[管理番号:818]
性別:女性
年齢:45歳
田澤先生 いつもこのサイトで勉強させてもらっています。有益な情報を有難うございます。
「乳ガンの生存率 乳ガンのステージ」
先日温存手術を受けました。
病理の結果、浸潤径1.2cm、ステージ1ですが、グレード3でHER2陽性でした。
先生は予後についてはステージが一番大事で、グレードやタイプはあまり気にしなくて良いとおっしゃておられたので、安心をしていたのですが、「HER2陰性群に比べHER2陽性群では再発リスクが2.68倍、転移のリスクは5.3倍」という研究結果が出ているという記事を読みました。
一般的にステージ1の5年生存率は95%を超えるように書かれたものが多いですが、それはHER2陽性と陰性の平均値であり、実際にはステージ1でもHER2陽性の場合はもっと生存率が低いのではないかと不安になりました。
やはり同じステージでも、HER2陽性と陰性で生存率は変わるものでしょうか。
不躾な質問で恐縮ですが、HER2陽性という結果をどのように捉え れば良いのか分からないため、質問させて頂きました。
よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
HER2陽性乳癌は「かつて(trastuzumabハーセプチン登場前)は予後不良因子のひとつ」とされていましたが、今では「抗HER2療法」の登場により劇的に改善されています。
Trastuzumab, lapatinib, pertuzumab, Trastuzumab emtansine (但し、術前術後補助療法で使用できるのはtrastuzumabのみです)
回答
『「HER2陰性群に比べHER2陽性群では再発リスクが2.68倍、転移のリスクは5.3倍」という研究結果が出ているという記事を読みました。』
⇒この手の記事の問題点は以下の2点です。
・大規模臨床試験ではない(あくまでも限られた施設のデータで、しかも差がでるように対象を操作している)
・trastuzumabは2001年から発売していますが、術後補助療法としての適応追加は2008年です。これ以降で予後は劇的に改善されています。
しかもpertuzumabやTrastuzumab emtansineなどは、まだまだこれからの薬なのです。
「やはり同じステージでも、HER2陽性と陰性で生存率は変わるものでしょうか。」
⇒luminal type, luminalB(HER2陽性), HER2 type, triple negative 予後は少しずつ違います。
同じステージ同士で比較すれば数パーセントの違いは存在すると思います。
○しかし私が再三いうように、サブタイプで予後を議論する事は無意味です。
あくまでも『サブタイプは治療法の為にある』のです。
「HER2陽性という結果をどのように捉えれば良いのか」
⇒答えは簡単です。
治療法として「抗HER2療法という、乳がん治療で輝かしい人類の勝利」を享受することです。
○サブタイプを予後と関連したい人には、このサイトは役立たないかもしれません。
そのような見方は止めた方がいいのではないでしょうか?