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多発右乳ガンとリンパ転移の治療

[管理番号:629]
性別:女性
年齢:41才
こんにちは
はじめまして…いろんなサイトがある中でこちらの良心的なサイトに行き着きました
さっそくの相談ですが…去年の夏に無料乳ガン健診で見つかり術前化学療法を半年間して全摘手術をし現在ホルモン治療を開始した経過に至ります…
乳ガンのタイプですが…
多発右乳ガンでホルモン治療がきく浸潤硬がん…リンパ転移4つ?
術前グレード2a
病理検査結果は
浸潤病巣は消失、乳管内病巣は遺残…断端は陰性、リンパ転移5つ
術後グレード2a
…次の治療は放射線治療です
去年の11月から治療に突っ走ってきて、今ようやく落ち着いてますが
振り返ってみて
この治療で間違っていなかったのか…
今後私みたいなタイプは再発リスクが高いのか…
心配が襲って来ています…
今一番の心配がリンパ転移があること…
フルコースの治療をしても
再発は必ずやってくるんでしょうか…
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 おそらく「リンパ節転移陽性」という理由「どうせ、術後に化学療法やるのだから、術前にやりましょう」的な発想での「術前化学療法」だと思います。
 「ホルモン治療がきく=ルミナールタイプ」で「術前化学療法する事が正しいのか?」
 もともと「多発乳癌」と言う事で「化学療法後に温存を狙える状況では無かった」訳ですから。
というのが、まず私の感想です。
 cT1c?(multiple), cN1⇒ypTis, ypN2でしょうか?

回答

「この治療で間違っていなかったのか」
⇒正直な感想としては、「術前化学療法の適応が正しいのか?」という事です。
 術前化学療法をして「小さくして温存」という目的が無ければ「術後でもいい」訳です。
 質問者も結果として「乳房切除」をしています。(もともと多発だから当然ですが…)
 
「今後私みたいなタイプは再発リスクが高いのか」
⇒術前化学療法で「リンパ節転移に効果が無かった」事は、(ルミナールタイプなのだから)当然です。
 その事で「再発リスクが高い」という判断はできません。
 ルミナールタイプは「大人しい」ので、手術して「ホルモン療法で抑える」のが基本なのですから
 
「今一番の心配がリンパ転移があること」
⇒「リンパ節転移はあくまでも局所病変」です。
 これに対しては「手術+放射線」でOK
 ○全身療法として、(化学療法があまり効果が無かった事はむしろ当然として)ホルモン療法で抑えていけばいいのです。
 
「フルコースの治療をしても再発は必ずやってくるんでしょうか…」
⇒そんな事はありません。
 乳癌は再発しない人の方が圧倒的に多いのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

こんにちは♪
先生の分かり易い説明、ありがとうございました
術前化学療法もなんだったのか…と思いましたが嫌な事早く終わらせて良かった…とポジティブに思わないとやってられませんね…
ところで…先生のお返事の中でCTlc(multiple)cNl→ypTis,ypN2
と書かれてましたが…これは何ですか?
主治医の先生から自分のデータをもらってないのでよく分かりません…
すみません…
あと心配していたリンパ転移の件も
リンパに転移していても再発する人は少ない…と分かり少し落ち着きました…
がしかし…知り合いで乳ガンで亡くなった人がいて油断は出来ません
どうして転移・再発するのでしょうか?
同じステージで長生きする人・しない人がいるのはどうしてなのか…先生はたくさんの患者さんを見ていて何か感じる事はありますか?
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 化学療法前の状態と、(化学療法後の術後の状態)の表記についての記載です。

回答

「cTlc(multiple)cNl」
⇒これは化学療法前の「臨床診断」です。
 質問者の「多発右乳ガンでホルモン治療がきく浸潤硬がん…リンパ転移4つ? 術前グレード2a」という記載から判断しました。
 「リンパ節転移有」で「グレード2a⇒ステージ2Aの誤記載と考え」リンパ節転移があり、ステージ2Aの場合はcT1(腫瘍径≦2cm), cN1(リンパ節転移陽性)つまりcT1, cN1, sStageⅡAしか無いのです。
 Cはclinicalの略で「術前の画像診断での評価」を意味します。
 Multipleは多発という意味です。
 
「→ypTis,ypN2」
⇒これは(化学療法後の術後の)「病理診断」です。
 質問者の「浸潤病巣は消失、乳管内病巣は遺残…断端は陰性、リンパ転移5つ」という記載から判断しました。
 ypTis(浸潤病巣が消失)
 ypN2(リンパ節転移が4-9個を表します)
 ypとは「化学療法後の病理の結果」を意味します。
 
「どうして転移・再発するのでしょうか?」
⇒癌細胞が体に残っていて、
 ①自然に消滅する人
 ②治療により消滅する人
 ③治療をしても「大きくなり」再発する人
 上記の①~③の中で③にあたる人が転移・再発するのです。
 「どのような人が③にあたるのかは正確には(殆ど)解っていない」のが現状です。
 
「同じステージで長生きする人・しない人がいるのはどうしてなのか」
⇒これも勿論解っていない分野です。
 私の経験上では「腫瘍径(浸潤径)」が最も要注意だと感じています。
○乳癌で無くなる方がいらっしゃるのは事実です。ただ「治っています方の方が圧倒的に多い」ことも忘れてはなりません。
 再発した方のブログばかり見るのはお勧めしません。
 やるべき事(ホルモン療法)を「淡々と」行う事をお勧めします。