[管理番号:6725]
性別:女性
年齢:45歳
はじめまして。
4月(中旬)日 右胸のしこりに気づく
4月(中旬)日 病院受診 専門の先生ではなかったが、触診とエコーにて悪性の
可能性が高いと言われる
4月(中旬)日 専門の先生によりエコーと針生検
針生検結果→比較的豊かな好酸性胞体を有する乳管上皮が拡張した乳管
内に乳頭管状構築を示して増殖している。
増殖する乳管上皮の核異型は
軽度であるが、やや単調な印象。
免疫染色において増殖する乳管上皮は
CK5/6陰性で、p63陽性の筋上皮を伴っている。
乳管内乳頭腫と嚢胞内
乳頭癌との鑑別困難。
との事で、大学病院紹介される。
5月(中旬)日 マンモトーム
マンモトーム結果→(所見)出血を伴う病変部が採取されています。
検体の多くは断片化し、嚢胞構造が窺われ、異型乳管上皮細胞が腺管状ない
し乳頭状に増殖し、間質浸潤も示唆される。
Invasive carcinomaの像。
(最終報告) 診断は既報のように、ductal carcinomaとします。
6月(下旬)日 造影MRI
結果→右乳腺
①A領域、2時方向の腫瘤、既知の乳癌疑い。
②腫瘤周囲の12~2時方向の区域性病変、悪性病変の広がりを疑
います。
③B領域のfocus病変、悪性の可能性あり、超音波所見と対比して
ください。
背景乳腺の染まり(BPE)はmild。
右:
①A領域、2時方向に約1.3cm大の境界不明瞭で辺縁不整なmass
lesionがあります。
造影効果は不均一で、rapid plateauパターンです。
既知の浸潤性乳癌と考えます。
②その腫瘤の周囲、乳頭下から内上領域(12~2時方向)にNon
mass enhancementを認めます。
分布はsegmentalです。
乳管内進展など悪性病変の広がりを疑います。
③右乳腺B領域、4時方向の約5mm大の早期濃染結節にrapid
washout patternの造影効果があります。
こちらも病変の一部かもしれません。
以上の結果により、浸潤性乳癌の診断を受け、7月(下旬)日に全摘の手術をしました。
切除した検体の所見→右乳房は18×18×3cm大で、14×6cmの皮膚を付している。
割面観察にて明らかな占拠性病変は同定されません。
組織学的には図で示される範囲に、種々の程度に拡張する乳管や小葉構造内で管状、乳頭状に増殖する病変が広がっています。
円柱状の異型乳管上皮が
極性を有しながら配列しています。
核は楕円形~卵円形で、細顆粒状のクロマチンや1~2個程度の核小体を含みます。
免疫組織学的に筋上皮細胞(p63.calponin.CD10)を伴ってニ相性を呈しており、検索の限りでは明らかな浸潤性病変は同定されません。
乳管内にて増殖する病変も筋上皮を伴っていますが、単調な異型細胞の増生であることやCK5/6陰性であることからDCISと判断します。
断片への明らかな露出なし。
画像を見せてもらいましたが、9枚に断片化されていました。
非浸潤性乳癌の診断になり、今後の治療も無くなりました。
非浸潤性乳癌が浸潤してたとの話はよく聞きますが、浸潤してると言われて手術をしたのに、浸潤してなかったとの事で結果は良かったのですが、病理医の見落としの可能性とかはないのでしょうか?今後、実は浸潤してて、他に転移してしまった(手術後センチネルは転移なしと言われた)なんて可能性はないのでしょうか? 非浸潤性乳癌なら手術を先延ばしに出来たのでしょうか?
いろいろモヤモヤが募っています。
長々とすみません。
よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
○術前組織診断(針生検)は断片的な評価なので、正確に「浸潤の有無を評価できない」ケースは当然あります。(逆に明らかに「非浸潤癌」「浸潤癌」と容易に確定できる病変もあります)
「病理医の見落としの可能性とかはないのでしょうか?」
→ありません。
質問者の場合には『間質浸潤も示唆される』と記載されています。
これは冒頭で記載したように、「評価が困難」である病変だということが容易に想像できます。
もう一つ注目は『(最終報告) 診断は既報のように、ductal carcinomaとします。』という記載です。
「最終報告」とは、(浸潤の有無の判定が困難なために)「追加免染」していることを示しています。
さらに「ductal carcinoma(乳管癌)」という最終報告は「最終的にinvasive(浸潤性)という言葉を避けて、非浸潤癌なのか浸潤癌なのかは微妙ですよ」となっているのです。
このケースでは「手術標本で非浸潤癌」と確定することは、しばしばあることです。(何ら珍しくもありません)
「今後、実は浸潤してて、他に転移してしまった(手術後センチネルは転移なしと言われた)なんて可能性はないのでしょうか?」
→絶対にありません。
ご安心を。
「 非浸潤性乳癌なら手術を先延ばしに出来たのでしょうか? 」
→?????
何故、そのような発想となるのでしょうか?
「非浸潤癌が浸潤癌になる前」に手術したことが、質問者の最大の勝利なのです。