[管理番号:587]
性別:女性
年齢:30歳
はじめまして。
昨年乳がんが発覚し、手術、抗がん剤治療を終えたばかりです。
数々の副作用に悩まされながら、心や体にムチを打って2週間前に最後の抗がん剤治療を終えました。
今までは、とにかく今あるガン細胞を消し去りたい一心で頑張ってきましたが、辛い治療を終えた今、今度は再発転移の恐怖が襲うようになり、一日中その事ばかり考えています。
そして再発転移された方のブログを見ては、自分の行く末のような気がして涙が止まりません。
ネットを見ても、若年性しかもトリプルネガティブなんて悪いことしか書いておらず、もう絶望感でいっぱいです。
・ステージ1(大きさ1.5㎝)
・家族歴なし
・トリプルネガティブ
・グレード3
・リンパ管侵襲あり
・脈管侵襲なし
治療としては、温存手術後に抗がん剤治療(TAC6回)を行いました。
今後は放射線治療を行う予定です。
質問なのですが、
・トリプルネガティブはステージに関係なく、とにかく再発転移率が高いというのは本当でしょうか?実際、私の再発率はどのぐらいなのでしょうか?
・私が行ってきた治療は妥当なのでしょうか?今更ながら、全摘すれば良かったと後悔しています。また、抗がん剤もネットではFEC→タキソール(またはタキソテール)をされた方がほとんどなので不安です。
主治医からはステージ1なので、そんなに悲観的にならなくても良いと言われています。
また、温存でも全摘でも生存率に変わりは無い、抗がん剤はFECでも構わないがTAC6回はFEC4回+タキサン4回と効果は同等なので、副作用は強いが回数が少なくて済むためオススメするとのことで受けました。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
ネットの時代、「正しい情報だけで無い」事に注意が必要ですし、「嫌な情報ばかりが目立つ」ものです。
回答
「再発転移された方のブログを見ては、自分の行く末のような気がして涙が止まりません」
⇒どうしても「このようなタイプのブログ」が目立ちますが(再発も無く、元気です。なんて当たり前のブログを誰が見ますか?)実際に診療している我々からすると、
再発しない方の方が圧倒的に多いのです。
「若年性しかもトリプルネガティブなんて悪いことしか書いておらず、もう絶望感でいっぱい」
⇒若年性について
今では、「若年だから予後が悪い」という考え方ではなく、「若年性の場合にはBRCA変異(つまり家族性乳癌)の割合が高いから」というように解釈されています。
トリプルネガティブについて
これも、「BRCA変異の群もあれば、予後良好群もあれば、通常の抗がん剤に反応する群もあり」雑多な集団なのです。
本来「トリプルネガティブだから」として一括りにはできないものです。
○決して「若年性、トリプルネガティブ」の全てが予後不良という訳ではないのです。
「トリプルネガティブはステージに関係なく、とにかく再発転移率が高いというのは本当でしょうか?」
⇒ステージに関係無く悪い訳ではありません。
早期であれば、やはり予後はいいのです。
「実際、私の再発率はどのぐらいなのでしょうか?」
⇒pT1c(1.5cm), pN0, pStage1期
申し分なく早期です。
Adjuvant! Onlineというソフトを使うと10年無再発生存率は86%となります。 つまり「10年での再発率は」14%程度となります。
同様の条件でルミナールタイプで行うと、10年無再発生存は89% 10年再発率は11%となります。
○十分早期の場合には、僅か「3%」しか違わない事がわかります。
「私が行ってきた治療は妥当なのでしょうか?今更ながら、全摘すれば良かったと後悔しています。」
⇒妥当です。
温存と全摘では「生命予後に差はありません」
質問者のように腫瘍径1.5cmであれば、「無理なく温存」できたと思われるので決して「間違った選択」ではありません。
「抗がん剤もネットではFEC→タキソール(またはタキソテール)をされた方がほとんどなので不安」
⇒これは主治医のコメント「TAC6回はFEC4回+タキサン4回と効果は同等なので、副作用は強いが回数が少なくて済む」通りです。
TACと「FEC4回⇒タキサン4回の順次投与」は同じ「第3世代レジメン」と言われ同等な効果と考えられています。
◎「副作用が強い事が多い」ので、一般には「アンスラ」と「タキサン」は順次投与(FEC4回⇒タキサン4回など)が推奨されている訳ですが、(副作用さえ克服されば)効果は同等なのです。
「主治医からはステージ1なので、そんなに悲観的にならなくても良い」
⇒主治医の言う通りです。
Adjuvant! Onlineで示した様に、十分な早期では「トリプルネガティブでもルミナールでも数値的に殆ど変わらない」のです。
質問者様から 【質問2 手術後の痛み・今後について】
こんにちは。
お忙しい中、こんなに早く回答して下さり本当に感謝致します。
また、とても分かりやすいご説明でどれも納得致しました。
実際の再発率を知り、自分が思っていた数値より低く気持ちが楽になりました。
(私の中では、再発率40%はあるだろうと思っておりました)
今まで、ネットやブログにいかに振り回されていたのかを思い知りました。
かといって、楽観するわけではなく再発転移しないよう、生活習慣を改善していこうと思っております。
再び質問なのですが、
・手術した側の乳房の中や、脇の下が時々チクチク痛みます。頻度としては、手術直後より今の方が多い気がします。術後5ヶ月ですが、これは普通のことでしょうか?まさか、もう再発か?と不安になることがあります。
何年経っても痛むことはありますか?
・今後検査はどのくらいの頻度で行うべきでしょうか?PETやMRI検査は頻繁にするものではないのでしょうか?
・少しでも再発転移率を減らすために、何かできることはないでしょうか?
食事で気をつけることがありましたら、教えていただきたいです。
民間療法はやはりエビデンスが無いのでやめておいた方がいいですか?
高濃度ビタミンC点滴など気になっているのですが…
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
トリプルネガティブという言葉に踊らされずに、「早期乳癌は予後良好」であることをわかっていただき良かったです。
実際に「早期乳癌はサブタイプにかかわらず」そう簡単には再発しないのです。
回答
「術後5ヶ月ですが、これは普通のことでしょうか?まさか、もう再発か?と不安になることがあります。」「何年経っても痛むことはありますか?」
⇒術後は「個人差はありますが」やはり手術部は痛くなります。
5カ月は当然のこと、2,3年しても「程度の差こそあれ」全く痛くない人はむしろ皆無です。
⇒再発のサインではありません。
「今後検査はどのくらいの頻度で行うべきでしょうか?PETやMRI検査は頻繁にするものではないのでしょうか?」
⇒術後フォローのやり方は人それぞれですが…
私であれば、「3カ月~半年に1回の腫瘍マーカーと局所の診察、超音波」で十分です。
PETは不必要(腫瘍マーカーが動いた際に、念のために行う程度)だし、「乳房MRI」など行う必要はありません。別に「局所再発の高リスクでも何でもない」のです。「診察超音波でOK」です。
「少しでも再発転移率を減らすために、何かできることはないでしょうか?」
⇒適量のイソフラボンがいい事は解っています。
やはり、従来「日本では乳癌が極めて低頻度」だった事を考え合わせると(勿論、食事よりも、晩婚、少子化が影響強いですが…)「味噌汁を含めた和食」でしょう。
乳癌の再発に限らず、「大腸がん」や「成人病」予防にも「和食」がいいと思います。
「民間療法はやはりエビデンスが無いのでやめておいた方がいいですか?高濃度ビタミンC点滴など気になっているのですが」
⇒それらは不要だと思います。
「乳癌の再発予防」にばかり、気をとられて「不健全な生活」となってしまったら「全体として無意味」なのです。
質問者の別の質問はこちら内容が新規のため、新規番号にしています。 |