[管理番号:716]
性別:女性
年齢:59歳
初めて質問させて頂きます。
59歳の母ですが、つい数日前に温存手術+リンパ郭清(レベル1)をしました。
まだ病理検査結果は出ていないのですが、しこり2.3cm、CTでリンパ節に腫大が2つみられた為郭清、他疑わしいもの2~3個を郭清したそうです。
ステージはしこりの大きさと転移ありとの予想のため2bと言われました。
が、転移の数が多ければステージ3に上がるかもしれないと言われたそうです。
術前検査ではホルモン90%陽性で大人しいタイプの癌(分かりやすく説明して頂きましたが、ルミナルAという事でしょうか)との事。
出来ればホルモン療法と放射線治療のみが良いと本人は希望していますが、この場合化学療法も行うしかないのでしょうか。
化学療法を行う場合、強めの薬を使うことになりますか。
また、ステージ3に上がると顔つきが大人しいタイプでも10年生存率は悪いのでしょうか?再発率は高いですか?
教えていただければと思います。
田澤先生からの回答
こんにちは田澤です。
ステージに関しては以下に記載します。
(リンパ節に転移が無い場合)pT2(23mm), pN0, pStageⅡA
(リンパ節に転移が1~3個の場合)pT2(23mm), pN1, pStageⅡB
(リンパ節に転移が4個以上の場合)pT2(23mm), pN2, pStageⅢA
回答
「転移の数が多ければステージ3に上がるかもしれないと言われた」
⇒その通りです。
上記のように、リンパ転移が4個以上だとpN2, pStageⅢAとなるのです。
「ホルモン90%陽性で大人しいタイプの癌(分かりやすく説明して頂きましたが、ルミナルAという事でしょうか)」
⇒ルミナールタイプです。
ルミナールAかBかはKi67(術後の標本で調べる事も多い)によります。
○ルミナールA Ki67が(大凡)25以下
○ルミナールB Ki67が25以上
♯ルミナールBの場合には一般に(ホルモン療法の他に)「抗がん剤の適応」がでてきます。
「出来ればホルモン療法と放射線治療のみが良いと本人は希望していますが、この場合化学療法も行うしかないのでしょうか。」
⇒ルミナールタイプの場合の術後化学療法の適応は以下の2つと考えていいでしょう。
適応①ルミナールBの場合(つまりKi67が高値)
適応②ルミナールAであってもpN2(リンパ節転移が4個以上)の場合
♯ルミナールAにおいての化学療法の定義はSt.Gallen 2015という国際会議での意見です。
「化学療法を行う場合、強めの薬を使うことになりますか。」
⇒術後に用いる化学療法のメニューは大きく分けて「TC療法」と「アンスラタキサン」となります。
ルミナールタイプの場合には「TC療法」で原則いいと思います。
★ハイリスクと判断した場合「リンパ節転移が10個以上」であれば「アンスラタキサン」となるでしょう。
「ステージ3に上がると顔つきが大人しいタイプでも10年生存率は悪いのでしょうか?再発率は高いですか?」
⇒adjuvant!onlineというソフトを用いると
10年生存率は70%, 再発率は34%となります。
質問者様から 【質問2】
先生、御回答頂きありがとうございました。
先日発見してくれた個人病院へ経過報告に伺ったら
「ステージ2bだと5年生存率は65%くらいだよ。治療頑張ろうね」と言われました。
ネットや本ではもう少し高いのですが、かかりつけ医に言われたのが真実か?と愕然としています。
しかも病理検査の結果によってはステージが上がるかもしれない…
恐ろしいです。手術も終わり治療を頑張れば10年くらい生きられるのではと思い込んでいました。
やはり放射線、ホルモン治療、もしくは抗がん剤治療をしても予後は悪いのでしょうか。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「ステージ2bだと5年生存率は65%くらいだよ。治療頑張ろうね」という数字は「あまりにも低すぎます」
根拠が何なのか一度聞いてみましょう。
回答
「やはり放射線、ホルモン治療、もしくは抗がん剤治療をしても予後は悪いのでしょうか。」
⇒そんな事はありません。
以下にAdjuvant! Onlinでの推定予後を記載しますので参考にしてください。
○リンパ節転移が「1~3個」だった場合(ステージ2Bとなります)
ホルモン療法単独 10年生存率 79.1%
抗がん剤を追加すると +4%の上乗せ効果
○リンパ節転移が「4~9個」の場合(ステージ3Aとなります)
ホルモン療法単独 10年生存率 71.5%
抗ガン剤を追加すると +6%の上乗せ効果
★この数値をみてもわかるように「5年生存率65%とは低すぎ」ます。
何かの間違いでしょう。