[管理番号:2560]
性別:女性
年齢:42才
質問させて頂きます。
右ステージ0非浸潤癌(2.6cm)
左ステージ1浸潤性乳管癌(1.8cm)
3月(中旬)日両側乳房全摘センチネルリンパ節生検、エキスパンダー挿入予定です。
右は広範囲の硬化性腺症の中に癌があり全摘、左も両側であり、再発のことを考えて全摘を勧められました。
ER95% PgR95%
HER2 1+
異型度1~2
Ki67 1~5%
ルミナールA
術前CTではリンパ節腫大
無事前に読んでおくように渡された手術の同意書に、「センチネルリンパ節に転移があったら、当院では全部のリンパ節を切除しています。
(他のリンパ節にも50~60%転移がある可能性がある)」と記載がありました。
この場合、微小な転移でも全てのリンパ節を取るということでしょうか?
仕事もあるため、リンパ浮腫などの合併症が心配です。
次主治医に会うのは手術前日なので、こちらで質問させて頂きます。
宜しくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「この場合、微小な転移でも全てのリンパ節を取るということでしょうか?」
⇒(その施設では)そのようです。
「センチネルリンパ節生検の取り扱」については、有る程度のガイドラインはありますが、施設基準により様々です。
現在の潮流は②⇒③へ向っています。
その意味では「微小転移でも郭清する」施設は、やや「潮流から距離を取っている=頑固」と思います。
①SLN(センチネルリンパ節)に転移を認めない場合には「腋窩郭清は省略」する
これについては「疑問の余地」はありません。
世界のスタンダードと考えていただいて結構です。
もしもいまだに「日本の地方のどこかで(ひっそりと)明らかなN0症例に対して、センチネルリンパ節生検をせずに腋窩郭清をしている(一般)外科医が居るとしたら、非難されるべき時代」と言えます。
②SLNに微小転移(2mm以下)を認めた場合
これについても「腋窩郭清は省略する」でほぼ意思統一されている。と考えて結構です。
IBCSG 23-01(臨床試験)で934症例での「微小転移症例の非郭清と郭清群との比較」で「生存率も再発率も差がない」ことが証明されています。
これを受けて「乳癌診療ガイドライン」でも「腋窩郭清の省略が勧められる」乳癌ガイドライン推奨グレードBとなっています。
♯Bとはなっていますが、内容的にはAと思います。
③SLNに肉眼的転移(>2mm)を認めた場合
ここが、正に「議論の多い」ところです。
・SLN転移陽性患者の約半数は非SLN転移を有していない
・ACOSOG Z0011(臨床試験)では、以下の条件
「腫瘍径5cm以下で画像上リンパ節転移を疑わない」「SLN転移2個以下」
「温存手術(術後照射を行う)」「術後薬物療法あり」を満たす場合には「郭清の有無で生存率も再発率も差がない」との結果
・2014のASCOガイドラインでは「照射を行う温存手術」であれば「2個までの転移」であれば、腋窩郭清を省略すべき
これらの中で「適切な基準に基づいて腋窩郭清省略を考慮しても良い」乳癌ガイドライン推奨グレードC1となっています。
この「適切な基準」というのが各施設で様々なのが現状です。
「仕事もあるため、リンパ浮腫などの合併症が心配です。」
⇒もともと「画像所見で明らかな転移性リンパ節を認める」ような事態でもない限り、郭清しても「リンパ浮腫はおこりません」
術者の精度にもよりますが…