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トモセラピー

[管理番号:51]
性別:女性
年齢:66歳

  ステージ3
  しこり約5センチ わきの下、鎖骨上下転移
  浸潤癌、ルミナールB
  HER+2

と診断され、只今AC療法+ハーセプチンすべて終了。
1週間後に検査結果により、全摘手術予定その後ハーセプチン、放射線の予定となってます。
 
現状しこりも小さくなり、順調との話ですが鎖骨上下のがんは背負っていくしか。。。みたいな感じです。
トモセラピーでこれにアプローチし、普通の放射線よりもどれだけ完治率あるのでしょうか?
手術後にしたほうが、いいですよね?
 
このケースの場合の最善の方法おしえて下さい。
 
 

A.回答

 こんにちは。田澤です。
 素晴らしい内容です。
 完全にご自分の事を理解されていますね。
 術後照射について、「トモセラピー」の事をご自分で調べたのだと思いますが大変重要なことです。
 それではリクエストの「最善の方法」を回答します。
 

回答

 是非、術後照射として「トモセラピー」をお勧めします。
 通常照射(リニアック)は、この場合は決してお勧めできません。
 
 「トモセラピー」はIGRT(image-guided radiation therapy):画像誘導放射線治療 とIMRT(intensity-modulated radiation therapy):強度変調放射線治療 を用いて線量分布を理想的に行う装置です。
 平たく言えば、「照射したいところだけに、照射したい量(線量)の治療ができる」という事です。
 
 放射線治療は「両刃の剣」です。 病巣に有効な量(放射線量)を照射すればするほど、(周辺の)正常組織への放射線量も高くなってしまいます:これが放射線障害です。
 リニアックでは、線量分布はかなり大雑把となるため、「鎖骨上リンパ節」を狙い撃ちにすることは不可能です。
 鎖骨上リンパ節に線量を十分にしようとすれば、周囲の正常組織(神経やリンパ系)に大きなダメージを与えてしまうので、どうしても線量が不十分となります。
※(念の為の)予防照射であれば、許容範囲だとは思いますが、鎖骨上リンパ節への治療目的の照射としては間違いなく不十分となります。
 
◎トモセラピーは(周囲の)正常組織への影響を最小限としながら病巣に高線量による治療が可能です。
 周囲組織への副作用を同程度に抑えても、リニアックに比べ10~20Gy以上高い線量での治療ができるため、完全寛解率は10~20%以上は高くなります。
※ 完治率という表現を使うのは癌治療では困難であり、完全寛解(画像上消失)という用語を用いています。
 

実際には

 鎖骨下リンパ節までは手術的に摘出しますので、術後照射として「鎖骨上リンパ節領域+胸壁領域への照射」となります。
 リニアックでは、鎖骨上領域は特に線量分布が悪くなるので、今回のように「鎖骨上リンパ節への治療目的」では勧められません。
 「予防照射目的」と同程度であれば、効果が不十分となりがちであり、逆に「治療効果を狙った場合」には放射線障害の高リスクとなります。
 
 是非、鎖骨上リンパ節への治療照射にはトモセラピーを行ってください。
 私の家族であれば、全く迷う事はありません。
 

最善の方法

 Luminal B(HER2陽性)でリンパ節転移(腋窩+鎖骨上下リンパ節)であれば、根治を狙う事も可能です。
 術前治療として、AC+ハーセプチンを行っていますが、タキサンは何故使わなかったのでしょうか? 一度主治医に聞いてみてください。
 もし術後に用いるなら術後にタキサン+ハーセプチンを4回施行し、その後ハーセプチン単剤(ハーセプチンとしてトータル1年間)となります。
 術後ハーセプチン単剤となった際に、術後照射(胸壁+鎖骨上領域:是非トモセラピーで行ってください)+内分泌療法開始(アロマターゼインヒビター5年間)となります。
●術前にACとしてタキサンを用いなかった理由は解りませんが、「最善」を狙うのであれば、タキサンはやっておいた方がいいと私は思います。(セカンドオピニオン的になってしまいましたが)
 鎖骨上リンパ節転移はあきらめてはいけません。是非治療頑張ってください。
 
 

 

質問者様より 【質問2】

田澤先生、早速のお返事ありがとうございます!
いい忘れましたが、タキサン系もやりました!
とりあえず、全摘手術しかないと言われてます!
その後ハーセプチンということですが。
トモセラピーはハーセプチンと併用できるのですあ?また、副作用はありませんか?
 
 

田澤先生より 【回答2】

こんにちは。田澤です。
タキサンもされていたようで安心しました。
回答します。

回答

「トモセラピーはハーセプチンと併用できるのか?」
⇒できます。
 ハーセプチンはその他通常の抗癌剤(アンスラサイクリンやタキサン、その他たくさんありますが)とは副作用が全く異なり、心筋障害(可逆性ですが)を除けば、大変安全な薬剤です。
 通常の抗癌剤と放射線治療は併用しませんが、ハーセプチンと放射線治療は併用します。(全く問題ありません)
 
「副作用はありませんか?」
⇒(リニアック等の通常照射と比較すると)軽微ですが、あります。
今回は「胸壁照射」+「鎖骨上リンパ節照射」となりますので、それぞれによる放射線照射によっておこる有害事象をまずは、挙げます。
胸壁照射(予防照射)

  1. 皮膚炎 皮膚が赤く痒くなったり、場合によっては皮膚が剥けます。(日焼けのイメージです)
  2. 放射線肺臓炎 乳腺の裏側が肺である為です。通常は頻度は低いのですが、化学療法後の放射線照射では明らかに頻度が増加します。(咳や息切れなどの症状が主体)

 
鎖骨上リンパ節照射(治療照射)

  1. 皮膚炎 「胸壁照射」同様です。ただし、当然面積は狭くなります。
  2. 神経やリンパ管などへの晩期障害 感覚障害や患肢浮腫などの原因となりえます。
  3. 喉痛 嚥下時痛などの原因ともなります。

 

トモセラピーと通常照射(リニアック)との違い

 但し、これらの副作用は全て、「周囲の正常組織に放射線がかかってしまう」事が原因であることに注目してください。
 トモセラピーは正に、そこを克服するためのものであり、「病巣だけに、放射線をかける」ことが最大の利点です。
 つまり、トモセラピーは上記に挙げた有害事象が通常照射に比較して確実に減らせます。
●有害事象を減らせるので、「病巣への高線量照射が可能」となり、有効性でも大きな差がつくのです。
 
◎前回も記載しましたが、是非術後照射は「トモセラピー」をお勧めします。
 
 

 

質問者様より 【質問3 ありがとうございます。】

田澤先生先日は早々のお返事ありがとうございました。
 
乳がんステージ3 ルミナールB
HER+2 浸潤癌 鎖骨上下、脇下転移あり
 
治療データ
ドキソルビシン、エンドキサン 3週間×4
ドキセタル、ハーセプチン 3週間×4
終了しました
で検査結果待ちです
予定は全摘手術後、ハーセプチン、放射線
 
この間、田澤先生にトモセラピーのほうが根治率高いと教えていただきました
前回の質問で情報不足で失礼しました
 
もしも、手術後そちらの病院にお世話になるとしたら、トモセラピーとハーセプチン
は同時に可能なのでしょうか?入院治療は可能なのでしょうか?
トモセラピーに関しては、やはり保険はきかないですよね?だいたいの料金教えて頂
ければとおもいます
お忙しい所申し訳ありませんが、お返事頂ければと思います。よろしくお願いします
 
 

田澤先生より 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 いよいよ手術ですね。
 術前半年以上、副作用のある化学療法(AC,DTX)に堪えてきたのですから、それに比べれば手術は楽に感じるはずです。
 そして術後は治療が一気に楽になります。
 内分泌療法併用の上でハーセプチン+放射線治療となりますが、体に対する副作用は術前化学療法に比べると圧倒的に楽です。髪の毛も伸びてきます。
 
 そして、(特に鎖骨上リンパ節治療のためにも)術後の放射線治療としてトモセラピーを選択されることを是非お勧めします。
 さて、ご質問に回答します。
 料金面には詳しく無いことはご容赦ください。
 

回答

「トモセラピーとハーセプチンは同時に可能なのでしょうか?」
⇒可能です。
 ハーセプチンは(長期投与による心筋障害のリスクだけで)自覚する副作用(消化器症状や脱毛、口内炎など)もなく、骨髄抑制やそれに伴う免疫低下なども一切ありません。
 (トモセラピーを含む)放射線治療に影響は全く無く、通常併用して行われています。
 
「入院治療は可能なのでしょうか?」
⇒可能です。
 本来、トモセラピーもハーセプチンも(治療時間も短く、副作用も軽微のため)入院を要する治療ではないのですが、「遠方在住で通院が困難」という理由で入院治療されている方は数多くいらっしゃいます。
 ただ、保険診療であるため(病院をホテル代わりに利用しているという嫌疑がかからないように)外泊や頻回の外出は自粛してもらっています。
 
「トモセラピーに関しては、やはり保険はきかないですよね?だいたいの料金は?」
⇒トモセラピーは保険診療です。
 料金については詳しくはないので、事務にも聞いてみたのですが「様々なケースがあるので簡単には答えられない」との事でした。
 放射線科医に聞いてみたところ、「トモセラピーは保険診療であり高額療養給付の対象となるため、外来での診療では3~8万程度となる」という事です。
ご参考にしてください。
 

 

質問者様より 【質問4】

先日はご丁寧な返事ありがとうございました!
以前質問させていただきました!
 
数日前今行ってる病院で、検査結果がでました!
画像みたら、一回り以上小さくなってるとの事でした!が、細胞がどうなってるのかわからないので、リンパと旨は全部摘出するという話にまとまりました!
 
今後、手術、残りのハーセプチン、ホルモン錠剤を飲む、放射線とゆう感じですねと言われました!
以前野球の角さんが前立腺ガンでホルモン治療の副作用に悩み、トモセラピーでほぼ完治といっていましたが、ウチの場合もそのホルモン錠剤は副作用でるのでしょうか?
トモセラピーをすれば、その治療はしないのですか?
あと、まだ不安で仕方ありません。
目に見えない細胞を、トモセラピーで狙うことはできないってことですよね?
わかるところだけピンポイントに!
 
国立ではどうしてこんなにいいとされるトモセラピーはとりいれないんでしょうか?
担当の先生に話したら、んーって否定はしないけれどオススメもしない。どーなんでしょうか?

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 術前化学療法の効果が出ていて何よりです。

治療の流れとしては、手術⇒ (術直後にでも)内分泌療法(ホルモン剤)開始
(術直後にでも)ハーセプチン開始(術後1週間くらい空ける医師もいますが…)
(術後4週間程度後)放射線治療開始

○これら3つの治療(内分泌療法、ハーセプチン、放射線)は(通常の抗癌剤とは異なり)併用でも全く構いません。
それでは回答します。

回答

「野球の角さんが前立腺ガンでホルモン治療の副作用に悩み、トモセラピーでほぼ完治といっていましたが、ウチの場合もそのホルモン錠剤は副作用でるのでしょうか? 」
⇒副作用は殆どありません。(前立腺がんでのホルモン療法とは全く異なります)
 内分泌療法は、効果と副作用のバランスにとても優れているので「是非」行ってください。
 
 閉経後の乳癌での内分泌療法(ホルモン療法)は間違い無くアロマターゼインヒビターとなります。(3種類の薬剤が発売されています)
 この副作用として、実際に自覚するのは「朝の手指関節こわばり」でしょう。(一見リウマチの症状に似ています)
 但し、これは一度関節を動かすと改善します(朝硬い関節がほぐれていく感じです)
 ※閉経前~閉経期の内分泌療法の場合には時々「ほてりなどの更年期障害様症状が強くでる」方がいらっしゃいますが、閉経後の内分泌療法では強い副作用はでません。
 長期的な副作用としては「骨密度の低下」はありますが、これは定期的に骨密度を測定することでOKです。
 
「トモセラピーをすれば、その治療はしないのですか?」
⇒トモセラピーをしても、内分泌療法は「是非」行ってください。
●トモセラピーは「放射線」であり、局所療法ですが、「内分泌療法は全身療法」なのです。全く意味合いが異なります。
※その事は当然「元巨人の名ストッパーである角さん」にも当てはまりますが、角さんの場合には「(前立腺癌の)内分泌療法に耐えられずに、仕方なく、局所療法のみとした。」という事です。
 
(参考に)
乳癌の治療は「全身療法」と「局所療法」の両方で成り立っています。

全身療法:全身に対して効果⇒ ①内分泌療法(飲み薬が胃で溶けて血液に吸収され、全身をめぐります)
②抗癌剤(点滴が直接血液に入り、全身をめぐります)
局所療法:乳腺及びその周囲のリンパ節に効果⇒ ①手術(乳腺と腋窩及び鎖骨下リンパ節の切除)
②放射線(胸壁及び、所属リンパ節への効果)

 
「目に見えない細胞を、トモセラピーで狙うことはできないってことですよね?」
⇒その通りです。
 トモセラピーはあくまでも放射線照射(局所療法)なので、狙った局所のみに効果があります。
 ※「目に見えない細胞=(今後再発の原因となるかもしれない)潜んでいるかもしれない癌細胞」に対する治療こそが全身療法(ハーセプチンを含む抗癌剤と内分泌療法)なのです。
 
「国立ではどうしてこんなにいいとされるトモセラピーはとりいれないんでしょうか?」
⇒病院の事情だと思います。
 病院自体にトモセラピーが無いとすれば、それは費用の問題でしょう。(もしくは使いこなす放射線科医がいないなど)
 病院自体にトモセラピーがあるとすれば、(他に必要としている診療科が多くて)奪い合いとなってしまっている可能性
 ●もし(病院にトモセラピーがあり、しかも奪い合いでも無いとすれば)それは担当医の知識不足でしょう。
 
「担当の先生に話したら、んーって否定はしないけれどオススメもしない。どーなんでしょうか?」
⇒(残念ながら)それは担当医の知識不足です。
 トモセラピーが有効(しかも今回は鎖骨上リンパ節という、通常のリニアックでは困難なターゲットがある)であることの認識が欠如しているとしか思えません。
 
○他院の事を悪く言うのは本意ではないのですが、あなたの為に行っているのです。
 もしトモセラピーの優位性(通常のリニアックに対する)に疑問があるのであれば、是非当院の放射線科医「浜先生」に話を聞くことをお勧めします。
 
◎私の家族や親せき、友人などであれば、トモセラピー以外の選択肢はありません。



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