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葉状腫瘍について

[管理番号:5465]
性別:女性
年齢:40歳
葉状腫瘍の疑いが高く来月10月に局所麻酔の1泊入院で摘出術を行う予定になっています。
自身が葉状腫瘍についての知識が乏しく不安を抱えたまま手術に望む形になってしまっていて。
せっかく手術をするので納得した上でと思っていて、先生のご意見を頂けたらと。
しこりの現状なのですが、
7月末にマンモと超音波を行い右胸上部真ん中あたりに1.6cmのしこりが見つかり針生検を行い良性との事です。
去年の検診では超音波の時にチェックが入っていましたがマンモにも映っていないので大丈夫でしょうと、また1年後に検査に来て下さいとの事でした。
そしてしこりが見つかりました。
以下は針生検の結果です。
Fibroepithelial lesion
rightbreast needle biopsy
右乳腺針生検
3本。
組織学的には乳菅と間質成分が両方増成した病変が採取されている。
間質細胞の密度はやや高く核の腫大も軽度みられる。
明らかな核分裂像は認識できない。
乳菅はスリット状で上皮は2相性が保たれている。
軽度の上皮の増生あり。
線維腺腫か葉状腫瘍(検体中の所見は良性)が鑑別に挙がります。
間質細胞の密度はやや高いものの明らかな葉状構造はなく両者の鑑別は難しい病変です。
しこりを心配しすぎて、生検した病院で他院を紹介してもらい再度プレパラートを検査してもらい葉状腫瘍の可能性が高いと言われ摘出する事に。
大きな病院で雰囲気にのまれてしまい、2件目の病理の結果はメモしたい事も言い出せず自身の意見もちゃんと言えずで。
質問を宜しくお願いします。
①マージンについて。
マージンを尋ねた所、「何cmとかじゃないし、沢山取ったからといって再発をしないという根拠は無いから意味が無いと」言われてしまい。
それ以上の事は言えず。
こちらのサイトで勉強させて頂いて、取り残しがないよう1cm以上のマージンが必要なのかと思っていて。
先生でしたら、どのような摘出を提案するのでしょうか?
葉状腫瘍を調べていたらどんどん怖くなってしまい、子供も小さいのでできるだけ再発の可能性を低くし根治を目指したく。
担当の先生に自分の意見を言うのは失礼になるのでしょうか。
②断端検索をするかの確認は必要ですか?
またマージンをとらなくても断端陰性の結果が出れば再発の可能性は低いと考えていいのでしょうか。
マージンを1cm以上とった方がさらに再発の可能性は低いですか?
③術後 万一境界、悪性だった場合の事を
尋ねたら「何もしない様子見」と言われました。
なすすでは無いのでしょうか。
④次回再発した場合、悪性の可能性、転移はかなり高いですか。
⑤断端陰性で5年再発しなければ一安心して大丈夫でしょうか。
その間は検査などどのようにするのがベストですか?今は年に1回マンモと超音波を検診がてらやっています。
転移しやすい肺にも目を向ける必要はあるのでしょうか。
以上になります、お忙しい中恐縮なのですが回答を宜しくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
1.6cmの葉状腫瘍であれば、何ら心配はありません。
葉状腫瘍は(癌以上に)「大きさが重要」なのです。(その大きさで「悪性葉状腫瘍」などありえません)

「先生でしたら、どのような摘出を提案するのでしょうか?」

⇒局麻で摘出するなら…
 指1本(1.5cm)程度つけるべきです。
 ♯ギリギリで摘出することは決してありません。
「マージンを1cm以上とった方がさらに再発の可能性は低いですか?」
⇒「手術時に1cmマージンをつける」ことで(ようやく)病理学的に「安全な断端陰性となる」のです。
 ♯手術時に「ギリギリで取る」と病理学的に陽性となる可能性がでるのです。
「なすすでは無いのでしょうか。」
⇒術後治療はしません。(何も効きません)
 だからこそ、「手術が全て」なのです。

「次回再発した場合、悪性の可能性、転移はかなり高いですか。」

⇒それは違います。
 その大きさの「良性葉状腫瘍」であれば、(万が一、局所再発しても)「いきなり悪性葉状腫瘍とか、遠隔転移」と言う事態にはならないでしょう。
「⑤断端陰性で5年再発しなければ一安心して大丈夫でしょうか。」
⇒その通りです。
 本当に厄介な(増殖の強い)葉状腫瘍ならば、「再発に2年はかからない」のです。
「その間は検査などどのようにするのがベストですか?」
⇒これは、「手術標本での葉状腫瘍のグレード」と「断端の取り方」によって様々です。
 「良性でマージンがきちんとある」ならば、経過観察自体不要(普通の年に1回の乳がん検診でOK)となります。
「転移しやすい肺にも目を向ける必要はあるのでしょうか。」
⇒ありません。
 肺転移を気にする必要があるのは「悪性葉状腫瘍」の場合だけです。
 ♯質問者には絶対に当て嵌まらないことです。
 ご安心を。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

葉状腫瘍について
性別:女性
年齢:40歳
先日は的確な回答ありがとうございます。
このような場を設けて頂き感謝の気持ちでいっぱいです。
また 葉状腫瘍は初めの切除が大切だという事も学ばせて頂き、後悔のない摘出をしたいという思いも強くなりました。
実は10/(中旬)に摘出手術を予定をしています。
マージンの事がどうしても不安で外来の看護師さんに訳を話し、急遽明日の午後先生の診察となりました。
マージンは1.5cm以上(ベストは全身麻酔の2cm?)で取りたい旨を伝えるつもりです。
手術の内容に同意ができないのであれば、
(中旬)日の手術はキャンセルして下さいとも言われています。
明日、手術をどうするのか決断しなくてはいけなくなりました。
小さい子供達がいたり、手術に合わせて海外赴任中の主人が帰国の予定で。
再度早目に質問させて頂いております。
お忙しい所本当に申し訳ありません。
質問をお願いします。
①ご回答で、局麻で摘出するなら…1.5cm程のマージンとありますが田澤先生のベストの方法はマージン2cmの全身麻酔でしょうか?とにかく根治を目指したいです。
②根本的な話しに戻るのですが 針生研の結果から、葉状腫瘍の疑いで間違いないでしょうか?
③転院を考える際、摘出時期の目安はありますか?
地元近郊で葉状腫瘍の納得行く手術をしてくれる病院が見つかるかも不安で。
今は2件目なのですが。
しこりが大きくなる前に年内には取りたいと思っているのですが。
④田澤先生に診察、手術をお願いしたい気持ちが強くなっているのですが。
主人の帰国に合わせて来月の16日や17日あたりに手術日を設定する事はやはり難しいですよね?なかなか次の帰国の予定が立たず。
かなりのご多忙の様子の中、このような質問申し訳ありません。
まずは初診に伺えばよろしいでしょうか?
主人が不在となるので、小さい子供達を預けたり、手術日の付き添い人が頼めないなどの理由で手術日の相談などもしたいと思うのですが可能でしょうか。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
私は沢山の葉状腫瘍を診ていますが…
少し前までは葉状腫瘍というと、「10cm以上」になって「これって、進行癌?(もしかして葉状腫瘍かもしれない)」みたいな状態で受診される方が多く、治療する側も「再発、大丈夫か?」と内心ハラハラするような方が多かったものですが、
最近では、(質問者のように)「小さな葉状腫瘍」も増えています。
その背景としては(葉状腫瘍の発生自体が増えたとかではなく)おそらく、組織診(しかもマンモトームのような組織をガッチリ採取するもの)の普及と、それに伴う「病理医側の認知の拡がり」があると思っています。(細胞診では決して線維腺腫との区別はつきません)
当院の場合は、このQandAを通して全国から集まる傾向があるので一般の病院とは認識が異なるとは思いますが…
○ただひとつ言いいたいことがあるとすれば、ネットによる過剰な情報は時に有害(無用な心配をさせている)ということです。
 おそらく「葉状腫瘍」とネットで調べれば、「とんでもない状況に陥った」症例の紹介ばかりで「げんなり」することでしょう。(私は見ていませんが…)
 実際に手術をしている私からみれば、(ごく一部の「手術する際に、すでに10cmを超えて皮膚所見を伴うような」悪性葉状腫瘍を除けば)葉状腫瘍は「手術にさえ、気を使えば」全く恐れるものではありません。(小さな境界悪性以下の葉状腫瘍をきちんとしたマージンで摘出して再発することは、ありません)
「①ご回答で、局麻で摘出するなら…1.5cm程のマージンとありますが田澤先生のベストの方法はマージン2cmの全身麻酔でしょうか?とにかく根治を目指したいです。」
⇒根治を目指すなら…
 (迷うことなく)全麻です。
 局麻だと、どうしても(局麻剤の効いていない部位を避けるようにするため)「理想的というよりは妥協的な」切除となるのです。
「②根本的な話しに戻るのですが 針生研の結果から、葉状腫瘍の疑いで間違いないでしょうか?」
⇒その通りです。
 「乳管上皮」と「間質」の2種類の「共同」増生が特徴です。(上皮だけが腫瘍化して増殖するものを「癌」といい、間質だけが腫瘍化して増殖するものを「肉腫」と呼ぶのです)
「③転院を考える際、摘出時期の目安はありますか?」
⇒1.6cmの良性葉状腫瘍疑い(線維腺腫≦良性葉状腫瘍>>>境界悪性葉状腫瘍)であれば、半年は問題ないでしょう。
「主人の帰国に合わせて来月の16日や17日あたりに手術日を設定する事はやはり難しいですよね?」
⇒今、確認してみましたが…
 10月16日には「短時間枠(45分まで)」ならあります。
 質問者のような「小さな葉状腫瘍」であれば、30分程度で終わるので、上手く入ります。
「まずは初診に伺えばよろしいでしょうか?」
⇒ご希望なら「秘書メール」してください。
 「お知らせ」『今週のコラム67回目 「術前や術後に、一体何回くらい外来受診が必要なの?」』を一部改訂しました。で出したように…
 術前に2回の受診が必要となりました。
 例えば…
  初日 診察⇒術前検査(採血、心電図、呼吸機能検査、心電図)
  2回目 説明同意書、入院案内

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