[管理番号:3054]
性別:女性
年齢:31歳
田澤先生はじめまして
先日、左乳房全摘手術を終えて 、本日 病理結果が出ました。
全てではなく途中報告でした。
手術が終わってから今日の結果が出るまで不安で押しつぶされそうでした。
結果を聞いてまた不安になっております。
治療は、来月から抗ガン剤治療を6ヶ月その後ホルモン療法を10年の予定です。
病理結果報告書に「Papillo-tubular carcinomaを考えるが、神経内分泌性格に付き免染を追加して検討する。」とあるため主治医から組織型はもしかしたら乳頭腺管がんとは違う特殊なタイプかもしれないとのことでした。
その結果はまだ出ていなく、もう少し調べるとのことです。
あまり前例がないタイプかもしれないが治療方針は変わらず、これからの定期的な検査を細かく行って行くしかない様な話でした。
ところで神経内分泌性格とはどういう意味ですか?特殊なタイプだとしたら予後に影響はありますでしょうか?
神経内分泌乳がんと調べるととても稀な乳がんの様でますます不安になります。
診断および所見
Invasive tumor, total mastectomy.
pT2, pN1c, g, 【Nuclear grade 1, 2, 3】
肉眼的に、24.5×13×3cm大の乳房切断術検体が提出され、割面では2.3×1.1cm大の乳白色調結節が認められる。
組織学的に、N/C比が高く、類縁形核の腫大、核形不整を示す異型細胞が、胞巣状、管状に増殖する。
Papillo-tubular carcinomaを考えるが、神経内分泌性格に付き免染を追加して検討する。
腫瘍は概ね乳腺組織内にとどまり、明らかな脂肪織浸潤は見られない。
周囲には豊富なリンパ管侵襲像が認められる。
リンパ節転移が認められ、#センチネル2/2、#1/14である。
この様な途中結果でした。
術前は、リンパ節転移はないと言われていた為、ショックでした。
まだ小さい子供(5歳3歳)の為にも頑張って治療していこうと思っていますが、ki67値も高く、今後の再発などがとても怖いです。
田澤先生 この病理結果から私の予後はどのようなものなのでしょうか?
少しでも前向きな気持ちで頑張っていけるような回答は頂けますでしょうか?
宜しくお願い致します。
ホルモン感受性 強陽性
HER-2 陰性
Ki67 90%
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「治療は、来月から抗ガン剤治療を6ヶ月その後ホルモン療法を10年の予定」
⇒この内容からは質問者が「ルミナールタイプ」であることが解りました。
Ki67=95%であれば「ルミナールB」ということですね。
「神経内分泌性格に付き免染を追加して検討する。」とあるため主治医から組織型はもしかしたら乳頭腺管がんとは違う特殊なタイプかもしれない」
⇒それ程、特殊ではありません。
神経内分泌分化は結構あります。
特に「だから何なのか」という程度のものであり、あくまでも「病理医の興味対象」にすぎません。
「あまり前例がないタイプ」
⇒担当医にとっては「前例が無い」のかもしれませんが…
私にとっては、ちっとも「珍しくない」です。
「治療方針は変わらず」
⇒全くその通りです。
「ところで神経内分泌性格とはどういう意味ですか?特殊なタイプだとしたら予後に影響はありますでしょうか?」
⇒神経内分泌細胞への分化があるというだけです。
予後とは無関係です。
「神経内分泌乳がんと調べるととても稀な乳がんの様でますます不安になります。」
⇒たいして「稀」ではありません。
「Nuclear grade 1, 2, 3】」
⇒これでは核グレードが不明です。
必ず「1,2,3」のうちのどれかの筈です。(○がついていませんか?)
「この病理結果から私の予後はどのようなものなのでしょうか?」
⇒グレードが不明(上記)なので、数字はだせませんが…
普通にステージ2Bです。
きちんと補助療法を行えばいいのです。
○ちなみに「6ヵ月の化学療法」とは「アンスラサイクリン+タキサン」のようですが、(ルミナールタイプでの抗ガン剤は「TCx4(3カ月)でいい」のではないかと思います。
質問者様から 【質問2】
先日は回答頂きましてありがとうございました。
病理結果を家に持ち帰り読み返し
分からない言葉などを見つける度に自分で調べては不安になっておりましたが
田澤先生の回答でとても安心することがてきました。
田澤先生は本当に経験豊富な方なんだと回答を見ては感動しております。
また何点か教えて頂きたいのですがよろしくお願いします。
①この度 最終的な病理結果が出ました。
免染を追加して検討するという
神経内分泌ですが乳頭腺管がんの一部に神経内分泌腫瘍があった様です。
報告書には
異型細胞にはchromogranin A(-)、synaptophysin(極少量の部分に
+)、CD56(-)であった。
とありました。
前回回答頂いたように特に心配しなくてもよいものでしょうか?
②pT2, pN1c, g, Nuclear grade 2 とありました。
pN1cの意味を自分で調べたところ
cは胸骨傍リンパ節微小転移と書いてありました。
主治医からは胸骨傍リンパ節の話は何も聞いていなかったのですが
胸骨傍リンパ節にも転移があったということでしょうか?
③最終的に私の核グレードは2でした。
田澤先生はよくki67と核グレードは同様の意味を持つと書いてありますが
私の針生検でのki67は90%でしたので グレードは3になるものと思っておりました。
報告書には
nuclear atypia : score 3
number of mitosis figures= 4/10HPF : score 1 total : 4 nuclear grade : 2
でした。
術後の病理結果にはki67は書いてありませんでした。
術後ki67
の数値が変わったのでしょうか?
④病理結果報告書にはリンパ管侵襲が認められるとの文はありましたが
静脈侵襲のことは書いてありませんでした。
lyやvの文字も見つかりませんが調べていないということなのでしょうか?
あと数日で抗ガン剤治療が始まります。
不安だらけですが家族の為にも頑張ります。
田澤先生が言ってくれた様にきちんと補助療法を行えば私の様な病理結果で完治を目指せますでしょうか?
たくさんの質問申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「前回回答頂いたように特に心配しなくてもよいものでしょうか?」
⇒その通りです。
「pN1cの意味を自分で調べたところ cは胸骨傍リンパ節微小転移」
⇒少し違います。
正確には「画像診断では検出できないが、センチネルリンパ節生検で胸骨傍リンパ節転移が見つかった場合」となります。
「主治医からは胸骨傍リンパ節の話は何も聞いていなかったのですが 胸骨傍リンパ節にも転移があったということでしょうか?」
⇒これは「誤り」だと思います。
つまり、これが正しい表現であれば、「センチネルリンパ節生検で胸骨傍リンパ節を摘出して、そのリンパ節転移が証明された」ということになりますが、実際に「センチネルリンパ節として胸骨傍リンパ節を摘出する」とは思えません。
担当医の勘違いだと思います。
「ki67と核グレードは同様の意味を持つと書いてありますが 私の針生検でのki67は90%でしたので グレードは3になるものと思っておりました。」
⇒その通りです。どちらも「細胞分裂を示す」指標だからです。
ただ、今回はグレードが2どころか、「number of mitosis figures= 4/10HPF :
score 1」とあるので、「ますます、乖離が大きい」と言えます。
つまり「10視野で4個の細胞分裂しか診られない」のに「癌細胞の実に90%が細胞分裂期にある」というのは、ちょっと想像できないですね。
「術後の病理結果にはki67は書いてありませんでした。術後ki67の数値が変わったのでしょうか?」
⇒(術前の数値で良しとして)術後には測定していない可能性があります。
「lyやvの文字も見つかりませんが調べていないということなのでしょうか?」
⇒調べた上で、「静脈侵襲の所見がない」からvの記載が無いのだと思います。(あれば、必ず記載します)
「私の様な病理結果で完治を目指せますでしょうか?」
⇒全く問題ありません。
正直なところ、「number of mitosis figures= 4/10HPF : score 1」という結果から、「本当にKi67=90%なのか? 抗ガン剤が必要なのか?」疑問に思う処もあります。