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小葉癌について

[管理番号:2771]
性別:女性
年齢:40歳
はじめまして。
昨年乳房切除手術を受けた妻についての相談です。
お忙しい中恐れ入りますがよろしくお願いいたします。
病理レポートを見ますと、妻の癌は「浸潤性小葉癌」で、しこり1,6センチ、乳房内での拡がりがあり、腫瘍径は87mm×50mm×35mmと記載がありました。
腫瘍径の中には非浸潤癌も含まれると書いてあります。
最大浸潤径、ステージについては記載されていませんでした。
グレード1、リンパ節転移なし、Ki67は10%未満。
以上のことから現在ホルモン治療をしていて、卵巣の働きを止める注射と、毎日錠剤を服用しています。
告知の時と手術、入院中しか病院に行けなかったため、病理レポートが出てから主治医と話す機会がなく、小葉癌について調べていた時に田澤先生のQ&Aにたどり着きました。
私としては、腫瘍径の大きさが心配なのと、抗がん剤をすることで、
少しでも生存率が上がるならやった方が良いのではという思いもあります。
抗がん剤をして大変なのは妻ですが、サポートもしますし、何より長生きしてほしいのです。
①腫瘍径の中に非浸潤癌も含まれると書いてありますが、どういった状況なのでしょうか?
87mmという数値は聞いたことがなく、やはり腫瘍径としては大きいでしょうか?
②抗がん剤について。
主治医は抗がん剤の必要はないと言っているようです。
田澤先生のご意見を伺いたいです。
③妻の生存率、再発率はどのようになりますか?
以上です。
妻は今は病気の話もあまりせずに明るく毎日生活しているので、
不安になるような話が切り出せず、こちらに相談させていただく形になりました。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
小葉癌ですね。
このQandAにもしばしば登場しますが、質問者も典型的な病理像を呈しているようです。
1.拡がりが広い 浸潤径は不明ですが、(多中心性に87mmの拡がりがあります)
2.luminalA 大人しい luminal typeでグレード1、Ki67<10%
「私としては、腫瘍径の大きさが心配」
⇒心配なお気持ちは良く解ります。
ただ、「多中心性発癌」で(病気の進行度とは全く無関係に)「病変範囲が広くなり」がちな「小葉癌」では、「腫瘍の拡がりが広くて当然」という感覚でいいのです。
 
「抗がん剤をすることで、少しでも生存率が上がるならやった方が良いのでは」
⇒お気持ちは解りますが…
「抗がん剤は殆ど効果がない」と想像されます。
○つい先日に「(腫瘍径が大きい or リンパ節転移陽性の)luminalAの閉経前乳癌」では「化学療法の上乗せ効果が無い」という発表がありました。SABCS 2015
 
「①腫瘍径の中に非浸潤癌も含まれると書いてありますが、どういった状況なのでしょうか?」
⇒小葉癌に多い「多中心性発癌」なのだと思います。
いろいろな段階の病巣が「連続、あるいは非連続」に存在しているのだと思います。
 
「87mmという数値は聞いたことがなく、やはり腫瘍径としては大きいでしょうか?」
⇒一般的な「乳管癌での浸潤径」とは全く意味が異なります。
この様な多彩な病巣を示す小葉癌で(乳管癌のような)「浸潤径を求める」ことは、時に困難なのですが…
「しこり1,6センチ」とありますので、感覚的には「其の程度の癌が多発」という状況だと想像します。
 
「②抗がん剤について。主治医は抗がん剤の必要はないと言っているようです。田澤先生のご意見を伺いたいです。」
⇒不要です。
先に挙げたSABCSの報告でも、確認されているように「大人しい癌は抗がん剤は不要(無意味)」と思います。
 
「③妻の生存率、再発率はどのようになりますか?」
⇒(乳管癌のような)「最大浸潤径が不明」なので正確な数字にはなりませんが…
10年生存率は 96%
10年再発率は 10%程度だと思います。
○御心配なお気持ちは解りますが、リスクは決して高くはありません。
「より、確実に」を考えるのであれば「抗がん剤ではなく、むしろホルモン療法を長期間継続」の方がいい選択となります。(例えばLH-RHagonist 5年投与、タモキシフェン10年投与など)