「ドレーンを入れない」ということは、単に「術後、リハビリも不要で入院期間も短くて済む」というだけでなく、そのような手術は「術中、術後の出血やリンパ液の漏れがない」ことを意味し、患者さんにとって「体に負担が少ない」ことをも意味するのです。
「担当医師より1月下旬より抗がん剤治療(TC×4回)、その後内分泌療法と言われました。」
⇒私も全く、同意見です。
Ki67=30.9%は「微妙な数値」とも言えますが、「luminal B」として化学療法(luminal typeの化学療法としてはTC)を勧めるべきだと思います。
「抗がん剤投与はある程度覚悟しておりましたが不安です。やはりKi-67値が高いからでしょうか。」
⇒その通りです。
ただし、TCは4回(3カ月)と「期間も短く」副作用も十分対処可能なものです。
「浮腫みや痺れがでてきたな」と思った頃には「あと一息で終りだから頑張れる」という感じです。
心配ありません。
「切除した左側にも実は悪性1個含めて3個(良性2個)あったため、再発も怖いので全摘を希望しました。癌(しこり)ができ易い体質なのでしょうか。」
⇒全く違います。
「良性腫瘍」と癌は無関係です。
ご安心を。
質問者様から 【質問2】
お忙しい中、丁寧なご回答を頂きありがとうございました。
「ドレーン無しの手術」というのは高い技術を持つ医師が成せるものだったのですね。
入院中も痛みは手術当日くらいで、腫れや浮腫も全くと言ってよい程ありませんでした。
退院3日後に仕事に復帰出来たのも、体への負担が少なかったからだと実感してかおります。
抗がん剤についてのご回答、また、励ましのお言葉に大変感激いたしました。
これから始まるTC療法も何だか乗り切れそうな気がしてきました。
度々で申し訳ないのですが、もう一件質問させてください。
ルミナールタイプでは抗がん剤の効果はそれほど高くないという意見を目にするのですが、私の場合、10年生存率、再発率、それぞれ抗がん剤の上乗せをした場合、どれくらいになるのでしょうか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「入院中も痛みは手術当日くらいで、腫れや浮腫も全くと言ってよい程ありませんでした。退院3日後に仕事に復帰出来たのも、体への負担が少なかったからだと実感してかおります。」
⇒大変良かったです。
如何に「世の中の多くの方が余計な負担をかけさせられているか」を改めて考えさせられます。
「 ルミナールタイプでは抗がん剤の効果はそれほど高くないという意見を目にするのですが、私の場合、10年生存率、再発率、それぞれ抗がん剤の上乗せをした場合、どれくらいになるのでしょうか?」
⇒
無治療 | ホルモン療法単剤 | ホルモン療法+抗がん剤 | |
10年生存率 | 79% | 85% | 88% |
10年再発率 | 39% | 26% | 18% |
質問者様から 【質問3】
田澤先生、こんにちは。
いつもこちらのサイトを拝見しております。
来週はTCの3回目です。
副作用は予想していたものより耐えられる範囲内で、内服薬でコントロールしながら過ごしております。
今回質問したい内容は、
抗がん剤治療中の生理についてです。
TC2回目の1週間前くらいに、いつもの周期で生理がきました。
その後、量はかなり少ないのですが、ズルズルと3週間近く出血があります。
化学療法中は生理が止まるものだと思っていましたが、これは回数を重ねるうちに止まると考えてよいのでしょうか?
ルミナールタイプのため、生理は無いほうが予後的にはよいのではないかと気になっています。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「TC2回目の1週間前くらいに、いつもの周期で生理がきました。その後、量はかなり少ないのですが、ズルズルと3週間近く出血があります。」
⇒TC1回では「止まらなくても当然」と思います。
「化学療法中は生理が止まるものだと思っていましたが、これは回数を重ねるうちに止まると考えてよいのでしょうか?」
⇒質問者の年齢を考えれば「4回投与する中で止まる」可能性が高いです。
そしてそのまま「化学療法閉経」となる確率が高いと言えます。
質問者様から 【質問4】
田澤先生
いつもこのサイトで勉強させていただいております。
TCも4クール完遂し、現在はタモキシフェンにて治療中です。
内分泌療法はとりあえず10年間と言われました。
今回の質問内容ですが、全摘手術の創の合わさった(ケロイド状の)部分に、
術後1か月経った頃3ミリ位の傷ができました。
下着が擦れたためなのか原因は不明なのですが、痛みがあったため自宅にあった傷薬を塗って様子をみていました。
それから3か月程経ちますが、かさぶたがずっとついたままです。
触ると奥にめり込んでいる感じで、取れる気配がありません。
TCの影響で傷等が治りにくいだけと思っていてよいのでしょうか?
もう一つ、いつからできていたのかはっきりとはわからないのですが、TCの1クール目に片方の踵に3ミリ程の薄茶色いシミのようなものを見つけました。
しばらく様子をみていたのですが、つい先日シミのようなものがさらに2つ増えているのに気が付きました。
3ミリと6ミリ程です。
廓清はしましたがリンパ節に転移していたため、皮膚転移なのか、TCの副作用なのか、とても気になります。
お忙しいところ恐縮ですが、先生のご意見を聞かせてください。
よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「それから3か月程経ちますが、かさぶたがずっとついたままです。
触ると奥にめり込んでいる感じで、取れる気配がありません。TCの影響で傷等が治りにくいだけと思っていてよいのでしょうか?」
⇒実際に見て見ないと解りませんが…
状況を想像するに、「縫合糸膿瘍」かもしれません。
創を「皮下埋没縫合した吸収糸」に「感染して治癒がすすまない」ものです。
その場合には、「その糸を除去」することで、速やかに治癒します。一度担当医と御相談を。
「廓清はしましたがリンパ節に転移していたため、皮膚転移なのか」
⇒全く無用な心配です。
1000%そんな部位の皮膚に転移などしません。
ご安心を。