[管理番号:648]
性別:女性
年齢:45歳
手術後の病理検査結果で、ステージⅡa、3.5㎝、HER2(0)、リンパ転移なし、ホルモン療法が効くタイプで進行度もゆっくりの癌だが、若いことと、しこりが3.5㎝なのでホルモン療法と抗がん剤の併用で治療したほうがよいかもしれないと言われました。
しかし、ホルモン療法が効くタイプなのでオンコタイプDXで詳しく調べて決めるというのはどうかと言われました。なるべくなら抗がん剤はしたくありませんが再発転移のことを考えると悩んでいます。抗がん剤はするべきでしょうか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT2, pN0, pStageⅡA, luminal Aと言う事だと思います。
回答
「抗がん剤はするべきでしょうか?」
⇒しなくてもいいと思います。
Luminal Aであればホルモン療法がターゲット療法として有効です。
35mm径という事で「化学療法の追加」は必要ではないと思います。
リンパ節転移4個以上ならば、「luminal Aでも化学療法」をしてもいいかもしれません。
St.Gallen 2015では60%以上の専門家が「luminal Aで腫瘍径が大きい際に化学療法をすべきではない」としています。
♯90%以上の専門家が「luminal Aでリンパ節転移4個以上なら化学療法をすべき」としています。
○もしも「化学療法を検討する様なハイリスク」と捉えるのなら、化学療法よりは、むしろLH-RHagonistの併用がいいと思います。(SOFT試験の結果より)
質問者様から 【質問2】
今日、術後病理結果の詳しい説明を受けました。
臨床病期Ⅱa、乳房部分切除、浸潤がん(硬癌)、エストロゲン受容体3b、プロゲステロン受容体3b、グレード2、ki67 12.9%、腋高リンパ節転移0/6、脈管浸潤あり(+)、病理学的腫瘍径3.5㎝(18×16×11が腫瘍)、HER2(0)、ルミナールAです。
ホルモン療法が効くタイプたが、浸潤している腫瘍が3.5㎝だということと、脈管浸潤ありといいうことが気になるとのことで、ホルモン療法の上乗せでノルバデックとゾラデックスあるいはFEC100→パクリタキセル8クールを提案されました。経口ならUFTかTS-1とのことですが、経口より点滴の方が効果が高いのでよいのではないかと言われました。リンパ節転移なく、比較的おとなしいタイプの癌にもかかわらず抗がん剤をするべきでしょうか?
オンコタイプDXも勧めてこられましたが、それで決定できるかも不安です。やってみる価値があるのでしょうか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
pT2(35mm), pN0, luminalAですね。
回答
「リンパ節転移なく、比較的おとなしいタイプの癌にもかかわらず抗がん剤をするべきでしょうか?」
⇒不要だと思います。
(私がしばしば引用するSt.Gallen 2015では)専門家の2/3がルミナールAで「腫瘍径では化学療法を上乗せしない」と回答しています。
♯一方で90%以上が「リンパ節転移4個以上では化学療法を上乗せする」と回答しています。
○ルミナールAでの「化学療法の上乗せ」は「リンパ節転移4個以上」と考えていいと思います。
「オンコタイプDXも勧めてこられました」
⇒もしも「それでも迷う」のであれば、「オンコタイプもいい」とは思います。 高額ですが…
質問者様から 【質問3】
何度もすみません。
主治医から、脈管浸潤(+)だったことも抗がん剤をすすめる理由にあげておられます。脈管浸潤があると再発転移の可能性があるからでしょうか?
その理由が抗がん剤をするに値するのでしょうか?
術前のMRIやエコーでは腫瘍が2㎝弱だったので温存手術になりましたが、実際は3.5㎝の浸潤でした。術前に3.5㎝とわかっていたら全摘にしたかもしれません。癌は取りきれたから温存で大丈夫だったと言われましたが、再発が心配です。大きさ的に温存で大丈夫なのでしょうか?
ご回答よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「luminal Aで化学療法をすべきか悩んでいる」方ですね。
回答
「脈管浸潤(+)だったことも抗がん剤をすすめる理由にあげておられます。脈管浸潤があると再発転移の可能性があるからでしょうか?」「その理由が抗がん剤をするに値するのでしょうか?」
⇒私がよく引き合いに出すSt.Gallen 2015では「luminal Aで脈管侵襲を理由に抗がん剤はしない。との意見が2/3を占めています」(腫瘍径とほぼ同数)
私の感覚からも、特に問題にしません。
「大きさ的に温存で大丈夫なのでしょうか?」
⇒「大きさ」と「温存」は関係ありません。
(整容性は別として)結果として「きちんとしたマージン」があれば温存はOKです。
質問者様から 【質問4 抗がん剤をするべきか悩んでいます。】
先日はご回答ありがとうございました。
先日、また抗がん剤とホルモン療法の併用を勧めてこられました。
腫瘍が3.5㎝ということ、癌の顔つきがグレード2であることを再指摘されました。
あるグラフに私のパターンを当てはめたものを作成してくださり、点滴の抗がん剤だと再発率が10%以下、経口の抗がん剤だと再発率が15%以下だから、点滴の抗がん剤+ホルモン療法+放射線治療がよいとのことです。
ホルモン療法が効くタイプの人が、抗がん剤を先にして効果があるのか心配です。
%提示されたら、抗がん剤も併用したほうがいいのではないかと思ってしまいます。
癌の顔つきがグレード2というのも気になります。
以上を踏まえた上で抗がん剤はしなくても大丈夫でしょうか?
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
以前に指摘したように「腫瘍径はルミナールAに化学療法を勧める根拠とはならない」また「核グレード2は中間であり、ルミナールAでも全く珍しくない」のですが…
回答
「以上を踏まえた上で抗がん剤はしなくても大丈夫でしょうか?」
⇒化学療法を勧める根拠が、全く薄弱です。
私が「化学療法を勧める」ことはありません。
私の患者さんであれば、「ホルモン療法」単独としています。
○最終的には、質問者が「決めるべき事」です。
質問者様から 【質問5】
先日、オンコタイプDXの結果が返ってきました。
再発スコア18で、10年間の遠隔再発率がタモキシフェン単独療法だと11%でした。
放射線治療と注射(何かはわかりません)を併用するので再発率は11%よりはもう少し下がるだろうと言われました。
ER 10.3陽性 PR7.2陽性 HER2 8.8陰性
抗がん剤を上乗せしても効果は3%くらいとのことで、抗がん剤はしなくてよいのではないかとのことでした。
抗がん剤なしでホルモン療法がよく効くタイプだとはっきりわかり少しホッとしていますが、遠隔再発率が11%というのは高いほうでしょうか?
ご回答よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
pT2(35mm), pN0, luminalA
以前「腫瘍径」と「グレード2」であることを根拠に担当医から「化学療法を勧められていた」方ですね。
「オンコタイプDX」をされたのですね。
回答
「注射(何かはわかりません)を併用するので再発率は11%よりはもう少し下がるだろう」
⇒LH-RHagonistの事です(リュープリンとゾラデックスがあります)
「遠隔再発率が11%というのは高いほうでしょうか?」
⇒十分な低リスクです。
ホルモン療法で頑張ってください。
質問者様から 【質問6】
いつも丁寧にお答えくださりありがとうございます。
先生より今後の治療方針として
①放射線治療
②タスオミン5年間の服用(途中で閉経後の薬に変更かも)
③ゾラテックス(期間は聞いておりません)
④UFT2年間の服用
のうち、
①と②は必ずしますが③も一緒にしておいたほうがいいかもしれないとのこと。③は必要だと思われますか?
①と②と③は併用しても効能的に大丈夫なのでしょうか?
④も服用したほうが少しは再発率が下がるので併用してもいいかもしれないと言われま したがどう思われますか?副作用も気になります。
よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答6】
こんにちは。田澤です。
担当医はどういても「化学療法を勧めたい」のですね。
何度か回答しましたが、私は「化学療法は不要」と思います。
「LH-RHagonistの併用」もSOFT試験からは不要です。
回答
「ゾラテックス(期間は聞いておりません)は必要だと思われますか?」
⇒SOFT試験からは不要です。
私であれば「勧めない」でしょう。
LH-RHの併用の効果は「35歳以下」「もしくは化学療法後に生理が戻った場合」なのです。
質問者はそのどちらにも該当しません。
「UFT2年間も服用したほうが少しは再発率が下がるので併用してもいいかもしれないと言われましたがどう思われますか?」
⇒不要です。
そもそも、「化学療法は不要」だと思います。
それに、UFTの効果は(前時代の化学療法である)CMFに「非劣性ではない=劣性」であることが明らかなのです。
UFTを行う意味が不明です。
質問者様から 【質問7】
いつも先生のご回答で安堵しております。
明日からタスオミン服用するとこになりました。
9月1日から放射線治療が30回始まります。
① ホルモン療法と放射線治療は同時期に行っても大丈夫ですか?(効果的にも)
② ゾラテックスはするかどうかまだ決定していませんが、もしするなら放射線治療が終わってからでもよいし、とのことでした。が、もし、ホルモン療法と放射線治療とも重なっても大丈夫ですか?
③ タスオミンとゾラテックスの副作用はどのようなものでしょうか?
ご回答よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答7】
こんにちは。田澤です。
ホルモン療法単剤となったのですね。
担当医は「UFTまで提示する程」化学療法推奨していた訳ですから、大変だったと思います。
回答
「ホルモン療法と放射線治療は同時期に行っても大丈夫ですか?(効果的にも)」
⇒全く問題ありません。
「ホルモン療法と放射線治療とも重なっても大丈夫ですか?」
⇒全く問題ありません。
「タスオミンとゾラテックスの副作用はどのようなものでしょうか?」
⇒hot flashです。
あとは「気分が落ち込む」こともあるようです。
また、タスオミン(=タモキシフェン)は「子宮体癌の発生リスク」も副作用です。