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石灰化の経過観察中と妊娠出産について

[管理番号:168]
性別:女性
年齢:35歳
母と祖母が乳ガンだった為、20代後半から定期的に乳腺専門のクリニックで検診を受けています。
第1子出産・授乳を終えて、先日マンモグラフィと、超音波検査を受けたところ、左胸に小さい点のような3~4個の石灰化が見られると言われ、2年間は半年ごとに検査にくるようにとのことでした。
第2子を考えていることを伝えると、とりあえず、半年は待ってと言われたのですが、悪性である可能性が遺伝性的にもやはり高いからでしょうか?半年待ったら状態の変化がわかるからでしょうか?
また、妊娠してしまうと、そのクリニックではマンモグラフィが受けれないからと言われ、年齢的にも半年も待つことが長く、とても不安です。
もし、経過観察が続いたら、妊娠出産をあきらめないといけないのでしょうか?
経過観察しながら、妊娠出産は可能でしょうか?
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「石灰化がみつかり、第2子の妊娠を待てといわれている」とのことですが、「患者の希望を無視した、とんでもない医療」です。
 このメール内容をみて、同じ乳腺専門医として、あきれるを通り越して、怒りさえ感じました。
 
 半年間待つ必要など全くありません。
 
●直ちに「その石灰化」をステレオガイド下マンモトーム生検(以下ST-MMTと略します)してもらえば「すぐにでも解決」します。
※ST-MMTについてはトップページの「乳癌の検査」の「マンモトーム生検」を参照してください。
 
「小さい点のような3~4個の石灰化」を、ST-MMTすれば「経過などみる必要はなく」すぐにでも「癌かどうか」確定診断できます。
結果
①癌で無ければ ⇒ 「すぐにでも妊娠可能」
②(万が一)癌だった場合 ⇒ (間違いなく、とても早期なので)治療をしてしまえば(安心して)その後妊娠もできる。
のです。
 
★御本人にとって「迅速な診断を行う事が最善」であることは間違いありません。
 「第2子を考えている」と言われた時点で、(まっとうな医師ならば)当然「すぐにでもST-MMTをして確定診断をすることが最善の方法である」と考えるべきです。
 おそらく、「そのクリニックにST-MMTが無い」のでしょうが、それなら「ST-MMTができる病院」に紹介すべきです
 

回答

「半年は待ってと言われたのですが、悪性である可能性が遺伝性的にもやはり高いからでしょうか?」
⇒「悪性の可能性が高い」と思っている訳ではなく、
 むしろ「多分、大丈夫だろう。」と考えているけど、確信が持てないので「半年の経過観察」と言っていると思います。
 もし「悪性の可能性が高い」と本当に考えていたら「ST-MMTのある病院」などへの紹介をするはずです。
 ※「祖母と母が乳癌」となると確かに「遺伝性乳癌」の可能性はありますが、「遺伝子検査」をしてみなければ結局のところ解りません。
 「発症年齢(40歳以下か?)」とか「卵巣癌が家系内にいるか?」なども判断材料となります。
 
「半年待ったら状態の変化がわかるからでしょうか?」
⇒解る場合と解らない場合があります。
 私は「ST-MMTを1000例以上」やっていますが、それ以上の「経過観察」もしてきました。(ST-MMTを勧めても、それを望まずに「経過観察希望」を希望する方もいらっしゃるのです)
 その経験から言うと、「半年間の経過観察」では以下のパターンとなります。

  • (パターン①)石灰化が明らかに増加する
    ⇒半年で「明らかに増加」は、乳癌でも「増殖が激しいタイプ」です。(核異型度が高い、浸潤癌に進行しやすい)
     結果として、「経過観察」をしたことで「癌を進行させた」こととなります。
     
  • (パターン②)石灰化は殆ど変化なし
    ⇒実はこれが大部分を占めます。
     (大人しいタイプの)乳癌 : 大人しいタイプの乳癌は半年では殆ど変化しません。増殖スピードが遅いので1年以上、2年位変化しない事も決して珍しくはありません。
     (乳腺症などの)良性病変 : これは何年経っても変化しません。良性なので増殖しないからです。
     
  • (パターン③)石灰化が減少、消失
    ⇒この場合は勿論全てが良性です。
     「授乳に伴う」一時的な石灰化などは、消失する事も珍しくはありません。

 ◎つまり「パターン①」もしくは「パターン③」のケースでは半年の経過観察で判明します。
 ⇒「パターン①」だった場合には「乳癌と判明」
 ⇒「パターン③」だった場合には「授乳に伴う一時的な石灰化と判明」
 ※しかし大部分を占める「パターン②」の場合には「比較的おとなしい乳癌」と「良性疾患」の二通りがあり、その区別は半年では不可能です。(2年程度は必要となります)
 
「経過観察が続いたら、妊娠出産をあきらめないといけないのでしょうか?」
⇒経過観察を2年も続けたら、その間妊娠を諦めなくてはなりません。 あまりにも「ばかげた話」です。
 経過観察などする必要はありません(理由は上記)
 ◎是非ST-MMTで「早々に決着」を着けてください。
 
「経過観察しながら、妊娠出産は可能でしょうか?」
⇒経過観察してたら妊娠出産は、その間は不可能です。
 是非ST-MMTをしてください。
 
 

私であれば(参考にしてください)

 「質問者の石灰化」の実際の画像を勿論見ていないので、状況から判断してみます。
「第1子出産・授乳を終えての」マンモグラフィーで「小さい点のような3~4個の石灰化」
⇒(授乳直後なので)当然、「授乳に伴う石灰化」の可能性も考えます。
 「私をT医師」「質問者をAさん」として「私が実際に行う診療」をお示しします。
 
T医師
「左胸に石灰化がありますね。 授乳直後だし、授乳に伴う石灰化(ミルクの石灰化沈着による)も十分に考えられますが、左側だけ(片側性)であるし、集簇しているので癌の可能性も考えなくてはなりません。」
「方法としては2つあります。ステレオガイド下マンモトーム生検を行って確定診断をつけるか、経過観察(まずは半年)を行うか。です。経過観察の場合には(半年では変化しない事も多いので)診断までには2年くらいは経過を見る事も必要となります。」
Aさん
「癌の可能性は高いですか?」
T医師
「(時期的に、授乳に伴う石灰化の可能性も十分に考えられるので)凄く高い訳ではありません。私の経験上はST-MMTを行ってみると2割~3割程度で癌がみつかります。Aさんの場合には家族歴もあるし、(35歳という年齢からも)そろそろ乳癌が増えてくる年齢なので、積極的に検査をしておくと安心だとは思います。」
Aさん
「第2子も考えているのですが…」
T医師
「それなら、当然ST-MMTをすべきです。経過観察などしたら、(経過観察中は)いつまでも妊娠ができない事になります。ST-MMTをして(異常なし=良性)と確認できれば、妊娠出産も安心してできます。」
Aさん
「もし癌だったら、暫くは妊娠できませんよね?」
T医師
「(癌の可能性が高いわけではないですが)もしも癌だとしても、この時期に見つければ、とても早期(間違い無く0期)となります。治療(手術+放射線)をしてしまえば、すぐにでも妊娠可能です。」
「経過観察ではなく、是非ST-MMTをしましょう。」
 
◎どう考えますか?
仮に、結果として「授乳に伴う石灰化」だったとしても、ST-MMTをすることで(経過観察に伴う)「癌かもしれないという不安」や「妊娠出産をその間諦めなくてはならない」から完全に解放されるのです。
 
★「患者さんの不安を取り除く医療」(良性なら良性と確実に診断する)は、とても大切だと思っています。