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抗がん剤の選択について

[管理番号:5513]
性別:女性
年齢:42歳
田澤先生、はじめまして。
お忙しいところ恐れ入りますがよろしくお願いします。
昨年末に左乳房に自分でしこりを発見し(思い起こせば数年前にもしこりを感じた記憶
あり)、7月に超音波・マンモグラフィ・マンモトーム生検を受け、8月に乳がん診断確定、9月初旬に摘出手術を受けました。
術前のマンモトーム生検では、
ER陽性(95%、J-Score3b、PS5+IS2=TS7)
HER2陰性(スコア0)
しこり2.4cm大
脇のリンパ節は腫れていて疑わしいが穿刺吸引細胞診は陰性となり、ステージ2aでした。
その後、手術時のセンチネルリンパ節生検で陽性となり、腋窩リンパ節郭清したので、術後ステージは2bになりました。
術式は以下になります。
術式(乳房) :乳房温存手術
術式(リンパ節):センチネル生検→腋窩郭清(迅速病理結果により)
今回の手術の病理結果により、思いのほか広がりが確認(断端陽性)されたため、
来週、追加で部分摘出手術(全摘ではなく局所麻酔による追加の部分切除)する予定です。
また術後の病理検査の結果は以下です。
組織型 :浸潤性小葉癌
リンパ節転移 :陽性
転移リンパ数 :2
摘出リンパ節数 :22
大きさ(浸潤径) :2.3×1.8cm
範囲 :5.5×2.3cm
                 (断端陽性の為、初期のものを含めると
                  5cm以上まで大きくなりました)
核異型度(がんの顔つき) :3
組織異形度(がん全体の顔つき) :3
リンパ管、脈管侵襲 :なし
ki67 :33.4%
ホルモン感受性 :あり
HER2/neu :なし
断端 :陽性
ホルモン療法、放射線治療を行うのは決まっています。
先生にお聞きしたいのは、以下の4点になります。
①私のサブタイプはルミナールBというタイプになりますでしょうか?
②抗がん剤はやったほうがよろしいでしょうか?
抗ガン剤をやった場合、やらなかった場合に比べてどれくらい効果(上のせ)がありますか?
病院の医者からは、がんの顔つきもグレード3でki67も決して低くはないので抗がん剤の
対象にはなるが、リンパ節転移の数が少ない事とホルモン受容体陽性であることから、
ホルモン療法が良く効くタイプなので、強い副作用を考えると抗がん剤はやらなくてもいいかもと言われました。
最終的には自分で判断してくださいとの事で、とても悩んでいます。
ルミナールBだと抗がん剤治療の対象になると思われますが、やらないということもかなりあるのでしょうか?
リンパ節転移数が少ないとはいえ、術中の判定で郭清しているので転移の可能性についても気になってしまいます。
確かに、副作用のことを考えると、積極的にやりたいとは思いませんが、やらずにいて後々転移・再発したときに後悔するかもと思うとやったほうがいいのかとも思います。
根治を目指すならやる方がいいのでしょうか?
来週行う追加摘出の結果、再度、断端陽性になった場合は全摘する事になる予定ですが、そうなったら抗ガン剤はやったほうが良いと推進されるという事もあるのでしょうか?
田澤先生はどのようにご判断されますでしょうか?
③もし抗ガン剤を行うなら何を使用しますか?TC療法でしょうか?
④私の場合、閉経前、リンパ転移があるのでオンコタイプDXの対象にはならないでしょうか?
もしオンコタイプDXを受け中間判定となった場合は抗がん剤の有無はどのように判断されますでしょうか。
またオンコタイプDXは先進医療の対象にはまだなっていないのでしょうか?
お忙しいところ恐れ入りますが、ご意見よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「①私のサブタイプはルミナールBというタイプになりますでしょうか?」
⇒グレーゾーンです。
 ちなみに私のデータでは Ki67≦35は19名でハイリスクは1名もいませんでした。(25<RS≦30は3名のみ)
「②抗がん剤はやったほうがよろしいでしょうか?」
⇒グレーゾーンだから(しかも低リスクとなる確率が12/19と過半数だから)OncotypeDXすべきでしょう。
「抗ガン剤をやった場合、やらなかった場合に比べてどれくらい効果(上のせ)がありますか?」
⇒OncotypeDXしないとわかりません。
  結果としてルミナールAなら「上乗せは殆どゼロ」となるし、Bなら10%近くとなりそうです。(それを判断するのがOncotypeDXなのです)
「病院の医者からは、がんの顔つきもグレード3で」
⇒これが無関係なのは『今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?』を参照してください。
「ki67も決して低くはないので抗がん剤の対象にはなる」
⇒グレーゾーンです。
「ルミナールBだと抗がん剤治療の対象になると思われますが、やらないということもかなりあるのでしょうか?」
⇒そもそも、その前提である「ルミナールB」と判断する事自体誤りです。
「根治を目指すならやる方がいいのでしょうか?」
⇒それを調べるためにOncotypeDXしましょう。
「来週行う追加摘出の結果、再度、断端陽性になった場合は全摘する事になる予定ですが、そうなったら抗ガン剤はやったほうが良いと推進されるという事もあるのでしょうか?」
⇒全く無関係
 「局所は局所(手術や放射線)」「全身は全身(ホルモン療法など)」
 
 局所の不十分なところを「全身でカバー」というのは誤りです。
「③もし抗ガン剤を行うなら何を使用しますか?TC療法でしょうか?」
⇒行うならTC
「私の場合、閉経前、リンパ転移があるのでオンコタイプDXの対象にはならないでしょうか?」
⇒対象です。
 もし担当医がそう考えているとしたら、「データ更新ができていない」ということです。
「もしオンコタイプDXを受け中間判定となった場合は抗がん剤の有無はどのように判断されますでしょうか。」
⇒ちょうど、明日に掲載する「今週のコラム100回目」を参照してください。(抗癌剤は不要です)
「またオンコタイプDXは先進医療の対象にはまだなっていないのでしょうか?」
⇒その通りです。