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トリプルネガティブ乳がんの妊孕性温存・妊娠出産についてです。

[管理番号:6894]
性別:女性
年齢:37歳
病名:乳がん トリプルネガティブ
症状:5月にしこりに気づき、受診、乳がん診断、手術、化学療法前に妊孕性温存中

田澤先生

いつも先生のQ&Aを読んで勉強させていただいております。

大変わかりやすく、本当に感謝しております。
ありがとうございます。

本日はトリプルネガティブ乳がんの妊孕性温存・妊娠出産について質問させてください。

ステージ1なので、再発の可能性は比較的小さい(約20%)と認識していますが、それでも再発の不安と妊孕性温存の間で治療に関して悩んでいます。

2018年7月5日に手術をし、以下の結果となっています。

——-
腫瘍:右乳房 外側上方に12×12×10mm

組織学的には
Invasive ductal carcinoma, Solid-tubular carcinoma
管内進展像を認める。

グレード2
Tubular differentiation 3
核異型 2
核分裂像 1

リンパ管侵襲を認めない ly0
静脈侵襲を認めない v0
脂肪織浸潤を認める f(+)
手術断面に腫瘍の露出を認めない。

免疫組織学的には
ER  (-)
PgR  (-)
HER2 (-)
Ki67 80%
管内進展巣でもほぼ同様の所見
——-

今後、リュープリンとTC療法(4クール3ヵ月)の後、放射線治療を勧められていますが、昨年結婚し子供を夫婦共に強く望んでいるので、将来の妊娠の可能性をなるべく残しながら治療をしたいと思っています。

ですが、早発性閉経の傾向で卵巣機能が落ちており、「化学療法後はほとんど卵子が残らず閉経」また、「卵巣凍結をしても凍結過程で卵子がダメージを受けるので、身体に戻してもほとんど卵子が残らない」と不妊治療の医師に言われています。

現在、受精卵の凍結を試み3個凍結していますが、心もとない状況で本日質問させて
いただくに至りました。

以下、質問です。

①TC療法を勧められていますが、卵巣機能を少しでも保護するため、パクリタキセル単体で12クール3ヶ月間という選択肢もあるでしょうか?主治医からはパクリのみの使用で統計的データがないので、効果はあるがどれだけ有効か言えず、勧められないと言われています。

②化学療法前に妊娠・出産をすることはありえないでしょうか?

③当初は化学療法を手術から3ヵ月後の10月から始める予定でしたが、妊孕性温存が
うまくいかないことを伝え、主治医から時期を延期することを承諾してもらいました。
ただし遅くとも12月末までに化学療法は開始といわれています。
田澤先生でしたら、いつまでであれば化学療法開始の延期を認められますか?
また、延期した場合はTCではなくAC+ドタキセルもしくはパクリタキセルの方が良い等のお考えがあればおしえてください。

長々と失礼いたしました。

よろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「①TC療法を勧められていますが、卵巣機能を少しでも保護するため、パクリタキセル単体で12クール3ヶ月間という選択肢もあるでしょうか?」
⇒勧められません。

 本来、トリプルネガティブには「アンスラサイクリン(3か月)+タキサン(3か月)」が標準治療と言えます。
 (70歳以上ならまだしも)若年者に「TCでもいいよ」というのは如何なものか?と思いますし、パクリタキセル単独は「それ以上に」如何なものか?と思います。

「②化学療法前に妊娠・出産をすることはありえないでしょうか?」
⇒化学療法をやるのなら、妊娠出産前です。

 妊娠出産を先行させる場合には(考え方としては)「(自己責任で化学療法はしない)と同等程度」の強い意志が必要です。

「田澤先生でしたら、いつまでであれば化学療法開始の延期を認められますか?」
⇒術後半年ですね。

「延期した場合はTCではなくAC+ドタキセルもしくはパクリタキセルの方が良い等のお考えがあればおしえてください。」
⇒「延期するしない」とは無関係に「アンスラサイクリン+タキサン」が標準です。