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胸壁固定乳癌の手術

[管理番号:6863]
性別:女性
年齢:82歳
病名:乳癌
症状:

ER+ PgR+ HER2- Ki67=4% リンパ節転移なし
乳腺外科にて「大きさ18mmだが、位置が内側で乳腺の端で大胸筋も薄いため肋間筋まで広がっており手術できない」と言われ、ホルモン治療となりました。

小さくならないものの半年強なんとか現状維持しており、主治医はホルモン治療継続との判断のようです。

抗がん剤については、おそらく年齢や状態から無理と判断したのでしょう(理由はさだかでない)が、主治医から一言も話しはなく、また、本人も抗がん剤に拒否反応があるのでこちらから願うこともなく、この治療で納得しているようです。

しかし、私としては、転移もなくこの大きさなら手術で治せないものかと思ってしまいます。

手術でできるだけ取り除いて、取りきれない部分に放射線治療というのでは、根治治療にならず癌が残ってしまうでしょうか?

胸壁に達しているが抗がん剤ができない、もしくは抗がん剤しても胸壁に腫瘍が一部残ってしまった患者さんはいらっしゃったと思いますが、
田澤先生は手術をすすめましたか?
それとも維持を目標にホルモン治療がベターでしょうか?

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

メール読みました。
私から見ると、論点は2つあります。
1.本当に手術不能なのか?
 「18mmだが乳腺や大胸筋も薄いので肋間筋まで浸潤している」という診断が本当に正しいのか?(「胸壁固定(肋間筋や肋骨)」ではなく、実際には「胸筋固定(大胸筋のみ)」なのにミスジャッジされていることも散見します)

2.(高齢者にとっても)乳がん治療では「手術が最も楽な治療」である。
 ここ江戸川病院でも(私が赴任する前は)高齢者手術を避ける傾向があったようで、(手術してしまっていたら、それで治っていたであろう)高齢者患者さんが、腫瘍の増大が抑えられなくなり(今度こそ)本当に手術不能となっている患者さんを散見します。
「ホルモン療法は永遠には効かない」という視点が重要なのです。

「手術でできるだけ取り除いて、取りきれない部分に放射線治療というのでは、根治治療にならず癌が残ってしまうでしょうか?」
⇒上記1のように…

 本当に現状「胸壁固定」なのか、まずそこに問題がありそうです。(胸壁固定ならば、普通に手術で大胸筋の合併切除のみで根治性があります)
 もし仮に「本当に胸壁固定」と仮定した場合…

 考え方として
  ①術前抗がん剤を使う  高齢でもweekly PTXなど十分忍容性のあるものが選択できます。
  ②質問者の言うように  手術+放射線

 ★この場合には①を勧めますが、②も「ダラダラとホルモン療法しているだけ」よりは余程いいと思います。(実際、18mm程度の腫瘍なら、そう簡単に「手術不能」とするには勿体ないと思います)

「胸壁に達しているが抗がん剤ができない、もしくは抗がん剤しても胸壁に腫瘍が一部残ってしまった患者さんはいらっしゃったと思いますが、田澤先生は手術をすすめましたか?」
⇒手術目的で術前に抗がん剤した方は全例手術しています。(術後照射は大前提として)
 
 ただ、抗がん剤も希望しないし、このままでは絶対に手術できないような「大きな腫瘍(皮膚に広範囲など)」の場合には、手術を無理やりには行いません。
 ★私の印象としては「18mm」なら、上記に当てはまらないように想像します。

「それとも維持を目標にホルモン治療がベターでしょうか?」
⇒それはありません。