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病理学的完解.奏効の考え方

[管理番号:6084]
性別:女性
年齢:50歳
宜しくお願い致します。
去年の12月に左乳癌.初診のクリニックでは触診で浸潤癌4cm、紹介先の大学病院では2.9cmで他に腫瘍が存在(腫瘍系など詳細説明無し)リンパ節転移有り(針生研では疑陽性で画像診断で陽性)ホルモンレセプタ―(―)HER2(2+)手術先行不可能な状態と言われて術前ケモ.AC+ドセタキセル+ハーセプチン1年の治療計画を提示されました。
ACでは腫瘍が0.2mmしか縮小しませんでしたが、術後の病理では浸潤癌は病理学的完全完解.奏効したが、もうひとつの腫瘍(非浸潤)は残存したとの事でした。
術後の病理は
リンパ節転移 陰性
脈管侵襲(―)
切離断片 陰性
リンパ侵襲(―)
核の異型度 2
ホルモンレセプ― (―)
HER2 陽性
Ki―67 20%
0期でした。
pcrの考え方には異論が有り、予後改善の見込みがあるが非浸潤癌も完全に消失すれば良かったけど…と言われました。
質問させて頂きたいのですが
・残存する事による予後改善と完全pcrとの再発率や生存率に対する研究で上乗せ%は発 表されているのでしょうか?
・私の再発率と生存率は何%になりますか?
・ALP 380台が続いていて、内科の先生から骨転移の可能性を指摘されましたが、田澤先生は一秒も気にしないと回答されていましたが、気にしない理由を教えて下さい。
・分子標的薬の皮膚障害はハーセプチンにも有りますか?
それは薬が効いているとは比例しないのでしょうか?
・科学療法閉経で15Kg体重増加してしまいましたが、体重増加に伴う再発リスクはどの位 になるのでしょうか?
・術前ケモでドセタキセル+ハーセプチンで腫瘍が増大した場合はハーセプチンが効果が無 かったと言う判断になりますか?
・リンパ節 0/18個切除でしたが、レベル1だと言われましたが、レベル1で18個は多
くないでしょうか?レベル2だった。
・ステ―ジは術前の2bで考えるのでしょうか?
大学病院のチーム治療に責任の所在の不明瞭感が否めず、自分の事なのに何だかベールに包まれた部分が多々有ると感じて不安な日々です。
田澤先生の治療を初期から受ける事が出来たら、どんなに笑顔で過ごせていたかと悲しくなってしまいます。
沢山の質問、既にご回答済みの重複している質問も有る事を御容赦下さい。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
術前抗がん剤やpCRについては…
冷静になって考えてもらえばお解りになると思いますが…
抗癌剤は「術前に行っても、術後に行っても予後は同じ」なのです。
まずはこの「大原則」に立ちかえらなくてはなりません。
つまり、「pCRだから…」特別なことではなく、
以下のように考えると、解り易いように思います。
術後補助療法に置き換えましょう。(術前に行っても、術後に行っても同じなのですから)
つまり
同じステージの患者さん達が100人いるとして、同じメニューの(術後)抗癌剤を行うと…
Aグループ(80人) 結局、再発しなかった。
Bグループ(20人) 結局、再発した。
この100人が「もし、術前抗がん剤をしたら、どうだったのか?」
当然(術前に行っても、術後に行っても)予後は一緒だから、やっぱり80人は再発なしで、20人は再発したことでしょう。
それでは質問者のような「pCRの人はAグループの中とBグループの中でどの位の割合に存在したか?」というと…
 Aグループの中には50%の割合で存在し、Bグループの中には5%以下となるでしょう。
 
★解りましたか?
 pCRであることは、(術前に行っても術後に行っても)「抗癌剤が奏功して再発率がかなり低い」グループなのです。
 とはいっても(当然ながら)「pCR=再発しない」ではありません。
 Bグループ(結局再発する群)の中にも5%以下は存在するのです。(ただし、Aグループである確率が高いことは間違いありません)
「残存する事による予後改善と完全pcrとの再発率や生存率に対する研究で上乗せ%は発 表されているのでしょうか?」
⇒ありません。
「・私の再発率と生存率は何%になりますか?」
⇒わかりません。(術前抗がん剤をすると、本当の浸潤径やリンパ節などが不明となるのです)
 
 ただ、冒頭でコメントした通り、(pCRであること=抗癌剤が奏功して再発率がかなり低い」ことは間違いありません。(感覚的に当たり前だとは思いますが…)
「気にしない理由を教えて下さい。」
⇒術前抗がん剤をしているのだから…
 肝機能障害の一つと考える方が1000倍は当たり前のことです。(腫瘍マーカーは正常ですね? しかも大学病院ならば、いろいろな全身検索を山ほどやっていることでしょう)
「・分子標的薬の皮膚障害はハーセプチンにも有りますか?」
⇒ありません。
「 それは薬が効いているとは比例しないのでしょうか?」
⇒しません(そもそも「副作用と効果を関連付けることは誤り」です)
「体重増加に伴う再発リスクはどの位 になるのでしょうか?」
⇒解りません。
 そんな(不毛な)事を心配する位なら…
 食事と運動で体重を元に戻しましょう。
「・術前ケモでドセタキセル+ハーセプチンで腫瘍が増大した場合はハーセプチンが効果が無 かったと言う判断になりますか?」
⇒違います。
 ドセタキセルの効果が弱い(術前ケモで効果が無いと判断することは誤り)となります。
「・リンパ節 0/18個切除でしたが、レベル1だと言われましたが、レベル1で18個は多くないでしょうか?」
⇒リンパ節の個数は個人差があります。
「・ステ―ジは術前の2bで考えるのでしょうか?」
⇒抗癌剤は術前に行っても術後に行っても予後は一緒だという意味では2bとなりますが…
 冒頭でコメントしたように…
 結局、pCRであることは「抗癌剤が奏功して、再発率が低い」ことが証明されているので、(その意味では)ケモ後の「ダウンステージ」の方が予後には近いとも言えます。
 ★通常は「2b⇒(術前ケモにより)0へダウンステージした」と表現します。
 
 

 

質問者様から 【質問2 病理学的完解.奏効の考え方】

性別:女性
年齢:50歳
田澤先生こんにちは
前回は田澤先生に回答して頂ける喜びから
気がはやり誤字脱字だらけの非常に読みにくい文章に対して丁寧に回答して頂き、Q&Aを読破していくと重複する質問に対しても真摯に回答される姿勢に本当に頭が下がる思いです。
再度宜しくお願い致します。
48歳 子宮筋腫再発で全摘.右卵巣嚢腫全摘.左卵巣通過障害?あるが残存の手術を受けています。
今回術後ホットフラッシュや苛々の症状により桂枝ぶくりゅう丸を飲んでいます。
両手腱鞘炎が術後右手だけ悪化し、受診した所「リウマチ?」と言われましたが、検査結果陰性でした。
その後、前回のALP↑については主治医も勿論田澤先生と同意見でしたが、生活習慣病治療を勧めれて内科受診。
やはりALP:368.総コレステロール:294.LDL:193でした。
ALP3:58.3やや高値の為に今後追跡検査必要と言われました。
ただ今はこの位の値では内服しないとの事で無治療.経過観察です。
田澤先生が仰る通り(主治医も同意見)化学療法閉経・更年期が原因だと思うのですが…。
主治医の現時点で骨転移は無いの返事に対抗しているのか?本当に可能性が高いのか不安ばかりが募り、前向きになれずにいます。
・骨転移のリスクが高いのでしょうか
・無治療.経過観察なら主治医に診て貰っ
て良い状態でしょうか(肝臓専門医が
良いのか)
・漢方薬の更年期障害の有効性は高いのでしょうか
術後、乾燥性皮膚炎.カンジダ性腟炎.萎縮性腟炎.ピロリ性胃炎.老人性?関節炎.鼻横疣?皮膚癌?(窒素治療)など…。
体調不良で受診すると、全て老人性と言われて凹んでいます。
漢方しか有用な治療法は無いのでしょうか。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「・骨転移のリスクが高いのでしょうか」
⇒全く根拠がありません。
「・無治療.経過観察なら主治医に診て貰って良い状態でしょうか(肝臓専門医が良いのか)」
⇒いずれは、そうなるでしょうが…
 とりあえずは、専門家の言う事を聞きましょう。
「・漢方薬の更年期障害の有効性は高いのでしょうか」
⇒それ程、高くはないでしょう。(経験上)
「体調不良で受診すると、全て老人性と言われて凹んでいます。」
⇒言葉が悪いですね(笑)
 正しくは「閉経性」ですね?
「漢方しか有用な治療法は無いのでしょうか。」
⇒サプリメントとかですね。
 
 

 

質問者様から 【質問3 病理学的完全寛解・奏効の考え方】

性別:女性
年齢:50歳
田澤先生こんにちは。
再度宜しくお願い致します。
経過ですが
術前
左胸浸潤性乳管癌 硬癌
ステ―ジ2b
腫瘍径 2.9cm.非浸潤癌腫瘍径不明
右しこりあるが良性でOP適応無し
リンパ節転移 疑陽性?画像で陽性?
HER2 2+(フィッシュ陽性)
術前ケモ(無知だった為…)
AC+DTX+HER
術後
浸潤癌.リンパ節pCR
非浸潤癌遺残
リンパ.脈管(―)
Ki―67 20% 核異形度 2
再発リスク 1だが、全体鑑みて 2との結果で今月術後HER終了しました。
そこで田澤先生にお聞きしたいのですが、
昨日右乳頭下に細長い(10×15mm)の硬くて動かないしこりが触れます。
術前のOP不適応となったものだと思いますが、
・術後pCRしたものの、非浸潤癌が遺残し
た為、抗癌剤に感受性を持たず癌化した可能性はありますか。
・頸部の突っぱり感と右胸の同じ場所が痛みますホルモンの刺激症状でしょうか。
・HER2 3+で術後化学療法閉経による更
年期症状(ホットフラッシュ.苛々等)で加味しょうよう散から桂枝茯苓散を内服し
ていますが、先生なら何を処方されますか。
(体力中程度です)
・術後1年まで、エコ―や触診無しでしたが再発転移が不安でたまりません…。
不要なのでしょうか。
・一番再発の確率が高い時期は何年目ですか。
・コラムを拝見しましたが、エクエルの効用はHER2陽性でも期待が高いのでしょうか。
・皮膚転移の初期症状(湿疹様)の画像をアップして頂けますか。
・病状的に楽観出来ない情況ですか。
一度に沢山質問してしまい申し訳ありません。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「癌化」という考え方は間違いです。(良性は未来永劫良性であり、癌は最初から癌だったのです)
私が一番嫌いなコメントは「今回の検査(組織診など)では良性だったけど、将来癌になるかもしれないから定期的な診察は必要だよ」というやつです。
 もしも「将来的に癌だったとしたら、それは最初の診断が誤り(誤診)であり、最初から癌だった」だけの話です。
「昨日右乳頭下に細長い(10×15mm)の硬くて動かないしこり」
「術前のOP不適応となったもの」「抗癌剤に感受性を持たず癌化した可能性」

⇒「癌化」などありえません。
 もしも(現時点で)癌ならば、最初の「良性でOP適応無し」という診断が誤りだったということになります。
 ★ 気になるなら、早めに受診して組織診してもらいましょう。
「頸部の突っぱり感と右胸の同じ場所が痛みますホルモンの刺激症状でしょうか。」
⇒その通り、それ以外で「そんな症状」はありえません。 『今週のコラム 111回目 大事なことは、これら①~④の病気など世の中には無いのです。それは(我々医師には)自明なことなのです。』を是非ご参照のこと
「加味しょうよう散から桂枝茯苓散を内服していますが、先生なら何を処方されますか。」
⇒同じです。
「不要なのでしょうか。」
⇒それは「其の主治医に」話すべきでしょう。
「・一番再発の確率が高い時期は何年目ですか。」
⇒そんなピークは存在しません。
 まずは2年以内、それから5年以内と区切りをつけて、(結果として)5年過ぎれば「かなり確率は低下」します。
「・コラムを拝見しましたが、エクエルの効用はHER2陽性でも期待が高いのでしょうか。」
⇒その通り。
 HER2陽性と何の関係があるのか?(HER2陽性だから…みたいな発想はもう止めましょう)
「・皮膚転移の初期症状(湿疹様)の画像をアップして頂けますか。」
⇒残念ながら、現在ありません。
「・病状的に楽観出来ない情況ですか。」
⇒??
 
 右が気になるなら、(そんな無意味なことを考える前に)受診しましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問4 術前からの対側のしこり】

性別:女性
年齢:50歳
Q&Aを読破していくと、もう質問する内容は無い!と思いますが、患者の広域ではない自分は?と言う感情に寄り添い、同じ内容にも丁寧に回答されている姿に頭が下がります。
宜しくお願い致します。
以前、対側のしこりについて「組織診を」と回答頂きました。
今月1年目検診で診察を受けましたが、胸X-P.マンモ.腹部エコー.採血.視触診の結果は異常無しでした。
質問ですが
・組織診はせずに、エコー無し.マンモ.視触診で「まだ乳腺が発達している。乳腺です」と言われましたが、エコーしなくても判断出来るのでしょうか?
(乳癌検診で見落とされた感が拭えず不安です…)
・対側の腋窩に痒みが有り、極小さいブツブツ(湿疹)が数個有りますが転移の初期症状ではないですか。
術後の患部の硬い感じや鈍い痛み、首のリンパの突っ張り感や湿疹を見つけると不安に押し潰されそうになり、まだまだ前向きに生きられていない自分がいます。
どうぞ宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
「エコーしなくても判断出来るのでしょうか?」
→エコーでないと解りません。
 エコーをせずに「ご本人が気になるしこり」を判断したとしたら…
 それは「とんでもない誤り」です。(エコーで発見できてマンモには映らないシコリなど、星の数ほどあります。
 というか、マンモでは映らない方が寧ろ多いです)
「・対側の腋窩に痒み」
→1000%間違いなく、ホルモンの刺激症状もしくは(単純な)皮膚炎です。
「極小さいブツブツ(湿疹)が数個有りますが転移の初期症状ではないですか。」
→1000%ありえません。
 皮膚転移は「絶対に」腫瘍がもとあった付近から出るのです。(そんな無関係な部位に皮膚転移など、ありえません)
「術後の患部の硬い感じや鈍い痛み」
→痛みを再発と結びつけること自体、発想に誤りがあります。
「首のリンパの突っ張り感や湿疹を見つけると不安」
→もう少し理論的になりましょう。
 リンパ節転移は(もしあったとしても)「無症状」(つまり、「リンパ節のあたりが痛い=リンパ節転移?」という発想自体ナンセンス)
 ☆皮膚転移は「原発巣」付近からしか現れません。
「押し潰されそうになり、まだまだ前向きに生きられていない自分がいます。」
→なんでも、かんでも「ブラックボックスに入れて不安になる」ことは辞めましょう。
 もう少し理論的に考えることをお勧めします。