[管理番号:367]
性別:女性
年齢:41歳
乳ガン検診で2センチのしこりが見つかりました。
エコーで見て、しこりの周りがゴツゴツしてて、しこりの内部の血流が多く、80%ガンだろう。と言われた。
その場で細胞診。
麻酔せず針でしこり内部から何かとりました。
結果、結合性が強く極性の保たれた乳管上皮細胞より成ります。と書かれてます。
陰性。
この時点でガンではなかったと判断しても大丈夫でしょうか?
次にしこりを調べる為にMRIをとりました。この結果はまだです。
MRIでガンの診断はできないと調べるとでてますが何%かガンの可能性が分かる検査なのでしょうか?
毎日ネットで調べて、不安でたまりません。
しこりはこりこりしてて楕円形に感じます。
指でつまめます。
堅いかどうかは判断難しいが、堅いかなと自分では思います。
ガンの可能性がどのくらいあるのか意見をお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
私からみると「残念な診療」と思います。
本来あるべき「診療を記載した上で、「回答」します。
本来あるべき診療
「エコーで見て、しこりの周りがゴツゴツしてて、しこりの内部の血流が多く、80%ガンだろう。と言われた。その場で細胞診」
⇒この時点で行うべきは「針生検」です。 細胞診ではありません。
「針生検」であれば、『100%確定診断』がつきます。
細胞診を施行した結果、「結合性が強く極性の保たれた乳管上皮細胞より成ります。陰性 」
⇒細胞診での陰性は信用してはいけません。『サンプリングミス(腫瘍の肝心な部位から採取されていないだけ)』という可能性が十分あります。
⇒(結局、今回も)エコー像で「80%癌」とした以上、(細胞診での陰性が信用できないため)「MRI」をやることとなってしまったのです。(MRIは全く不要な検査です)
もし『針生検』をしての「陰性との結果」であれば、100%安心して『(エコー像では癌も疑いましたが)幸い良性でした。線維腺腫のようです。』となり、当然「無駄なMRI」はしなくて済んだ筈なのです。
回答
「この時点でガン ではなかったと判断しても大丈夫でしょうか?」
⇒(細胞診での陰性は)かなり危険です。偽陰性(本当は陽性『癌』なのに陰性と判断してしまう)のリスクがあります。
(無駄なMRIでなく)是非とも「針生検」をして「確定診断してもらう」べきです。
※私は頻繁に「MRIは診断には無駄」と表現していますが、その理由を示します。
MRIはあくまでも「画像診断」にすぎません。(今回超音波で『80%癌でしょう』というのと全く大差はありません)
※結局「針生検」しない限り「永遠に確定診断に到達しない」のです
「MRIでガンの診断はできないと調べるとでてますが、何%かガンの可能性が分かる検査なのでしょうか?」
⇒MRIは「癌の確定診断」はできません。
最初のエコー検査で「癌が疑わしい」と言っているのと全く大差はないのです。
診断には「無用な検査」です。
※おそらく、今回の担当医の意図は「エコーで80%癌が疑われる」しかし、「細胞診では陰性」となっている現状で、もしも「MRIでは良性の可能性が高い」などと結果が出たら「MRIでも良性の可能性があるといってますのでこのまま様子を見ましょう」とでも言うつもりなのだと思います。
⇒かなり危険な話です。
MRIなど「診断の根拠にしてはいけません」
※なぜ、そんな「まだらっこしい事」をしているのでしょうか?「針生検」をすれば、簡単に「確定診断」がつくことを知らないわけは無いのですが…(針生検の技術に自信が無いのかもしれません)
「ガンの可能性がどのくらいあるのか意見をお願いします。」
⇒「41歳で、初めて発見されたしこり」となると、乳癌の可能性を疑わなくてはなりません。(質問者が昨年もエコー検査をして『エコーで去年は正常だった』としたら、可能性はかなり高いです。
※40代では「(20歳代や30歳代と比べると)線維腺腫など良性腫瘍が新たにできる可能性は、かなり低くなります。本当に以前に無かった場合には要注意です」
「エコーで見て、しこりの周りがゴツゴツしてて、しこりの内部の血流が多く、80%ガンだろう。と言われた。」
⇒このような所見であれば、なお「乳癌の疑い」があります。
※「細胞診で陰性」は本来「良性の可能性が高い(確定診断ではありませんが…)となる筈ですが、正直「針生検をしようとせずに、MRIなど行う」担当医の細胞診技術に信頼はおけません。
⇒私の印象では『癌の確率は40%程度』です。
まとめ
とにかく「MRIの結果とは関係なく」針生検で確定診断をしてもらってください。
★「MRIで良性所見がでたから経過観察」などとしては絶対にいけません。
担当医が「どうしても、針生検をしようとしないなら(技術に自信がないのでしょう)」転医してでも「針生検で確定診断」をつけることを強くお勧めします。
※私は、「このQandA以外でも、日常診療の場において(他院でそのような経過観察をしたことで起こった)悲劇」をあまりにも沢山目の当たりにしているのです。
質問者様から 【質問2】
とても分かりやすい回答ありがとうございました。
MRIの結果を聞いてきました。
造影剤がしこりに入っていて、内部の血流が多く血管がしこりに集まってると言われました。
再度エコー画像をみましたが、しこり内部に丸い形が何個も並んでみえました。
この画像はガンのである可能性が高いとのこと。
この状態で、良性の確率はあるのか先生の見解を聞きたいです。
結果、先生の回答にあった針正検をしました。
これでガンかの判断が確実にされるはずです。
2週間後に結果が分かります。
が、まだ自分にガンで無い可能性があるか知りたいです。
宜しくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
結局MRIをした後に「針生検をした」のですね。とりあえず「ほっと」しました。
それにしても「最初から針生検をすれば、済む」ものを。随分「診断に遠回りをしている」と思います。
すみません。
質問者に言っているのでは勿論ありません。
「QandA」をしていると、このような診療があまりにも横行しているのにやや「辟易」してしまいます。
回答
「この状態で、良性の確率はあるのか先生の見解を聞きたいです。」
⇒前回は40%程度と回答しました。
それは、「担当医の細胞診で陰性」であった事。
●「細胞診では(採取技術の問題で)偽陰性が多い」とは言え、「40%=良性より」と考えたのは、そのためでした。
しかし、「造影MRIで癌が疑われる」となれば、(細胞診の件は、担当医の技術不足と考え)「癌の可能性の方が高い」と言わざるを得ません。
何故かというと、「超音波で80%癌が疑われる」画像所見で想像するのは
・癌
・乳腺症(線維化の強いもの)
となりますが、「癌と乳腺症は、MRIでの造影パターンで区別がつき易い」のです。
癌では、「造影ピークが早い(急峻型)」となるのに対し、乳腺症など良性疾患では「ダラダラと造影される(漸増型)」となることが多いのです。
担当医が「造影MRIで癌が疑われる」と言ったのであれば、造影パターンが「漸増型」であったのではないかと想像されます。
結果として乳癌の可能性は80%と思います。
質問者様から 【質問3 乳ガンについて(ADHの治療方法)】
また、質問させて頂きます。
針正検の結果。核異型2点、核分裂像1点合計3。病変1ミリでADHの可能性あり。この所見は何を言っているのか教えて下さい。
先生からの説明なし。総合病院で治療する様にとの事のみ。
後、報告書に、ER→80%腫瘍細胞染色。PgR→60%腫瘍細胞染色。HER2 IHC→0。Ki-67index8%。この%は、何についての数値なのかもお願いします。
多分、専門家に対しての報告書だと思いますが、渡され手元にあり、内容を知りたいです。
ADHだったら、手術後どの様な治療が考えられますか?沢山の質問で申し訳ありません。
ちなみに5本とった細胞のうち1本のみからの報告みたいです。
残りの検体には病変なし。と書かれてました。
ステージ低いって判断にになりますか?宜しくお願いします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「2cmのしこりに対して1mmのADH」
どういう状況なのかは、担当医も良く解らないのでしょう。
私はADHの症例(石灰化に対するステレオガイド下マンモトーム生検がほとんどですが…)を数多く診ているので、状況は手に取るようにわかります。
回答
「核異型2点、核分裂像1点合計3。病変1ミリでADHの可能性あり」
⇒核グレード1の乳癌の所見ですが、「病変の範囲が2mm以下」なのでADH:atypical ductal hyperplasia(異型乳菅過形成)という診断となります。
つまり癌細胞ですが、「病変範囲が狭い」ので「癌の診断ではなく、ADHの診断」なのです。
♯トップページの「ADH」を参照してください。
「ER→80%腫瘍細胞染色。PgR→60%腫瘍細胞染色。HER2 IHC→0。Ki-67index8%。この%は、何についての数値なのかもお願いします。」
⇒ERはエストロゲンレセプター、PgRはプロゲステロンレセプターであり、「ホルモン感受性の細胞が全癌細胞の中の何%をしめるのか?」を示します。
つまりERもPgRも高度陽性となります。(ホルモン療法が良く効くタイプです)
「HER2 IHC 0」
⇒これはHER2蛋白の過剰発現が無い(IHCとは免疫染色の事です)事を示しています。
「Ki67 index 8%」
⇒これは、「癌細胞の中で細胞分裂期にある細胞の割合」を嶋しています。
8%は十分低値であり、ER(80%陽性)、PgR(60%陽性)、Ki67(8%)となると、『luminal A(ホルモン療法が効果的であり、化学療法は効かない)』となります。
「ADHだったら、手術後どの様な治療が考えられますか?」
⇒2cmの腫瘍で「針生検でADH」はただの「針生検でうまく採れていなかっただけ」という可能性が高いです。
手術をすれば、結局「乳癌(非浸潤性乳管癌)」となると思います。
★残念ながら、「2cmの腫瘍がありながらADHの診断とすると」針生検の技術が稚拙であり、「上手く診断ができなかった」だけだと思います。
きちんと再度の針生検(もしくはマンモトーム生検)もしくは「外科的生検」を受ける必要があります。
決して「様子を見ましょう」に惑わされてはいけません。
★★せっかくの「早期発見の機会」を失うことになります。