[管理番号:7281]
性別:女性
年齢:35歳
病名:乳癌
症状:
2018年8月末
右乳房しこり自覚
2018年9月末
〇〇病院受診
右乳癌cT1N0MO Stage1(Invasive ductal carcinoma,Er弱陽性
(10%),PgR-,HER2:-,MIB-
1 20%)の診断
Bt+SLNB(Ax),TE施行
この時点で腫瘍径2.1センチ
2018年11月中旬
手術施行
術前入院時に腫瘍は3センチまで急速に増大あり、術中SLNB転移陽性であり腋窩郭清
(Level3まで)
術後病理結果
-Rt A,3.9×3.3×2.6(最大浸潤径),pleomorphic
carcinoma,NG3,f,Ly1,V1,ER-,PgR-,HER2:1+,margin(-),sn(1/1)+n(3/44)(Level1)
pleomorphic carcinomaに相当する成分が主体であり、辺縁にはER+(40-50%)PgR+(40-
50%)HER2-の乳管癌成分を伴う。
またごく一部に扁平上皮癌への分化がみられ、さらに少数の腫瘍細胞はG-CSF陽性を示し、G-CSF産生腫瘍の可能性がある。
2019年1月中旬
ddAC→ddPTX施行後、PMRT予定だった
2019年3月中旬
ddPTX①開始時に、創縁外側に2センチ程度の硬結を自覚し、abc施行したところ局所再発診断
その後、CT,PET/CT撮影したところ、左鎖上LNに転移を疑う集積(4ミリ程度?)を認め、遠隔再発と考え、
今後は化学療法予定(wPTX±Bev or Eribulinを検討中)
MSI検査結果:陰性 BRCA検査結果待ち(4月上旬結果通知予定)
左鎖上の集積以外の多臓器に転移は見られません。
■質問
①右脇創縁外側のしこりは局所再発とのことですが、
全摘後の局所再発ということは、乳腺の取り残しということでしょうか?
もともとあった腫瘍が急速に増大したと考えるほうが自然でしょうか?
リンパ節レベル3まで郭清しているため、理解しかねます。
②左鎖上リンパに転移を疑う集積(PETの結果)
これは右腋窩リンパ節に残っていた目に見えないがん細胞が、リンパ管に乗って転移したということでしょうか?
③治療方針について
上記を総合的に考えて、
右脇創縁外側のしこりと左鎖上リンパ転移部の局所治療(手術/放射線)を実施するメリットはありますか?
それにより根治の可能性はないのかなと。
(せっかく現時点で臓器/骨への転移が見られないのに、今見えている腫瘍をとらないと、
そこから他臓器への転移が進むのではないかと、危惧/想像してしまいます。)
主治医からは
・局所治療はあまり意味がなく、全身治療を優先。
・全身治療後に腫瘍が消えたとしても、局所治療のメリットはない
と言われています。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
主治医のコメントに(私は)興味がないので、私の回答に対して「でも、主治医が…」的な再質問は厳にお断りします。
「①右脇創縁外側のしこりは局所再発とのことですが、全摘後の局所再発ということは、乳腺の取り残しということでしょうか?」
→これだけ早い時期ということからも、そう思います。
針生検のルートがどうなのか、解りませんが、刺入部に近いのであればその可能性(肺生検のルートに生き残った細胞が残った)があります。
「②左鎖上リンパに転移を疑う集積(PETの結果) これは右腋窩リンパ節に残っていた目に見えないがん細胞が、リンパ管に乗って転移したということでしょうか?」
→対側鎖骨上の場合には、理解することが難しいですが…
PETで他に無いのであれば、そのルート(右腋窩→左鎖骨上)のリンパ流があったのでしょう。
「③治療方針について 上記を総合的に考えて、 右脇創縁外側のしこりと左鎖上リンパ転移部の局所治療(手術/放射線)を実施するメリットはありますか?」
→局所再発なのだから、「メリット」云々ではなく「局所治療」はきちんとすべき。
(少なくとも)今現在、「そこだけ」がターゲットなのだから、「創縁外側の腫瘍切除+鎖骨上リンパ節への照射」を優先すべきです。(少なくともddECもすでに入っているのだから)
それが終わったら、bevacizumab + paclitaxelですね。(taxaneをスキップしてeriblinにすべき理由がありません)
「それにより根治の可能性はないのかなと。」
→その通り。
(実際に)そうならない可能性は否定しませんが…
(根治の)可能性があるのに、「最初から、それを諦める」必要はありません。
質問者様から 【質問2 原発部と反対側の鎖上リンパ転移】
性別:女性
年齢:35歳
病名:乳癌
症状:
[管理番号:7281]について追加質問です。
治療方針の決定まで時間がないため、1週間開けずに追加質問することをお許しください。
根治の可能性がゼロではないとのご回答を頂き、希望を持てました。
田澤先生のご回答通り、
速やかに創縁外側の腫瘍切除+鎖骨上リンパ節への照射 → その後bevacizumab + paclitaxelが最良の治療方針と理解しました。
ただ、現時点で主治医から「手術は適応外」と言われており、
江戸川病院に転院してすぐ手術というのも、患者さんが大勢いらっしゃる中で現実的ではない、と想像してます。
(こうしているうちにも、創縁外側の腫瘍が大きくなっていることを自覚しています)
上記前提で、下記の治療の流れを検討していますが、田澤先生のご意見をお聞かせください。
まずは現在の病院にて
局所放射線(創縁外側腫瘍と鎖骨上リンパ節の両方)+化学療法(bevacizumab +
paclitaxel)
その間に江戸川病院で手術予約し、田澤先生に手術していただく
・この場合、おおむねいつ頃に手術可能でしょうか?
・放射線及び化学療法は手術の何日前まで可能でしょうか?
・手術後、化学療法の再開まではどれぐらい日をあける必要がありますか?
(術後すぐの化学療法は、創部の治りが悪くなると伺いました)
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
このように「局所再発」→「主治医から手術を断られる」→「当院で手術」という流れは決して稀ではありません。(実際のところ、週10件の手術のうち、1例は「そのようなケース」です)
お陰様?で(他の医師では)決して経験できないような数の「局所再発(腋窩鎖骨下リンパ節 / 乳腺局所)の手術」を日常的にしています。
そのような経験から言わせてもらうと治療の順序としては
(当院 or 前医)で化学療法 → (当院で)手術 → 放射線(当院でtomotherapyを希望する人もいるし、地元で希望する人もいます)
「まずは現在の病院にて 局所放射線(創縁外側腫瘍と鎖骨上リンパ節の両方)+化学療法(bevacizumab + paclitaxel) その間に江戸川病院で手術予約し、田澤先生に手術していただく」
→放射線と化学療法は同時併用はできません。
通常であれば 化学療法 → 手術 → 放射線 となります。
ただし抗がん剤(bevacizumab + paclitaxel)が全く効かない場合には、(ダラダラと抗がん剤を継続して腫瘍増大が顕著となる前に)放射線治療に切り替える必要があります。
「・この場合、おおむねいつ頃に手術可能でしょうか?」
→1か月が目安です。
「・放射線及び化学療法は手術の何日前まで可能でしょうか?」
→(抗がん剤の場合には)レジメンにもよりますが、bevacizumab + paclitaxelの場合には2週間程度となります。
★放射線は原則として術後です。
「・手術後、化学療法の再開まではどれぐらい日をあける必要がありますか?」
→(当院では)翌週から行っています。
「 (術後すぐの化学療法は、創部の治りが悪くなると伺いました)」
→誤り。
影響ありません。(実際は手術翌日でも問題ありません。)