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初発乳がん 胸骨転移 ステージ4

[管理番号:13147]
性別:女性
年齢:41
病名:右乳癌、多発腋窩リンパ節、右傍胸骨リンパ節、胸骨転移
症状:乳房の周りが時々痛む。
※主治医曰く、胸骨転移箇所の腫瘍は小さいため、転移箇所の痛みではないと思われる。
上記以外は特に症状は感じられず、現時点で仕事も継続し、従来通りの生活を送っています。
投稿日:2025年10月18日

田澤先生

初めて質問させて頂きます。

本年9月(下旬)日に細胞診検査および病理組織検査の結果より右乳がん告知(初発)、その後FDG-PETの結果、右腋下リンパ節に多数の集積、右傍胸骨リンパ節および胸骨に小さな集積が確認され、乳がんステージ4の診察結果を貰っています。
<FDG-PET診断結果>
右乳癌、多発腋窩リンパ節、右傍胸骨リンパ節、胸骨転移

また、最終的な病理組織検査結果は下記となります。
Nuclear grade1(unclear atype 2,mitotic counts 1) Histological grade I
(tubule formation1 : Total 4)
ER(60%);J-score 3b. Allred score TS(7)=PS(4)+IS(3) PgR(30%);J-score 3a.
Allred score TS(6)=PS(3)+Is(3)
Ki-67 labeling index 20%.
・HER2-FISH結果
-以下、検査報告書をそのまま引用-
腫瘍浸潤部分における20腫瘍細胞核を観察し、以下をHER2遺伝子増幅ありと判断。
◎HER2/CEP17比 2.0以上
且つ、1細胞あたりのHER2遺伝子平均コピー数 4.0以上
◎HER2/CEP17比 2.0未満で
且つ、1細胞あたりのHER2遺伝子平均コピー数 6.0以上
本症例について、20個の主要細胞核を観察しカウントした結果、HER2/CEP17比6.45、
HER2遺伝子平均コピー数16.45です。
HER2遺伝子増幅ありと判断します。
-引用ここまで-

上記の結果を持ち、先日クリニックから紹介された総合病院の乳腺外科に診察に行きました。
総合病院の主治医の見解としては下記となります。
・ステージ4である以上、完治は見込めない
・ 現時点で確認できる転移先は胸骨の小さな腫瘍のみである(=命に係わる臓器ではない)ため、今すぐ抗がん剤を使用する必要はないと考える
・ステージ4治療の世界的なガイドラインより、先ずはハーセプチン+ホルモン剤
(リュープリン or アロマターゼ)併用での様子見をお勧めする。薬の効果が続く限り継続し、効果が見られなくなれば他の薬に変更し様子見を繰り返す。
・患者が最初から抗がん剤治療を希望するのであればその意向は尊重する。
※ちなみに胸骨転移部分の治療に関しては特段言及されず
・原発巣手術に関しては依頼されれば検討するが、手術自体の効果は感じられないため主治医としてはお勧めしない(主治医の判断で手術行うときは乳がんが皮膚を突き破るような症状が懸念される場合のみ)。

上記より、いち早く治療に取り組みたいという私の意向もあり、来週よりハーセプチン+ホルモン剤の治療がスタートする予定です。
一方で落ち着いて考えると、主治医の方針は根治を目指す積極的な治療ではなく、ステージ4における一般的なQOLの維持および延命を目的とした治療方針(ガイドライン通り)であると理解しております。

主治医の見解を踏まえ、下記の通り質問がございます。
① ハーセプチン+ホルモン剤を推奨されておりますが、私の病状において効果が期待できるものでしょうか? 
「ハーセプチンは抗がん剤と併用」という使用方法をよく目にするため、ホルモン剤との併用は治療目的ではなく、副作用を考慮したQOL維持に特化したものなのかと感じております。
② 私のような病状の場合、田澤先生であればどのような治療を計画されるでしょうか?
  ※まだ手術が検討できる段階なのでしょうか?
③ 来週より治療がスタートいたしますが、場合によっては現病院での治療途中であっても、
  田澤先生にお世話になること(転院)は可能なのでしょうか?
④ もし転院するとなった場合、治療が遅れることで更なる転移に繋がる可能性はありますでしょうか?

私としては主治医の治療方針もある程度理解できますが、やはり根治を目指した積極的な治療も可能であれば行いたいと考えております。
何卒ご意見お聞かせ頂けると幸いです。

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

まず、「主治医曰く、胸骨転移箇所の腫瘍は小さいため、転移箇所の痛みではないと思われる。」という記載から、質問者はあくまでも所謂
「oligometastasis」の状態と(画像は見ていませんが)推測しています。
それに対して「ステージ4である以上、完治は見込めない」というコメント
Point 1 ここに第1のポイントがあります。

また、担当医のコメント『原発巣手術に関しては依頼されれば検討するが、手術自体の効果は感じられないため主治医としてはお勧めしない(主治医の判断で手術行うときは乳がんが皮膚を突き破るような症状が懸念される場合のみ)。』
Point 2 これが第2にポイントです。

質問に対する回答の前に、上記2つのpointについて解説します。

Point 1
→担当医は「ステージ4である以上、完治は見込めない」とコメントしているが、遠隔転移をOligometastasisに限定すると、以下の報告がある。
①オリゴ転移でCRとなった場合、その約1/4の症例が再発せずに生存している MD Anderson Cancer Center phase2 Cancer, 2005: 104(6):1158-71
♯この報告はなんと2005であり、(その時点での)20年生存はなんと1985当時の薬物療法だった(今からなんと40年前!)わけです。
②オリゴ転移の20年無再発生存が27.4% 東京慈恵医大での1980-2010までの30年の患者さんのデータ

今から「20年以上も前の薬物療法」で20年無再発生存(根治といってもいい)が27%もあるのに、「ステージ4である以上、完治は見込めない」というのは明確に誤りではないですか?

Point 2
→担当医は「乳がんが皮膚を突き破るような症状が懸念される場合のみ」に手術を行うとありますが、
 これの根拠は、ガイドラインに記載のある
①「StageⅣ乳癌に対して予後の改善を目的とした原発巣切除は行わないことを強く推奨する」及び
②「StageⅣ乳癌に対して局所制御を目的とした原発巣切除は行うことを弱く推奨する」
だとは思います。
但しPoint 1で記載したように「そもそも」オリゴ転移では治癒を目指せる以上、手術をしない理由がないのです。
しかも「皮膚を突き破るような場合のみ」とあるように、(もしも手術する場合でも)リンパ節転移はそのままにして「乳房切除のみ」を行うつもりのようです。

それでは回答に移ります。
① ハーセプチン+ホルモン剤を推奨されておりますが、私の病状において効果が期待できるものでしょうか?
「ハーセプチンは抗がん剤と併用」という使用方法をよく目にするため、ホルモン剤との併用は治療目的ではなく、副作用を考慮したQOL維持に特化したものなのかと感じております。

→そもそも(trastuzumabを)抗がん剤抜きで行うこと自体ナンセンス!

② 私のような病状の場合、田澤先生であればどのような治療を計画されるでしょうか?
  ※まだ手術が検討できる段階なのでしょうか?

→術前抗がん剤の理由もないため(全摘一択及び、全身療法の緊急性もない)
手術→抗がん剤(ECx4→trastuzumab/pertuzumab/docetaxelx4)→
radiation(PMRT+PS)→PET評価→phesgo(trastuzumab/pertuzumab) or trastuzumab
deruxtecan
♯radiationと抗がん剤の順番は、画像所見次第で入れ替えもありです。

③ 来週より治療がスタートいたしますが、場合によっては現病院での治療途中であっても、
  田澤先生にお世話になること(転院)は可能なのでしょうか?

→可能です。
 間違いなくturning point となります。

④ もし転院するとなった場合、治療が遅れることで更なる転移に繋がる可能性はありますでしょうか?
→そもそも(抗がん剤抜きの)trasutuzumab(+ホルモン療法)自体が「十分な治療」ではありません。(その治療自体が「新たなる転移へのリスク因子」といえます)

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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/11/4
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