[管理番号:552]
性別:女性
年齢:51歳
初めてメールさせて頂きます。
*乳がんの種類
硬がん、グレードⅡ、ホルモン受容体(+)、HER2(-)、K:67=5%
*治療:TC療法の後、両胸筋温存乳房切除、腋かリンパ節郭清手術、現在ホルモン療法中(タモキシフェン服用中)
主治医の先生より、【エストロゲン受容体陽性HER2陰性乳がんに対するS-1 術後療法ランダム化比較第Ⅲ相試験】の参加を問われてます。
術前のTC療法で抗がん剤を投与し、副作用の辛さもなく5㎝の腫瘍が1.8㎝までになり抗がん剤に対して悪い印象はありませんが、良い細胞も殺す薬品であるので家族には今以上に体に負担を掛けて欲しくないと言われてます。
しかし、再発を抑えられる可能性があるならば・・・・。と思うと悩みます。
先生はどう思われますか?
また、術後のホルモン療法だけに頼らず自己の免疫力も高めたいのですが何かアドバイスはいただけないでしょうか。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
術前化学療法(TCx4)の後「乳房切除+腋窩郭清」施行されていますね。
本来の術前化学療法の目的である「小さくして温存」は選択しなかったのでしょうか?
回答
「良い細胞も殺す薬品であるので家族には今以上に体に負担を掛けて欲しくないと言われてます。しかし、再発を抑えられる可能性があるならば・・・・。と思うと悩みます。先生はどう思われますか?」
⇒術前化学療法をしているし、「luminal A」でもあるので、ホルモン療法単剤でいいと思います。
この臨床試験に参加するなら「luminal B」がいいと思います。
「術後のホルモン療法だけに頼らず自己の免疫力も高めたいのですが何かアドバイスはいただけないでしょうか。」
⇒「免疫力を高める」専門的な知識は持ち合わせておりません。
言い古されてはいますが、「健康な食事と運動」が一番です。
質問者様から 【質問2】
回答有難うございました。
術前化学療法の目的である「小さくして温存」は選択しなかったのでしょうか?
とコメントいただきましたが、浸潤がんで乳頭の真下に広がっていた場合でも『温存』は可能だったのでしょうか?
また、腋窩リンパ郭清の範囲はレベルⅠ、Ⅱを切除しました。
再発の可能性は高いのでしょうか?
術後の病理診断では、今のところ全てのがん細胞は切除できたと説明を受け
放射線治療も受けなくて良いとの事です。
宜しくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
今回の質問内容は全て、ガイドラインで規定されており、本来「明確に」主治医から理由を話されているべきものです。
その上で、おそらく「担当医」が適応を勘違いしている節があります。
回答
「浸潤がんで乳頭の真下に広がっていた場合でも『温存』は可能だったのでしょうか?」
⇒「乳頭の真下までの拡がり」があっても温存できる場合はあります。(これは実際の拡がりを見ないと結論できない事です)
前回私が、そのように聞いた本当の意味は…
本来、術前化学療法の絶対的適応は『小さくして温存』であり、もしも今回最初から術前化学療法で『小さくなっても乳房切除』という方針ならば
「術前化学療法は不要だった」という意味です。
◎結局「術前化学療法をしても、手術は乳房切除に決まっている」ならば、術前化学療法の意味は無いのです。
その場合は手術を先行して「術後の化学療法」が本来の姿です。
♯ 術前化学療法が「本来の適応」を見失って、安易に「どうせ抗がん剤をやるなら、術前に。とか、術前に抗がん剤を使用すれば効果が解る」という用いられ方をされています。
「また、腋窩リンパ郭清の範囲はレベルⅠ、Ⅱを切除しました。再発の可能性は高いのでしょうか?」
⇒「リンパ節転移の個数など、ステージに関する情報がない」ので「再発の可能性」についてのコメントは困難です。
◎再発の可能性は腋窩の郭清範囲は(化学療法前の時点での)「画像上のリンパ節転移」の評価で判断します。
術前化学療法前の時点で「明らかにリンパ節転移を認める」となった場合や「術中に明らかに転移を認めた場合」にのみ「levelⅡまでの郭清」が必要となります。
(参考までに)
♯日本での臨床試験で(術前評価)「N0-N1」症例での「level1までの郭清」と「level3までの郭清」で『局所再発も生存率にも差が無かった』ことが示されており、『術前N0, N1症例ではレベル1までの郭清で十分』とされています。
「術前及び術中に明らかな腋窩リンパ節転移陽性の場合にはレベル2までの郭清が必要」とされています。
「放射線治療も受けなくて良いとの事」
⇒放射線治療の適応は「化学療法前のリンパ節転移の状況」で判断します。
つまり「術前化学療法前の時点」で腋窩リンパ節転移陽性ならば本来「放射線治療の適応」はあります。
◎リンパ節転移4個以上…推奨度A
○リンパ節転移1~3個…推奨度B
★術前化学療法が劇的に効いたから「放射線治療は不要」という考え方は明らかな誤りです。
『放射線治療の適応はあくまでも、化学療法前の状態で判断する』この事を理解していない医師も多いのです。
質問者様から 【質問3】
手術後退院の際に病室にて主治医の先生から術後の病理検査の報告を口頭とパソコンの画像などで説明頂きましたが、検査報告書のコピーを請求しても良いものなのでしょうか?
手術の結果を把握しておきたくて。
再発のこと、今後5年、10年の生存率はどうなのか不安でいっぱいです。
また、術後のリハビリを週1回外来で受けてます。
リハビリの効果はあり徐々に回復してますが、乳房切除+腋窩郭清をしましたので、手術した腕の下の皮膚がピリピリ痛みます。
この痛みはどれくらいの期間続くのでしょうか?
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
術前化学療法(TCx4)の後「乳房切除+腋窩郭清」施行された方ですね。
回答
「検査報告書のコピーを請求しても良いものなのでしょうか」
⇒当然です。
本来、病理結果を含めた検査結果は「患者さん」に属します。
○請求される前に「お渡しするべき」ものだと認識してます。
「手術した腕の下の皮膚がピリピリ痛みます。この痛みはどれくらいの期間続くのでしょうか?」
⇒これは、腋窩郭清の際に「肋間上腕神経をいじった」症状です。
本当に改善するには半年位必要です。
一方で「肋間上腕神経を切ってしまう」と、痛みが無い代わりに「感覚鈍磨となり、腋の下にボールを挟んでいる感覚」となります。
こうなると「症状の改善は無い」のです。
質問者様から 【質問4 病理結果】
田澤先生 回答ありがとうございます。
病理結果の書面請求をしましたところ
コピーは渡せないとの事でした。
メモを取っても良いが、書面は渡せないと。
どう言う意味なのでしょうか?
渡せないものって何なのでしょうか?
看護師さんを介しての返答でしたので、次回の診察ので
主治医の先生に直接、書面の請求をするつもりです。
しかし、主治医の先生との関係に溝が出来るようなことには
なりたくないと言いたいことを言えないでいるのどうかと思います。
ドクターと患者の関係って難しいですね。
治療方針の説明を聞く度に心のなかで「その治療はドクターの身内の方にもそうされますか?」と、身内だと思って考えてもらえてるのか?と。
主治医の先生には信頼して全てをお任せしたいんですよ。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「病理レポートのコピー」が渡せない?
どこの病院でしょうか?
私がその病院長宛に「そんな事が許されるのか?それは病院としての方針なのか?」確認したいと思いました。(本気で)
回答
「次回の診察ので主治医の先生に直接、書面の請求をするつもり」
⇒是非、そうするべきです。
万が一断るのなら、理由を尋ねてください。「隠す事でもあるのか?」と。
「「その治療はドクターの身内の方にもそうされますか?」と、身内だと思って考えてもらえてるのか?と。主治医の先生には信頼して全てをお任せしたいんですよ。」
⇒このように患者さんに思われるようでは、担当医として失格です。
「ドクターと患者の関係」が保たれないようでは「正しい診療」とは言えません。
質問者様から 【質問5 病理結果 追記】
田澤先生 お忙しいところ何度もすみません。
追記です。
病理結果を主治医の先生に聞く場合何をどう聞けば自分の現状を把握出来ますでしょうか?
自分の病気の事ちゃんと知りたいです。
宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
「病理結果を主治医の先生に聞く場合何をどう聞けば自分の現状を把握出来ますでしょうか?」
⇒レポートのコピーを貰い、全ての「文言」を質問する事です。
その上で、「それが意味する事」が「自分の治療にどう反映されているのか?」として理解することです。
質問者様から 【質問6 診断書】
生命保険会社に提出する書類(診断書)を確認しました。
病理組織学的検査
Invasive ductal carcinoma
意味は 浸潤性乳管がん で間違いないですよね。
TNM分類 T(1c) N(0) M(0)
この意味を教えていただきたいです。
主治医の先生の受診が8月までないので病理検査結果がわかるのはこの資料だけです。
何か、わかる事であれば知りたくて。
宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答6】
こんにちは。田澤です。
了解しました。
回答
「Invasive ductal carcinoma 意味は 浸潤性乳管がん で間違いないですよね。」
⇒その通りです。
「TNM分類」
⇒T:tumor(腫瘍径:乳癌では最大浸潤径)
N:nodes(リンパ節転移の状況)
M:metastasis(遠隔転移の有無)
これらを連記する事で進行度を表す
「T(1c)」
⇒10mm < 腫瘍径(最大浸潤径)≦ 20mm
「N(0)」
⇒リンパ節転移無し
「M(0)」
⇒遠隔転移無し
○pT1c, pN0, pStage1となります。(p:pathological 病理診断による)
質問者様から 【質問7 病理結果】
田澤先生回答有難うございました。
pT1c, pN0, pStage1となります。
これ以上の病理検査の詳細は知らなくてもいいでしょうか?
現在、ホルモン療法をしながら5年間経過観察中です。
自分で出来ることは、食事に気をつけて免疫力を上げて再発を抑制することかと思っています。
また、医療関係に携わる方から『βグルカン』と言う免疫力を上げる健康食品になるそうですが進められてます。
主治医の先生には、『学会で治療に良いと言う結果の出てるものではないのでご自分で判断ください。』と言われてます。
そのコメントについてはその通りだと思います。
ただ、ノルバデックス錠の投薬に悪い影響はないのかが不安です。
抗がん剤との併用にも問題ないと言われましたが結局併用はしませんでした。
やはり、自分の判断で決めるしかないのでしょうか?
田澤先生のご意見をお聞かせください。
宜しくお願いします。
田澤先生から 【回答7】
こんにちは。田澤です。
結局病理レポートを貰えていないのでしょうか?
回答
「これ以上の病理検査の詳細は知らなくてもいいでしょうか?」
⇒病理レポートの請求をするべきだと思います。
「『βグルカン』と言う免疫力を上げる健康食品」「田澤先生のご意見をお聞かせください」
⇒これについては全く知識が無いのでコメントは差し控えます。
以前にも回答しましたが、「健康な食事と運動」が一番です
質問者様から 【質問8 ホルモン療法副作用について】
田澤先生、度々すみません。
術後のホルモン療法中なんですが、副作用に悩まされてます。
更年期障害と同様の副作用が出ると聞いてましたが
ホットフラッシュの現象が辛いです。
仕事中、通勤電車の中突然に頭から汗が流れ出てきます。
気温のせいもあり、最近では全身の毛穴から汗が噴出します。
抗がん剤治療の副作用でウィッグをしてるので更に暑さが辛いです。
以前、主治医の先生に辛いようであれば漢方薬を処方しますよと
言われてますがあまり薬を体に入れたくない気持ちもあり悩んでます。
田澤先生は同様の患者さんにはどう対応されてますでしょうか?
田澤先生から 【回答8】
こんにちは。田澤です。
「閉経前ホルモン療法中のホットフラッシュ」
ある程度は我慢してもらっていますが、「日常生活に支障を来す」場合にはなかなか厄介なものです。
回答
「主治医の先生に辛いようであれば漢方薬を処方しますよ」
⇒試してみるべきだと思います。
「田澤先生は同様の患者さんにはどう対応されてますでしょうか?」
⇒あくまでも再発予防なので、
私は「日常生活に支障をきたす」場合には「休薬を提案」しています。
○術後補助療法は「あくまでも予防」、「日常生活を損なうべきではない」というのが私の考え方です。