[管理番号:928]
性別:女性
年齢:51歳
質問者様の別の質問質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。 |
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田澤先生、ご無沙汰していた私に親切なご回答をくださって、本当にありがとうございます。
毎日、悲しくて苦しくて息もしっかり出来ないような状態で、夜が怖くてどうしようもありません。申し訳ありません、質問のページでこんなことを言いまして、お許しください。
質問させていただきたいことがたくさんありすぎて、お忙しいのに本当に申し訳なく思っていますが、不安で不安で仕方が無く、よろしくお願い致します。
お聞きしたいことが多いので番号をつけさせていただきました。
①
田澤先生がおっしゃるPT2、PN0 というのがTNM分類のことでよろしいのでしょうか?私が知らされたのは、臨床病期分類のことのTNM分類で、頭にPは付かなかったのですが、同じことですか?
②
ホルモン- HER2- というのがトリプルネガティブのことなのでしょうか?
ホルモンとは、ERとPgRをまとめてのことなのでしょうか?主治医からトリプルネガティブの言葉が出ませんでしたので、あとで色々調べて驚いています。
③
田澤先生のおっしゃるアンスラタキサンとは、アンスラサイクリンとタキサンのことでしょうか?同じですか?
④
タキサンとしてのWeekly PTXは、どこの病院でもありますか?
もし、してくださらなかったら、タキサンになるのでしょうか?
⑤
核異型度やKi67というのは初めて聞いた言葉ですが、主治医に聞いたら教えていただけるのでしょうか?
⑥
トリプルネガティブは手術の前の方が効果があるということをネットで多く見ますが、本当でしょうか?それなら、手術後だと効果が落ちてしまうのですか?
⑦
病院でいただいた冊子に、「腋かリンパ節への転移状況やしこりの大きさ、年齢、組織的悪性度がほぼ同じであった場合は、ホルモン非依存性の人はホルモン依存性の人より、HER2陽性の人は陰性の人より再発の危険性が高いと考えられています。」と書いてありました。
HER2陽性の方が危険性が高いと書いてあるのですが、トリプルネガティブと反対に思うのですが、冊子が間違えているのでしょうか?
⑧
放射線は抗がん剤の後なのですが、そんなに遅く当てても心配はないのでしょうか?
⑨
田澤先生の他の方へのご回答を拝見して、FECよりECまたはACの方が良い。
FEC6回とAC4回が効果が同等で、副作用が軽度という内容がありましたが、
これは私には該当しませんか?
⑩ネットのページでこういう記事がありました。
AC療法はアドリアシンに心毒性という副作用があり、高血圧、狭心症、不整脈などがある患者さんには使いにくいです」
タキサン系にはタキソールもあり、効果も副作用も差はないが、タキソテールが使われることが多い。
理由は2つある。1つはタキソテールが3週毎の投与なのに対し、タキソールは毎週投与(3週毎だと効果が劣る)という点。利便性の点でタキソテールが選ばれるわけだ。
もう1つ、運悪く再発したときのことを考えても、タキソテールが勧められる。再発後の治療については後で述べるが、分子標的薬のアバスチン(*)は、タキソールとの併用でしか使えない。つまり、先にタキソールを使った場合、再発したときにアバスチンとの併用が難しくなってしまうのだ。そこまで考えると、効果が同じなら、術前・術後治療には、タキソテールを選ぶのが合理的なのだという。
このように、アドリアシンは怖いのでしょうか? タキソールとタキソテールでは、タキソテールの方が良いということなのでしょうか?
⑪
トリプルネガティブは2、3年のうちに再発しやすい。命を落とす人も多いとネットで知りました。本当なのでしょうか?
怖くて怖くて気がおかしくなってしまいそうです。
抗がん剤もまだ始まっていないというのに、吐き気や下痢や食欲減退で、普通の生活が送れていないです。
もともと怖がりで、すぐに不安がる性格ですので、もうどうしてよいか、わかりません。
東京に住んでいたなら、すぐに田澤先生のもとに行きたいです。
質問だらけで本当に申し訳なく思っていますが、21日の金曜日の朝に、抗がん剤をどうするか返事をすることになっています。
厚かましくて無理を承知でお願い致します。なるべく至急で、明日の20日じゅうにご返答をいただきたいのです。
助けてください。よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT2, pN0, triple negative(TN)
担当医から「術後化学療法を提示」されていたと思います。
回答
「PT2、PN0 というのがTNM分類のことでよろしいのでしょうか?私が知らされたのは、臨床病期分類のことのTNM分類で、頭にPは付かなかったのですが、同じことですか?」
⇒病理学的病期分類です。「頭文字のp」は「pathological(病理学的)」を意味します。
「乳房温存術を受けました。やはり、乳がんでした。TNM分類は、T2N0M0でした」という内容より「病理結果から判断したもの」だと判断してpをつけました。
「ホルモン- HER2- というのがトリプルネガティブのことなのでしょうか?」
⇒その通りです。
ER, PgR, HER2の3つ(トリプル)が陰性(ネガティブ)の事をいいます。
「ホルモンとは、ERとPgRをまとめてのことなのでしょうか?」
⇒その通りです。
「田澤先生のおっしゃるアンスラタキサンとは、アンスラサイクリンとタキサンのことでしょうか?同じですか?」
⇒同じです。
アンスラタキサン=アンスラサイクリン+タキサン なのです。
「タキサンとしてのWeekly PTXは、どこの病院でもありますか?」
⇒薬剤はあります。
ただ、「毎週投与というやり方」を全ての病院が行っている訳ではありません。(殆どの病院で行ってはいますが…)
「してくださらなかったら、タキサンになるのでしょうか?」
⇒ここで質問者が言う「タキサン」とは「タキソテール=ドセタキセル」のことでしょうか?
Weekly PTX でなければ「try weekly(3週毎投与)DTXドセタキセル」となるでしょう。
「核異型度やKi67というのは初めて聞いた言葉ですが、主治医に聞いたら教えていただけるのでしょうか?」
⇒病理結果として「核異型度」は間違いなく解ります。
ただ「Ki67」は本来「ルミナールタイプ=ホルモン陽性乳癌」をA(化学療法不要群)とB(化学療法推奨群)に分けるために存在しているので、
「トリプルネガティブtriple negative=TN」では「敢えて調べていない可能性」も(低いですが)あります。
「トリプルネガティブは手術の前の方が効果があるということをネットで多く見ますが、本当でしょうか?それなら、手術後だと効果が落ちてしまうのですか?」
⇒その情報は誤りです。
抗がん剤は「術前投与と術後投与で効果は同等」ということが広く知れ渡っている事実です。
「HER2陽性の方が危険性が高いと書いてあるのですが、トリプルネガティブと反対に思うのですが、冊子が間違えているのでしょうか?」
⇒「間違っている訳でも無い」ですが、決して「正しくも無い」情報です。
「HER2陽性」は、かつて「増殖因子=予後不良因子」と考えられていました。
しかし、「抗HER2療法の登場」で「予後の改善が著しい」癌となっています。(一説では、HER2陽性はルミナールタイプと同等)
そうなると「TN」が「予後不良群」となるわけですが、「TNは単一の集団ではない」ことは理解するべきです。
つまり『TNの中には予後良好の集団と予後不良な集団などが雑多に混じっている』のが正確なところです。
○また私はしばしば言っていますが、「サブタイプは、リスクを云々するためにある訳では決して無く」あくまでも「治療法」を区別するために存在しているのです。
その意味では「TNだから予後不良」という短絡的な考え方は良くありません。
あくまでも「同じステージ同士で比較すれば」数字が数パーセント違う程度の差です。
「放射線は抗がん剤の後なのですが、そんなに遅く当てても心配はないのでしょうか?」
⇒大丈夫です。
あくまでも「全身療法である抗がん剤」が優先するのです。
「FEC6回とAC4回が効果が同等で、副作用が軽度という内容がありましたが、これは私には該当しませんか?」
⇒該当します。
これはNSABP B-36という有名な試験の結果です。
「アドリアシンは怖いのでしょうか?」
⇒アドリアマイシンやファルモルビシンなどの「アンスラサイクリン系」は「心毒性」があり、生涯での最大投与量が決まっています。
心血管疾患の多い「欧米」では日本以上にその点で、敬遠されがちであり、その意味で(タキサン系を核とした)「非アンスラサイクリンレジメン」が隆盛となっています。
また「吐き気などの副作用」も強い(アプレピタントの登場で随分軽減されましたが…)
「タキソールとタキソテールでは、タキソテールの方が良いということなのでしょうか?」
⇒この論争について「決着をつけた」ECOG1199試験という臨床試験があります。
結論からいうと weekly PTX, triweekly DTX > triweekly PTXという結果がでています。
つまり「毎週投与のパクリタキセル(タキソール)と3週投与のドセタキセル(タキソテール)」が「3週投与のパクリタキセル」よりは有効なのです。
但し、同試験のサブグループ解析では「TNではweekly PTXが最も有効」という結論となっています。
「トリプルネガティブは2、3年のうちに再発しやすい。命を落とす人も多いとネットで知りました。本当なのでしょうか?」
⇒先の回答でもコメントしましたが…
「サブタイプで予後を云々」するのは辞めましょう。(同じステージ同士で比べたらの話です)
「ルミナールタイプ」に比べて「再発形式がそのような傾向」はあります。
ただし、(予後として)やはり重要なのは「サブタイプではなく、ステージ」なのです。