[管理番号:1777]
性別:女性
年齢:35歳
いつも拝見させて頂いております。
半年以上前から単孔性の乳頭分泌があり、3つの病院に診てもらいました。
前2つの病院では、触診、マンモ、エコー、分泌物の検査ともに異常無しで経過観察と言われましたが、こちらのサイトをずっと見ていたため病変をはっきりさせたいと思い、先日3つ目の某がんセンターにて、非浸潤がんと言われました。
乳管造影ではなく、エコーとMRIで8ミリの腫瘍が見つかったのです。
マンモトーム生検の結果、8ミリの腫瘍はほとんどが良性の乳頭腫だけれど、その腫瘍の中に小さな癌がちらほらある、とのことでした。
二週間後に治療方針を決めるらしいのですが、癌と診断されたことがショックで、先生に聞きたいことが聞けませんでした。
①前2つの病院では、8ミリの腫瘍をエコーで見逃していたということになるのですが(3つ目の病院で診てもらうまでに成長したということはない、と先生に言われました)そんなにエコーで差が出るものなのでしょうか?
②良性の乳頭腫の中に癌があるため、癌の大きさが8ミリとは言えない、と言われました。
この状態は早期発見と言ってもいいのでしょうか?
石灰化に関しては何も言われていません。
③腫瘍から出ている分泌液が、MRIで見る限り広範囲になっていました。
この範囲内にも癌があるかもしれないと言われましたが、そこが浸潤癌である可能性はあるでしょうか?
④実は、3つ目の病院でのエコーとMRIの画像で、脇の近くにも腫瘍があるのに自分で気付きました。
明らかに存在していますが、先生はそのことには全く触れていません(印がついていたので気付いてはいるはずです)
脇の近くなのでまさかリンパ節の転移では無いかと心配なのですが、先生が全く触れないということは気にしなくてもいいのでしょうか?
長文となりましたが、次に病院に行った時に更に悪い結果を聞かされそうで、怖くて怖くて眠れません。
どうかわかる範囲で結構ですので、お教え頂ければ幸いです。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
単孔性の乳頭分泌で、「3つの病院」とも「乳管造影」しないとは!
(病変が8mmの大きさだったから)「MRIでたまたま、見えた」から良かったですが、
「それ以下の大きさだったら、MRIで見えないから…」と、されるところでした。
「前2つの病院では、8ミリの腫瘍をエコーで見逃していたということになるのですが(3つ目の病院で診てもらうまでに成長したということはない、と先生に言われました)そんなにエコーで差が出るものなのでしょうか?」
⇒残念ながら「エコーとはそういうもの」です。
但し、今回は「MRIで、ここに病変がありそう」として「その部位を狙ったエコーで見つけた」という可能性もあります。(エコーが先でしょうか?)
「良性の乳頭腫の中に癌があるため、癌の大きさが8ミリとは言えない、と言われました。この状態は早期発見と言ってもいいのでしょうか」
⇒(今回のように)「大部分が(乳管内)乳頭腫で、一部癌(非浸潤癌)が混在」と
言うパターンでは「間違いなく早期(0期)」と言えます。
「腫瘍から出ている分泌液が、MRIで見る限り広範囲」
⇒それは本来、「乳管造影で見なさい」と、言いたくなります。
「この範囲内にも癌があるかもしれないと言われましたが、そこが浸潤癌である可能性はあるでしょうか?」
⇒それは99%ありません。
8mmのしこりが「名実ともに最大病変」と思います。(乳管内には、乳頭腫など多発していることは予想されますが…)
「脇の近くなのでまさかリンパ節の転移では無いかと心配なのですが、先生が全く触れないということは気にしなくてもいいのでしょうか?」
⇒「リンパ節転移」ということはありません。
おそらく、「形態的に良性と判断」もしくは「造影剤の染色パターン(time-intensity curve)で良性と判断」しているのでしょう。
質問者様から 【質問2】
田澤先生
丁寧なお返事ありがとうございました。
間違いなく早期発見と言って頂いて安心しています。
私が今回早期で発見できたのも、田澤先生の「単孔性の乳頭分泌は乳管造影をすべき」という言葉のおかげでした。
本当にありがとうございます。
癌を見つけてくれた病院では、エコーとMRIは同じ日にやりました。
軽く聞いたら、そこの病院のエコーは性能が良いので映ったのだろう、とのことでした。
場所や診てくれる人によって発見されない場合もあるのは怖いと思います。
先生のお答えで、分泌物の範囲内に乳頭腫などが多発している可能性がある、とありましたが、その部分をどこまで切除するかが悩ましいところなのかな、と思っています。
個人的には全摘で安心できるならそれでもいいと考えていますが、それは過剰治療になるでしょうか?
範囲の広さは私も詳しく聞いていないので、お答えして頂くのは難しいかもしれませんが…。
また、今回非浸潤がんと診断されましたが、手術後の病理結果で浸潤がんだとわかる場合もあると聞きました。
その場合、非浸潤がんだけの場合とどれくらい予後に違いがあるでしょうか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「単孔性乳頭分泌」で完全な手術を望むなら「乳管造影」した上で「乳管の拡がり(場合によっては、その乳管内の小病変)を把握」した上で、「術中に乳管を色素で染色」して『染色された乳管を完全に切除しながら、更にマージンをつける手術』となります。
回答
「個人的には全摘で安心できるならそれでもいいと考えていますが、それは過剰治療になるでしょうか?」
⇒「癌と診断」ついている以上は「過剰治療」とは言えませんが、(後に考えた際
に)「こうまでしなくても良かったかな?」と思える時が来るかもしれません。(年齢的には)
「非浸潤がんだけの場合とどれくらい予後に違いがあるでしょうか?」
⇒「浸潤径の大きさ」によります。
微小浸潤ならば「そして、きちんと局所治療がなされれば」非浸潤癌と、「殆ど変わらない」と思います。
質問者様から 【質問3 】
両側乳がんに関しまして
性別:女性
年齢:39歳
病名:
症状:右乳頭からの血性分泌
田澤先生、いつもホームページを見させて頂いています。
お忙しい中、質問に答えて頂いて本当にありがとうございます。
5年前になりますが、こちらで質問させて頂きました。
乳頭分泌から非浸潤がんがわかり、左胸を温存手術後放射線をして現在まで何もありませんでした。
温存手術後、断端陽性の判定だったのですが、癌の性質が非常に大人しく年齢も考慮した上、温存後放射線を当て定期的に検診し、もし局所再発したらそこで全摘すればいい、予後に変わりはない、と言われその通りにしました。
自分でその選択に後悔はしていません。
11/(上旬)に、反対の右乳頭から出血しました。
単孔性でどす黒い血です。
1年後の検診が近かったのですが、少し早めて本日検査をして頂き、来週結果を聞くことになります。
11/(上旬)を最後に出血していませんでしたが、本日のマンモグラフィでまた真っ黒な血が出ました…。
しこり等は自分で触った限りはわかりません。
最後に検査したのは、ちょうど一年ほど前の11月末で、そこでは何もありませんでした。
どす黒い血、単孔性などから、おそらく右側も乳がんだろう思っています。
5年前の異常分泌は黄色の中にうっすら血が混じる程度でした。
質問(1)
前回が35歳、今回が39歳で、微妙な年齢ですが両側乳がんとなりますと、遺伝性を疑った方がいいでしょうか?
祖父の姉が60代で乳がんになった以外は、近親者の病歴はありません。
遺伝子検査で陽性が出たら、卵巣の予防切除も考えています。
質問(2)
前回は早期発見の上悪性度が低く安心していましたが、今回はどす黒い血なのが気になっています。
分泌物の具合で癌の悪性度などはわかるものでしょうか?
質問(3)
1年前の検査では何もなかったので、早期発見であることを望みたいのですが、この1年でしこりができ、現在単に自分でしこりに気づけていない可能性もありますか?
実はかなり進行しているのではないかと、不安でたまらなくなります。
まさか両側で乳がんになるとは思っておらず、遺伝のことも考えたらもしや既に卵巣がんになっているのではないか、とすら考えてしまっています。
検査結果までが怖くて仕方ないので、田澤先生なりの見解を教えてください。
よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「質問(1)
前回が35歳、今回が39歳で、微妙な年齢ですが両側乳がんとなります
と、遺伝性を疑った方がいいでしょうか?」
→可能性は高くはありません(両側は珍しくはありません)
「分泌物の具合で癌の悪性度などはわかるものでしょうか?」
→100%無関係(考えすぎです)
「質問(3)
1年前の検査では何もなかったので、早期発見であることを望みたいの
ですが、この1年でしこりができ、現在単に自分でしこりに気づけてい
ない可能性もありますか?」
→ありえません。(普通に考えれば、非浸潤癌からの分泌でしょう)
「実はかなり進行しているのではないかと、不安でたまらなくなります。」
→全く根拠がありません。
「まさか両側で乳がんになるとは思っておらず、遺伝のことも考えたらもしや既に卵巣がんになっているのではないか、とすら考えてしまっています。」
→あまりにも…
考えすぎ。
ネットの余計な情報に引っ張られているようです。
両側乳癌を遺伝性と短絡するのは止めましょう。(可能性はゼロとは言いませんが、確率は相当低い)
質問者様から 【質問4 】
再建方法と断端陽性に関して
性別:女性
年齢:39歳
病名:両側乳がん 非浸潤がん
症状:
投稿日:2020年2月21日
田澤先生、昨年末は質問に答えて頂き、誠にありがとうございました。
その後色々な検査を経て、マンモトーム生検にて右側も非浸潤がんであることがわかりました。
12検体中7箇所に乳管内増殖性病変が認められ、乳頭状、充実性、低乳頭状のlow grade dcisということしか今はわかりません。
MRIでの進展は線状に43mmとのことでした。
high gradeだった場合は迷うことなく全摘にするつもりでしたが、
low gradeだったためまず温存手術をしてみて、断端陽性だったら再度手術で全摘、その後再建ということになりそうです。
その再建と、4年前の左側の非浸潤がんのことで悩んでいます。
4年前の左側の非浸潤がんは、範囲が広く断端陽性となってしまいましたが、とても大人しいがんだったことと年齢も考え、断端陽性のまま放射線を当てました。
先日のMRIでも再発等の所見はありませんでした。
インプラントの問題やメンテナンスのことから、再建するなら自家組織を希望しています。
胸が大きいので、自家組織の場合は腹部の肉を使うことになると思いますが、その後もし左側が再発、または別な乳がんになって全摘した場合、腹部はもう使えないので広背筋を使うことになるのかと思います。
その際はサイズが左右で変わってしまうだろうと予想しています。
質問1
左側の再発の心配、再発した時のショックやストレスを避けたいという気持ちと、左右とのバランスの関係から、右を全摘する時に同時に左も全摘してしまい両方を自家組織で再建する、ということは可能でしょうか?
左側は温存後放射線を当てて、既に4年経っています。
遺伝子検査が陽性ならば予防切除になると思いますが、遺伝子検査を受けるかはまだわかりません。
そういう状態でも、過去に断端陽性だったとはいえ切除の対象になるでしょうか?
病院によっても変わってくると思いますが、手術としてありえることなのかどうか、教えてください。
質問2
断端陽性でその後放射線を当てたlow grade dcisが再発することはよくありますか?
またもし再発した時、浸潤がんとして再発する可能性は高いでしょうか?
せっかく温存した胸を、この先あるかわからない再発の為に取ってしまうのは勿体なくないか?という気持ちも強いです(そもそもこのような手術ができるかわかりませんが)
主治医からは、再発したとしても生存率は変わらないと聞いています。
ですがやはり、再発、特に浸潤がんとしての再発は避けたいです。
右側は全摘になる可能性が高そうなので、左側は温存のままでいたいという気持ちと、リスクは出来るだけ減らしておきたいという気持ちで揺れています。
主治医に聞くのが一番正確だとは思いますが、ぜひ田澤先生のお考えもお教えください。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「質問1
左側の再発の心配、再発した時のショックやストレスを避けたいという気持ちと、左右とのバランスの関係から、右を全摘する時に同時に左も全摘してしまい両方を自家組織で再建する、ということは可能でしょうか?」
「そういう状態でも、過去に断端陽性だったとはいえ切除の対象になるでしょうか?」
⇒その病院の医師の考え方次第です。
左側は(正常乳腺ではなく)乳癌術後でしかも「断端陽性だった」のだから、(左側を全摘しても)一般的な予防切除とは異なります。
「病院によっても変わってくると思いますが、手術としてありえることなのかどうか、教えてください。」
⇒あり得ます。(というか、患者さんが希望して実際に行ったこともあります。
私の場合には特に躊躇しません)
「質問2
断端陽性でその後放射線を当てたlow grade dcisが再発することはよくありますか?」
⇒「よく」あっては困りますね。
断端陽性は乳房内再発のリスク因子であることは間違いありません。
「またもし再発した時、浸潤がんとして再発する可能性は高いでしょうか?」
⇒定期的に診察していれば、(浸潤癌となる前に)みつけられるでしょう。(数年も検診していないケースでは見かけますが)