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3.9cmの乳がん

[管理番号:700]
性別:女性
年齢:49歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:969「節外浸潤」

 
 
昨年の12月にマンモグラフィーを撮り異常なしでした。 今年4月頃から右の胸に違和感があり気にはなっていたものの、マンモグラフィーを撮って間もなかった為、特に心配はしていませんでした。 しかし、6月頃にはかなり大きくなったので、心配して受診したところ、マンモグラフィー、超音波、バイオプシーを行い、乳がんが発覚しました。
リンパに転移もあります。
10歳と11歳の子供がいます。
先生ならどのような治療をされますか?
詳細は下記の通りです。 (現在アメリカ在住の為、英語です。申し訳ありません。)
Invasive Ductal Carcinoma and ductal carcinoma in situ
Estrogen Receptor Analysis – Positive/Staining proportion 72%/Allred score/Internal normal epithelial elements -yes
Progesterone Receptor Analysis – Positive/Staining proportion 90% / Staining intensity moderate / Allred score 7 / Internal normal epithelial elements-yes
HER2 – Negative
Ki-67 – Percentage of nuclei positive 2%
その後、MRIを撮り、乳がんは2つ、そして大きい方のサイズが3.9cmと判明しました。
主治医には、ステージ2、Luminal Aと言われています。乳房及びリンパを切除した上でホルモン治療が必要だと言われました。 
進行は早くないタイプのものなので、そんなに急がなくても1ヶ月以内位に手術をすれば完治する確率は90%以上と言われているのですが、本当にそうなのでしょうか?
すでにリンパに転移しているし、手術を待っている間にもどこかに転移しているのでは、と毎日不安でなりません。
これから CTスキャンやPETスキャンを撮るようなので、全身に転移しているかもしれないと不安でたまりません。
これは通常行われるものですか?
それとも、その可能性が高いから行うようになっているのでしょうか?
それから最後に、再発の可能性なのですが、以前、先生のブログで、医学的な根拠はないものも、再発に腫瘍径が関係していると思う、というような記述があったと思うのですが、私のような大きな腫瘍の場合はやはり再発の可能性が高いのでしょうか?
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 cT2(39mm), cN1, luminalA(Ki67=2%)

回答

「先生ならどのような治療をされますか?」
⇒担当医と同様です。
 乳房切除+腋窩リンパ節郭清
 術後は内分泌療法
 ★リンパ節転移の個数によっては(術後)『放射線治療』と『抗がん剤』も行います。
○1~3個:放射線治療を考慮(相談) 抗がん剤無し
○4個以上:放射線治療(必須)、抗がん剤を推奨(相談)     
 
「CTスキャンやPETスキャンを撮る」「これは通常行われるものですか?」
⇒これは、お国の事情(保険制度)にもよるのではないかと思います。
 CTで「念の為の」全身チェックは通常行いますが、PETは不要だと思います。
 日本では「国民皆保険」のため、本来不要な「PET検査」を日常的に行っている病院も確かにあります。(行わない病院の方が多いです)
 ○アメリカでは「個人で入る保険」の筈ですので、質問者の保険が「PETなどの高額な検査もカバーしている」のではないでしょうか?
 それで、医師も(必須ではないけど)「PETも撮れるので、撮っておこう」位の感覚だと思います。
 
「それとも、その可能性が高いから行うようになっているのでしょうか?」
⇒それは違います。
 質問者の状況で「CTやPETでターゲットとする様な遠隔転移は、ありません」(私の経験で言っています)
 CTは「念のため」
 PETは「どうせ、撮れるのだから、撮っておこう」的な発想です。
 
「私のような大きな腫瘍の場合はやはり再発の可能性が高いのでしょうか?」
⇒「腫瘍径」は重要な「再発の因子」である事は間違いありません。
 ただ「39mm」が凄く大きいかというと、私が日常的に診療で遭遇する中では「通常の大きさ」です。
 
 ○私が「再発高リスク」と感じるのは「腫瘍径7cm以上」のような大きさです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日は丁寧なご回答をありがとうございました。
その後、PETスキャンのみを撮りました。
先生のおっしゃった通り、腫瘍内科医が「せっかく保険が払ってくれるのだから、撮っておきましょう。」と言っていたのを思い出し、それ程心配することもなく検査を受けることが出来ました。
その結果が先日出たのですが、乳がんで診断されたもの意外に下記の記載がありました。
1. Mild FDG uptake is seen localizing to approximately T12 spinous process, suggestive of inflammatory changes.
2. Incidental note is made of a prominent appearing calcified fibroid uterus which appears to displace the urinary bladder anteriorly.
1については、まず乳がんの転移とは考えられないと腫瘍内科医に言われましたが、念の為、腰の部分のMRIを撮りました。
まだ結果は出ていません。
先生から心強いお言葉を頂いているので、最悪の事態は考えないようにしています。
2に関しては、医師からの説明は特にありませんでした。
11年前の出産時から、多くの子宮筋腫があったので、それが関係してるのかと考えているのですが、こちらの方も検査すべきなのでしょうか?
MRIの結果の問題がなければ、8月28日に両乳房切除、腋窩郭清、及び乳房同時再建(エクスパンダー挿入)を行う予定です。
両方切除する必要はないそうですが、元々発見が遅れたのは、私の胸の組織が大変密であり、マンモグラフィーで乳がんの早期発見が難しかったからのようです。
同じことが左の胸に起こる可能性があるので、出来ることは今のうちにやっておこうと決意したからです。
リンパにいくつ転移しているかによって、その後の治療が変わるようですが、すでにバイオプシーで転移していることはわかっているので、少なくとも放射線治療をするということになるのではないのですか?
その場合、乳房再建の際にシリコンが使えなくなると形成科医に言われたのですが、先生も同意見ですか?
それとも、これは形成科の範疇の質問でしょうか?
今から手術まで1ヶ月以上あるので心配しています。
担当の外科医及び形成科医は大変信頼出来る医師いに出会えたのですが、外科医が2週間の休暇に入ることから、手術がずいぶん先延びになってしまいました。
もっと早く手術出来る外科医を探すべきでしょうか?
3.9cmの乳がんになるまで、少なくとも5年以上何度もの細胞分裂を繰り返してきたと理解しています。
馬鹿げた発想かもしれませんが、次の細胞分裂を起こしたら、7.8cmになってしまうと思い心配です。
更には、リンパの転移も増えるのではないかと心配しています。
長くなって申し訳ありませんが、先生の意見をお聞かせ頂ければと思います。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 PETの結果は心配ないと思います。
 12胸椎は変性などでしょう。
 また子宮は石灰化を起こした筋腫のようですが、「子宮筋腫があることも解っている」ので心配ありません。また乳癌は「子宮には転移しない」のです。

回答

「11年前の出産時から、多くの子宮筋腫があったので、それが関係してるのかと考えているのですが、こちらの方も検査すべきなのでしょうか?」
⇒不要です。
 そもそも乳癌は「子宮には転移しない」のです。
 
「両乳房切除」
⇒これは驚きました。
 さすがアメリカですね。
 日本の保険制度では「手術適応が無い」ので「自費診療」でしか行えません。
 
「少なくとも放射線治療をするということになるのではないのですか?」
⇒4個以上の場合は必須だと思います。
 1~3個の場合は「担当医との相談」となるでしょう。
 
「その場合、乳房再建の際にシリコンが使えなくなると形成科医に言われたのですが、先生も同意見ですか」
⇒日本の病院では「エキスパンダーからシリコンへ入れ替えてしまえば放射線は可能」という見解も多いようです。
 ただ、その場合には「放射線照射の開始時期が術後、最低でも半年以上、通常7~8カ月程度」となるので「術後5カ月以内の照射開始の原則」に逆らう事となり「それによる不利益の可能性」も考えなくてはなりません。
 
「もっと早く手術出来る外科医を探すべきでしょうか?」
⇒1カ月程度であれば、特に問題は無いと思います。
 それ程慌てる状況にはありません。
 (アメリカの状況は解りませんが)日本では「同時再建(しかも両側)」をしようとすれば、別の病院をさがしても「すぐには日程が組めない」事が多いと思います。
 
○ただ、「術後照射」の可能性と「エキスパンダーによる再建」については、きちんと「担当医との話し合い」が必要です。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

お忙しい中、いつも迅速に回答して頂き、ありがとうございます。
感謝の気持ちでいっぱいです。
その後、MRIの結果が出て、先生がおっしゃる通り問題はありませんでした。
おかげさまで手術の日程も3週間近く早まり、8月8日に行うことになりました。
再建について、もう一度形成外科の医師と話した結果、今回の手術では右乳房のみ切除することになりました。
同時再建するにしても、2度目の手術が必要なので、希望するならその際に左乳房を切除及び再建出来るそうです。
その場合でも、保険適用とのことでした。
がんのない方の乳房を切除することに関しては、先生はどのように思われますか(保険の制限がない場合)? 万が一、将来左乳房にがんができて、またマンモグラフィーで見つけられず、リンパに転移するようなことがあったらと不安で、一度は両乳房切除しようと決心したのですが、それは心配のし過ぎでしょうか?
日本では保険の適用がないと聞いて、考え直してしまいました。
実は私の友人が、同じような状況で両乳房切除していたのと、最近そのような決断をする人が増えているという記事を読んで、安易に考えていたのかもしれません。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 手術日程も「早まり、8月8日となった」との事。
 よかったですね。
 予防的乳房切除、これについての考え方は「時代とともに変化」しています。
 これには「遺伝性乳癌卵巣癌症候群」の存在が大きいのです。

回答

「がんのない方の乳房を切除することに関しては、先生はどのように思われますか(保険の制限がない場合)?」
⇒これは、かなり難しい問題です。
 「アンジェリーナ・ジョリー」の例を挙げるまでもなく、「遺伝性乳癌であれば切除は妥当」という考えもありますが、「そうでない人たち全員も対側を切除」となると医療現場は混乱するでしょう。
 質問者の言う様に「リンパに転移するようなことがあったらと不安」という気持ちも解るだけに難しい問題です。
 日本の様な国民皆保険制度での保険カバーは「あくまで遺伝性乳癌の場合のみ(現状では適応外ですが)」とし、「非遺伝性乳癌の場合は、個人負担」というのが妥当な気がします。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

いつも丁寧な説明でご回答頂き、心より感謝しています。
このブログのおかげで、心配で胸が張り裂けそうな時に、何度も救って頂いています。本当にありがとうございます。
先日、乳房切除及び腋窩リンパ節郭清、更に同時再建でエクスパンダーを挿入する手術をを受けて来ました。
病院で1泊した後、現在自宅で療養中です。
先ほど、最終病理結果の連絡がありました。
私が出来るだけ早く知りたいと要請したため、担当医との診察の前に口頭で教えてくれました。
結果は、手術前に行った針生検の結果とほぼ変わりなかったそうですが、腫瘍径が大きくなって、4.1cm、リンパ転移は17本のうち2本が陽性だったとのことです。
最終的には、ステージ2Bです。
この結果を踏まえて、以前先生にお伺いした治療方針と照らし合わせると、術後に内分泌療法を行うことは確定、放射線治療を考慮、化学治療は必要なしということになると理解しています。
転移する前に出来ることはやっておきたいので、放射線治療は受けようと思っているのですが、化学治療について今一度質問させて下さい。
手術前に、セカンドオピニオンも含めて、何人かの腫瘍内科医に診察を受けたのですが、皆口をそろえて化学治療(TC)を行うべきだと言っていました。
私の年齢が若いこと、リンパに転移があることを理由に上げていました。
私は、Ki167が2%なので、本当に化学治療が有効なのか疑問に思っています。
ただ、自分の家族なら間違いなく行うと言われると不安になります。
もし、行うとすればどれ位の効果が期待出来るのでしょうか?
副作用等を考慮して、価値のあるものなのでしょうか?
最後に、再発率はどれ位あるのでしょうか?
遠隔転移した際には、完治はせず、症状を抑えたり延命治療しか出来ないという理解は正しいのでしょうか?
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 pT2(41mm), pN1, luminalA

回答

「何人かの腫瘍内科医に診察を受けたのですが、皆口をそろえて化学治療(TC)を行うべき」
⇒腫瘍内科医は「抗がん剤をするため」の専門家ですから、「抗がん剤をするべき」となるのは当然と言えます。
 我々乳腺外科医は「診断~手術~術後療法」とバランス良く見ています。
 術後療法にしても「ホルモン療法、化学療法、放射線治療」とバランスをとっています。
 例えば「局所再発」一つとっても、「腫瘍内科医は化学療法しか考えない」し、「放射線科医は放射線治療しか考えません」(当たり前の事です)
 我々乳腺外科医は「まず手術で取れるか?」「術後は放射線照射をして、更に化学療法で補助するか?」のように総合的に考えるのです。
 
「リンパに転移があることを理由に上げていました」
⇒St.Gallen 2015では「luminal Aの化学療法適応」としては「リンパ節転移1~3個」は65%の専門家が「No!」と、言っています。
 やはり「腫瘍内科医」と「乳腺外科医」の考え方は異なるのです。
 
「行うとすればどれ位の効果が期待出来るのでしょうか?」
⇒Adjuvant! Onlineでは、ホルモン療法の効果(13.3%低下)に加える事で、「上乗せ効果として」再発率を8.5%低下させます。
 但し「Ki67=2%」となると、おそらく「ホルモン療法の効果が、もう少し高く15%位?」化学療法の上乗せ効果は5%程度だと思います。
 
「副作用等を考慮して、価値のあるものなのでしょうか?」
⇒ホルモン療法優位でしょう。
 Ki67の数値を見る限りSt.Gallen 2015の考え方を適応します。
 
「再発率はどれ位あるのでしょうか?」
⇒26%です。
 ただし、この数字は「タモキシフェン単剤5年」のデータなので、閉経までは「LH-RHagonist併用」そして、閉経後にAIを5年投与すれば「飛躍的に低下」することが期待できます。