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粘液癌についての質問です

[管理番号:2190]
性別:女性
年齢:35歳
はじめまして。
田澤先生いつも拝見させて頂いています。
粘液癌についてお尋ねします。
先月上旬に細胞診でクラス5が出て、粘液癌の疑いでその翌週バコラ生検を受けました。
その当時粘液癌について勉強不足で、粘液癌の場合は癌が広がる可能性があるので針生検を避けることがあるとバコラ生検を受けた後に知り、血の気が引きました。
以下、今まで受けた検査(細胞診、エコー、バコラ生検、CT)の結果です。
細胞診時
エコーでの腫瘍の大きさ:22×17mm
細胞診結果:class5
バコラ生検後
ステージ:1
CTでの腫瘍の大きさ:19mm
リンパ節転移:なし
遠隔転移:なし
ER:96%
PgR:56%
HER2:陰性
ki67:17%
nuclear grade:Grade 1
この以上の結果から、
Q1 主治医から粘液癌でバコラ生検を受けたあとでも温存手術が可能であると言われましたが本当でしょうか?
Q2 バコラ生検を受けてから一月が経とうとしています。
セカンドオピニオンを受けようと思いまだ手術の日程も決まっていませんが、バコラ生検で漏れた癌が増殖しているのでは…と、とても不安です。
増殖している可能性はどのくらいあるのでしょうか?
Q3 温存手術が可能であれば温存で行きたいのですが、全摘手術と温存手術でリンパ浮腫の発生率が異なったりするのでしょうか?
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
cT2(22mm), cN0. LuminalA, NG1
典型的な(大人しい)粘液癌です。
「Q1 主治医から粘液癌でバコラ生検を受けたあとでも温存手術が可能であると言われましたが本当でしょうか?」
⇒大丈夫です。
 ただし、「生検針のルートを切除範囲に確実に入れる」必要があります。(逆にいうと、針生検時にはそれを意識した刺入経路の選択が必要となります)
 
「Q2 バコラ生検を受けてから一月が経とうとしています。セカンドオピニオンを受けようと思いまだ手術の日程も決まっていませんが、バコラ生検で漏れた癌が増殖しているのでは…と、とても不安です。増殖している可能性はどのくらいあるのでしょうか?」
⇒粘液癌は大人しいので「急速に増大」など心配ありません。
 ただし、「生検針のルートに癌細胞が増殖」している可能性は有ります。
 
「Q3 温存手術が可能であれば温存で行きたいのですが、全摘手術と温存手術でリンパ浮腫の発生率が異なったりするのでしょうか?」
⇒同じです。
 「リンパ浮腫」はあくまでも『腋窩郭清の程度』によって決まります。
 実際には質問者の場合には「センチネルリンパ節生検のみ」なので「リンパ浮腫のリスク」はありません。
 「乳腺をどうするか(温存or全摘)は無関係」なのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、早速の回答ありがとうございました。
粘液癌について質問した者です。
また何点か質問させて頂きます。
Q1 
治療方針として、まずは手術先行で、その後温存手術予定なので放射線照射とホルモン治療、必要があれば抗がん剤治療を行うと説明がありました。
この治療方針について田澤先生はどのようにお考えになられますか?
Q2 
主治医から、手術の時は乳輪に沿って小さく切って傷は目立たないようにすると言われましたが、バコラ生検針のルート切除について特に説明がありませんでした。
生検針のルート切除をしてもらえるか主治医に確認するべきでしょうか?
Q3 
粘液癌はインターネットなどで調べてみても『粘液の中に癌細胞が浮いている特殊な癌』などとあっさりとした表現でしか説明されておらず、具体的に一般的な癌とどう異なるのかがいまいち把握できてません。
田澤先生がお考えになる粘液癌と他の癌と異なる点、粘液癌だから気をつけている点などがございましたら教えて頂きたいです。
Q4 
昨年の10月末には胸のしこりに気づいていたものの、今の病院を検診扱いで1ヶ月以上予約待ちをして受診しました。
自覚症状がある場合は検診ではなく診察としてもっと
早く診てもらうことができたと後で知り、受診から検査、確定診断に至るまですべてが
後手に回っている気がして不安と焦りだけが大きくなっていきます。
腫瘍の大きさから初期の段階は過ぎてしまっていると思いますが、今の状況から治療した場合の5年後、10年後の生存率はどの位なのでしょうか。
お忙しいところ細かいことをお尋ねしてしまって申し訳ありません。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「Q1 治療方針として、まずは手術先行で、その後温存手術予定なので放射線照射とホルモン治療、必要があれば抗がん剤治療を行うと説明がありました。この治療方針について田澤先生はどのようにお考えになられますか?」
⇒この通りです。(パーフェクトです)
 「必要があれば」とは(質問者はルミナールAなので)「(手術してみたら、意外にも)リンパ節転移が複数あった」などの事態を指しています。
 
「Q2 主治医から、手術の時は乳輪に沿って小さく切って傷は目立たないようにすると言われましたが、バコラ生検針のルート切除について特に説明がありませんでした。生検針のルート切除をしてもらえるか主治医に確認するべきでしょうか?」
⇒そうした方がいいです。
 担当医は「失念」している可能性があります。
 もしくは「どうせ、放射線照射をするのだから気にしない」というスタンスかもしれませんが…
 
「Q3 粘液癌はインターネットなどで調べてみても『粘液の中に癌細胞が浮いている特殊な癌』などとあっさりとした表現でしか説明されておらず、具体的に一般的な癌とどう異なるのかがいまいち把握できてません。田澤先生がお考えになる粘液癌と他の癌と異なる点、粘液癌だから気をつけている点などがございましたら教えて頂きたいです。」
⇒「粘液癌」をそんなに特殊に考える必要はありません。
 
 「癌細胞が粘液を産生」して(その結果)「癌細胞の周囲に粘液が豊富にある状態」にすぎません。
 ただし、(それ故)「固体よりも流動し易く」針生検のルートには気を付けなくてはならないということです。
 ○性質としては「大人しい」と考えています。
 
「初期の段階は過ぎてしまっていると思いますが、」
⇒十分すぎるほど「初期」です。
 
「今の状況から治療した場合の5年後、10年後の生存率はどの位なのでしょうか。」
⇒(5年生存率は出せませんが…)

無治療 ホルモン療法をした場合 ホルモン療法+抗がん剤をした場合
10年生存率 96% 97% 98%

○抗がん剤はしないと思いますが一応「ホルモン療法+抗がん剤をした場合」もお示ししました。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生こんにちは、以前質問させていただいた者です。
その後セカンドオピニオンを受け転院し、転院先の病院で腫瘍径が40mm近くあること

わかり全摘手術と同時再建を選択しました。
先月末に無事全摘手術とエキスパンダー挿入が終わりました。
術後の病理結果が術前と異なっていたため再度質問させて頂きます。
術後病理結果
組織型:粘液癌+浸潤性乳管癌の混合型
浸潤径:32mm
リンパ節転移:術中センチネルリンパ生検に転移認められず→術後 1/4 2.1mmの転移あり
遠隔転移:なし
脈管浸襲:なし
ER:90%台
PgR:50%台
HER2:2+(FISHで確認中)
ki67:30%
nuclear grade:Grade 1
上記結果より、主治医からは
HER2陽性の場合は化学療法(TC療法3週ごと4回)+ハーセプチン1年間+ホルモン療法(タモキシフェン5年+ゾラデックス3-5年)
HER2陰性の場合はホルモン療法(タモキシフェン5年+ゾラデックス3-5年)に化学療法(TC療法3週ごと4回)を追加するか迷うというお話でした。
HER2陽性だった場合は化学療法とハーセプチンの治療が
有効であることが理解できるので
化学療法を頑張ろうと思っていますが、
HER2陰性だった場合、化学療法を追加するか悩んでいます。
Q1 HER2陰性の場合、化学療法を行った場合と行わなかった場合の生存率・再発率を
教えていただきたいです。
Q2 上記病理結果より、田澤先生でしたらどのような治療方針をとられますか。
アドバイス頂けると幸いです。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「HER2陽性だった場合は化学療法とハーセプチンの治療が有効であることが
理解できるので化学療法を頑張ろうと思っています」
⇒それがいいと思います。
 
「HER2陰性だった場合、化学療法を追加するか悩んでいます。」
⇒luminalAかBか、所謂「グレーゾーン」です。
 
「Q1 HER2陰性の場合、化学療法を行った場合と行わなかった場合の生存率・再発率を教えていただきたいです。」

10年生存率 再発率
化学療法を行った場合 92% 13%
化学療法を行わなかった場合 90% 20%

 
「Q2 上記病理結果より、田澤先生でしたらどのような治療方針をとられますか。」
⇒化学療法の上乗せが「一桁」だから、特に勧めません。