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高齢の母の乳癌治療について

[管理番号:12516]
性別:女性
年齢:73
病名:浸潤性乳管癌
症状:右胸の乳輪下あたりのしこり
投稿日:2025年03月01日

初めまして。
母が乳癌と診断され、今日、組織診の結果を聞きに行ったため、田澤先生の意見も是非ともお伺いしたく初めて投稿させていただきます。
私は全く別業界の者で医学知識がないため的外れな内容を書いていましたらすみません。

【経緯】
昨年9月後半に偶然、右乳房D領域とB領域の間の乳頭乳輪近くにしこりを自覚し、クリニック①を受診。
そこでは膿が溜まっているみたいな事を言われ、癌はもっと奥に出来るからこれは皮膚だねと抗生物質だけ出されて終了。マンモ、エコー(技師によるもの)、視触診はしたようです。

今年1月、しこりが大きくなってきた感じがあり、表面も青黒く見えてきたので再受診。再度マンモ、エコーに加え採血もしたが細菌が原因かも(?)等と言われ結局は異常なし、半年後にまた来てと言われる

2月、上記説明に納得がいかなかったため別のクリニック②を受診。エコー(医師自ら)をしたところ、一見、中に粉瘤が溜まった嚢胞に見えるが、下にボコボコした部分があるのが気になるので、念のため細胞診しましょうとなった。注射器で取れた検体の見た目から、「ドロドロしてるから多分嚢胞」と言われるも、結果はクラスⅤで組織診を追加。

本日(3月上旬)組織診の結果、乳癌と確定診断。

【組織診の結果】
#1-6 [Final report]Breast, right(vacuum-assisted biopsy(VAB)):
-Invasive ductal carcinoma, SEE DESCRIPTION -Histological grade(WHO2012):GradeⅡ (total6)
-Immunostaining:ER,PS(5)+IS(3)=TS(8)
PgR,PS(0)+IS(0)=TS(0)
HER2(4B5),score 2+(equivocal)
Ki67 labeling index, 37%

【その他クリニック②の医師から聴取した内容】
・エコー画像だと黒い部分と白い部分にはっきり分かれた丸い嚢胞っぽい物の下にボコボコした黒い部分(伝わるか分かりませんがポケモンの「メタモン」のような形状でした)が付いている。細胞診と組織診で採取したのはそのボコボコの部分。
・丸い嚢胞っぽい部分も含めて1.5cmくらいとのこと(パソコン画面のカルテにUSという文字と16×16×15mmとの記載が見えたのでそれかと思います)
・ステージを判断するとしてもボコボコ部分(浸潤径のことでしょうか?)のサイズで判断するので、実際は1.5cmよりもっと小さく現時点での想定は後述のリンパ所見も含めステージ1。
・エコーした限り、脇など他には悪性所見なし。マンモで良性の他所見があるがそれは問題なしとのこと。
・確かに皮膚に近い位置だが乳腺があるのでこの位置に癌ができることも有り得る。
・(エコーでボコボコした部分がこんなにはっきり見えるのに、何故クリニック①で見逃されたのか?という私の問いに対して)もしかしたら始めは嚢胞内癌で、それが外に浸潤してきてしまったのかも。クリニック①受診の段階では非浸潤の嚢胞内癌だった可能性も無くはない…?とのこと。(だとしたらその時点で診断出来なかった前医に怒りしか湧かないのですが)

【質問】
①近くの大学病院に紹介となり、これからMRIやCTをするそうですが、腫瘍径1.5~1.6cmで浸潤径それ以下の癌(術後病理検査ではもう少し大きい評価になるとはいえ)でも遠隔転移の恐れがあるからCTをするのでしょうか?
また、母は必ずしも温存出来なくて良いという考えですが、全摘で良くてもMRIも必要なものなのでしょうか?

②今後の方針を聞いている時に、術前薬物療法をすると癌が小さくなって手術がしやすくなる、という話も出ました。
私としてはこのサイズであれば温存希望でない限りは(乳頭乳輪に近いため今のままでは温存はできるか微妙とのこと)、手術先行でなるべく早めに切除した方が良いと思うのですが先生のご認識は同様でしょうか?

③母は今まで他に大病や持病はなく、昨年夏の猛暑の中で海外旅行で長距離歩いたり、コロナやインフルの罹患も生まれてから0、風邪すら滅多に引かず娘の私(37歳)よりも元気なくらいなのでおそらく標準治療を受けること自体は問題ないです。
本人も治療に前向きです。
ただ、やはり抗癌剤は副作用が心配なので、私としてはしなくて良いなら(しなくても寿命まで再発せず生きられる可能性が高いなら)避けたいと思っています。
ER陽性なのでホルモン剤のみとかで対処できればいいのですが…
年齢も70前半と微妙ですが、上記検査結果の限りでは、抗癌剤をするメリットは高いと考えられますでしょうか?
なお、これからFISHかもう1種類の検査(名前忘れました…)でHER2が陽性かどうかは調べることになりそうですが、HER2陰性ならオンコタイプDXを受けた方が良いでしょうか?

④Ki-67が37%ですが、「14%がボーダーなので高め」と言われたのが引っかかっています。
これからまだ術前の検査を複数受けた後で手術となるので、手術先行にしても手術が相当先になりそうですが、どのくらいなら間が空いても大丈夫なものでしょうか?
せっかくステージ1の見込みなのに、その間に進行してステージが上がらないか心配です。

まだ組織診をしたのみで未確定事項の多い段階ではございますが、
私も仕事のため病院に毎回は同行できず、母が一人で行くとおそらく良く分からず言われるがままになってしまうと思うので、
今後の検査や治療の方針をある程度定めておきたいと思いご相談させていただきました。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご回答頂けますと幸いです。

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

まず第名の「高齢の」とありますが… 70歳代(特に前半であれば)高齢とは言いません。
私の感覚では、80歳代後半となると「高齢かな?」と言う印象になりますがそれでも手術にかんしては97歳が私の最高齢となりますが、全く術後も普通でしたよ。(ご参考に)

・(エコーでボコボコした部分がこんなにはっきり見えるのに、何故クリニック①で見逃されたのか?という私の問いに対して)もしかしたら始めは嚢胞内癌で、それが外に浸潤してきてしまったのかも。クリニック①受診の段階では非浸潤の嚢胞内癌だった可能性も無くはない…?とのこと。(だとしたらその時点で診断出来なかった前医に怒りしか湧かないのですが)
⇒至極最もです。
私的な感想としては…

普段からエコーを技師任せにしていることが、その医師の診断能力の欠如を招いている一因と思います。

【質問】
①近くの大学病院に紹介となり、これからMRIやCTをするそうですが、腫瘍径1.5~1.6cmで浸潤径それ以下の癌(術後病理検査ではもう少し大きい評価になるとはいえ)でも遠隔転移の恐れがあるからCTをするのでしょうか?

⇒本当に大学病院には困ったものですね。
無駄な検査は断りましょう。

♯つい先ほど『生検で非浸潤癌と診断、術前診断にFDG PET/CTは必要なのか疑問』を回答したところなので、(質問者も参照してください)尚更、大学病院の診療には辟易させられます。
検査が全てルーティーン化して(患者さんの為に)行うのではなく(自分たちのために)行っている側面が多分にあるのです。

また、母は必ずしも温存出来なくて良いという考えですが、全摘で良くてもMRIも必要なものなのでしょうか?
⇒無論、不要です。
MRIは拡がり診断であり、「部分切除可能か?」確認するためにあるものです。
部分切除を希望しない場合に行うのは何のため?なのか? その医師に訊いても「言葉を濁すだけ」でしょう。

②今後の方針を聞いている時に、術前薬物療法をすると癌が小さくなって手術がしやすくなる、という話も出ました。
⇒自分たちが「手術をしやすくするため」に行うのは、あまりに失礼な話です。

私としてはこのサイズであれば温存希望でない限りは(乳頭乳輪に近いため今のままでは温存はできるか微妙とのこと)、手術先行でなるべく早めに切除した方が良いと思うのですが先生のご認識は同様でしょうか?
⇒その通りです。
手術先行しない理由が全くありません。
薬物療法は「術後再発予防のため」に行うべきものであり、それは手術病理をみてから「確実に」キチンと判断すべきものです。

③母は今まで他に大病や持病はなく、昨年夏の猛暑の中で海外旅行で長距離歩いたり、コロナやインフルの罹患も生まれてから0、風邪すら滅多に引かず娘の私(37歳)
よりも元気なくらいなのでおそらく標準治療を受けること自体は問題ないです。
本人も治療に前向きです。
ただ、やはり抗癌剤は副作用が心配なので、私としてはしなくて良いなら(しなくても寿命まで再発せず生きられる可能性が高いなら)避けたいと思っています。
ER陽性なのでホルモン剤のみとかで対処できればいいのですが…
年齢も70前半と微妙ですが、上記検査結果の限りでは、抗癌剤をするメリットは高いと考えられますでしょうか?

⇒70歳以上の早期乳癌であれば、必ずしも抗癌剤を勧めないという考え方があります。
 私の場合には「患者さん自身が希望しない限り」強くは(そもそも)勧めません。★

なお、これからFISHかもう1種類の検査(名前忘れました…)でHER2が陽性かどうかは調べることになりそうですが、HER2陰性ならオンコタイプDXを受けた方が良いでしょうか?
⇒「抗癌剤すべきか?」迷うようならOncotypeDXすべきでしょう。
 ♯上記★の考えに共感するのであればホルモン療法だけでいいと(私的には)思います。

④Ki-67が37%ですが、「14%がボーダーなので高め」と言われたのが引っかかっています。
⇒いまだに「14%がボーダー」などという乳腺外科医が存在すること自体に「ビックリ仰天」です。

 OncotypeDXが保険適応前の時期(結構長い期間)はザンクトガレンの推奨で「14%」という数値が出ていましたが、OncotypeDXが適応となった今では、実際には無意味な数値であることを(普通の乳腺外科医ならば)実感します。
 OncotypeDXをすると(印象よりも)「かなりlowが多い」ことは普通に経験します。
 
 ただし、(OncotypeDXを沢山行った私の印象では)PgRが「Ki67」以上にRSに影響します。
 其の意味ではPgRが陰性ということは、RSも高めかもしれません。(あくまでも「私的な」見解なのでご参考程度に)

これからまだ術前の検査を複数受けた後で手術となるので、手術先行にしても手術が相当先になりそうですが、どのくらいなら間が空いても大丈夫なものでしょうか?
せっかくステージ1の見込みなのに、その間に進行してステージが上がらないか心配です。

⇒2か月以内がいいでしょう。
それにしても 「術前の検査を複数受けた後」というのは、あまりにも「無駄な検査が多すぎる」と嘆きたくなりますね。

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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/3/17
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