[管理番号:669]
性別:女性
年齢:48歳
針生検で0/3,非浸潤との予想で手術を受けました。
当初は部分切除でもいけるかもという感じでしたが、MRI検査で他にも2箇所小さいものがあり、皮下乳腺全摘出手術、同時再建を受けました。
センチルリンパ生検でリンパ節転移なしです。
術後の病理検査結果で5ミリスライスで1ミリ以下の浸潤部分が見つかりましたとの説明を受けました。
主治医には「ほぼ非浸潤なので、ホルモン治療も必要ないと思います。後は定期検診で良く見ていきます」と言われました。
放射線も受けていません。
無治療で良いのならありがたいですが、ネットで色々調べると治療は千差万別のように感じたので、ガイドライン上としてはどうなのか、あるいは医師によってどの程度の見解相違があるものなのか教えていただけると助かります。
また、仮にホルモン治療を受けた場合、再発率はどの程度違うと思われますか?
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1mi, pN0, pStage1ですね。
回答
「ほぼ非浸潤なので、ホルモン治療も必要ないと思います。後は定期検診で良く見ていきます」
⇒私も同意見です。
微小浸潤(pT1mi)についての予後の検討などはされた事は無い筈です。
ほぼ非浸潤癌と同等でしょう。
「ガイドライン上としてはどうなのか」
⇒NCCNのガイドラインとしては「微小浸潤pT1mi」は「浸潤径5mm以下pT1a」と同等の扱いとなってます。
つまり、「ホルモン感受性が陽性ならば、ホルモン療法を考慮」となっています。
♯いずれのサブタイプであっても、化学療法の適応はありません。
「医師によってどの程度の見解相違があるものなのか」
⇒上記ガイドラインと同程度です。
「ホルモン療法ならば、やってもいい」が「化学療法はしない」というところです。
この「ホルモン療法」を『強く勧める』か『しなくてもいいと思いますよ』というニュアンスが異なるとは思います。
「仮にホルモン治療を受けた場合、再発率はどの程度違うと思われますか?」
⇒数字に出る様な差は無いと思います。
「pT1mi」ならば、「ホルモン療法をしても、しなくても」再発リスクはほぼゼロです。
「非浸潤癌と同様に」対側乳癌のリスクを低減する効果は間違いなくあります。
質問者様から 【質問2 検診の大切さ】
浸潤1ミリの術後治療について質問させていただいたものです。
こんなに早くご回答いただけたことに驚いています。
先生の「私も同意見です」のコメントに本当に安堵致しました。
毎日、診療や治療をされながら、たくさんの質問に目を通され、更にこんなに丁寧にひとつひとつ回答されていっらっしゃること、本当に感動します。
私は幸い初期で、質問を憚られる気持ちもあったのですが、こんな先生にとっては些細と思われる質問にも丁寧にご回答いただけたことを大変ありがたく思っています。
私自身は乳ガンリスクはないと思って暮らしていたので、今回検診で早期発見していただけたことは本当に不幸中の幸いでした。
検診をきちんと受けていて本当に良かったです。
この経験を踏まえて、周囲の人にも検診を進めたいと思います。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
『検診の重要性』 我々乳腺外科医が言うよりも、説得感があります。
是非、周囲の方に広めてください。
ネットでは「サブタイプだとか、トリプルネガティブだとか、言われていますが」何と言っても「早期発見こそ、最大の治療」なのです。
質問者様から 【質問3】
以前、こちらで質問させていただきました。
その後、毎日欠かさずQ&Aは読ませていただいております。
再度質問をさせていただきます。
私の以前の質問で「主治医には「ほぼ非浸潤なので、ホルモン治療も必要ないと思い
ます」と言われたことに対し、田澤先生からの回答は「私も同意見です」といただい
たのですが、
今回「管理番号1248:術後ホルモン治療について」の方へのご回答で「私であれば「微小」とはいえ、浸潤癌であれば
「内分泌療法」を勧めます」とご回答されていらっしゃいます。
これは「再発に関しては無治療で構わないと思うが、対側乳癌の発症リスクを低減さ
せるためにはホルモン療法を勧める」ということなのでしょうか?
確かに、私が質問した際にも「非浸潤癌と同様に対側乳癌のリスクを低減する効果は
間違いなくあります」とご回答いただきましたが、私は「副作用等のリスクと天秤に
掛けた場合、ホルモン療法は勧めない」という理解をしておりました。
主治医からは「再発の確率よりも、対側発症率が乳癌に罹っていない方より高いの
で、それも含めて検診で診ていく」と説明を受けていますが、田澤先生ならホルモン
療法を勧めるということでしょうか?
お手数をお掛けしますが、ご回答をよろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
以前の回答で
「ガイドライン上としてはどうなのか」
⇒NCCNのガイドラインとしては「微小浸潤pT1mi」は「浸潤径5mm以下pT1a」と同等の
扱いとなってます。
つまり、「ホルモン感受性が陽性ならば、ホルモン療法を考慮」となっています。
♯いずれのサブタイプであっても、化学療法の適応はありません。
「医師によってどの程度の見解相違があるものなのか」
⇒上記ガイドラインと同程度です。
「ホルモン療法ならば、やってもいい」が「化学療法はしない」というところです。
この「ホルモン療法」を『強く勧める』か『しなくてもいいと思いますよ』とい
うニュアンスが異なるとは思います。
上記内容なのです。
「ガイドライン上、適応はある」が実質は「ホルモン療法は強くは勧めない」という
スタンスです。
質問者の場合には「担当医からホルモン療法はしない方向」と離されているのを「敢
えて、方針転換するほどではない」というニュアンスなのです。
回答
『これは「再発に関しては無治療で構わないと思うが、対側乳癌の発症リスクを低減
させるためにはホルモン療法を勧める」ということなのでしょうか?』
⇒別の方への回答で「ホルモン感受性が1%でもあればホルモン療法の適応がある」
と回答したことがあります。
「ガイドライン上、適応があっても」自分としては「実は大した意味はない」と思
うことは多々あります。
ただ、私のポリシーとして「ガイドラインで勧められているのに、自分個人の考え
でそれを伝えない」ことは罪であると思っています。
言っている事を御理解いただけますか?
つまり、「個人的には必要ないと思っても」「ガイドラインで勧められている治療
を勧めない訳にはいかない」のです。
○勿論「対側乳癌への発症予防効果」はあります。
「田澤先生ならホルモン療法を勧めるということでしょうか?」
⇒ご理解いただけましたか?
前回回答したように、「実質上は非浸潤癌と同様」に考えて「ホルモン療法は不
要」に思います。
ただ、私のポリシーとして「適応がありますが、どうしますか?」となります。
私が質問者の実際の主治医であれば、「ホルモン療法は不要です」とは言いません。
再発リスクは低いですが、「ホルモン療法の適応はあります。副作用が強ければ我
慢してまで継続する必要はありません。どうしますか?」となります。
質問者様から 【感想4】
勤めているので「9時から20件」になかなか入れられず、お礼が遅くなりました。
このお礼で質問をしたい方が1件入らなくなるのは不本意ですが、やはりお礼だけは
言わせていただきたかったです。
田澤先生のポリシーが大変よく理解できましたし、おっしゃる意味もよく伝わりました。
主治医も「ホルモン療法をやるという選択肢はあるけど…私はやらなくていいと思い
ますよ」という感じのおっしゃり方でしたので「適用がある」ということの説明義務
は果たしていらっしゃいます。
私としては主治医のおっしゃった「私はやらなくていいと思う」に対して、医師に
よってどの程度の見解相違があるのかをお聞きしたかったので、田澤先生の見解を伺
えたことが大変ありがたかったです。
実際に診てもいない多くの質問者、何度も何度も繰り返し質問をされる方に対して
も、いつも丁寧にご回答され、更に質問者の立場や気持ちを考えてお答えされている
のを感じ、時々涙が出ます。
不安な中、田澤先生が相談に乗ってくださったこと、助けていただいたことに心から
感謝しています。
質問者様から 【質問5】
申し訳ありませんが、またご相談させて下さい。
手術から2年が経ちます。
3週間ほど前から背骨が痛みます。
どちらかというと圧痛で、前屈姿勢をとると特に痛みます。
良くも悪くも痛みに変化はなく、通常であれば病院へかかることを考える程の強い痛みではありません。
田澤先生は
「微小浸潤pT1miの再発リスクはほぼゼロ」
「骨転移は安静時にも痛む」
「骨転移は単純レントゲンで判断できる」と今までの回答の中ご説明されていいらっしゃいますが、
①再発リスクとは遠隔転移再発リスクを意味しますか?
②骨転移は最初から安静時にも痛みますか?
③最初(進行する前)から整形外科の医師はレントゲンで判断はつきますか?
遠隔転移のリスクは低いと思いながらも、田澤先生が「遠隔転移後でも、早く治療を開始した方がQOLは保てる」といったお話をされていたこともあったので、やはり「術後2年 背骨」というのは転移の可能性もあるのかと不安もあり、乳腺外科への定期検診は8月なので、その前に整形外科へ受診した方が良いのかを悩んでいます。
お忙しい中この様な質問で申し訳ありませんが、ご意見をいただけるとありがたいです。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
「①再発リスクとは遠隔転移再発リスクを意味しますか?」
⇒私が「再発リスク」と表現した際は、(局所再発は含まず)全て「遠隔転移再発リスク」のことです。
♯局所再発は、そもそも「手術(マージンなど)と関連」するものであり、「病状とは無関係」と言えるのです。
「②骨転移は最初から安静時にも痛みますか?」
⇒いろいろ例外はあります。(荷重骨なのかどうかなどにもよります)
症状だけで「鑑別することは困難」です。
「③最初(進行する前)から整形外科の医師はレントゲンで判断はつきますか?」
⇒つきます。
「その前に整形外科へ受診した方が良いのかを悩んでいます。」
⇒是非、受診してみてください。
○そもそも骨転移を想像する必要などなく、「純粋に、背部痛」として見てもらえば良いのです。