Site Overlay

術前化学療法

[管理番号:7031]
性別:女性
年齢:41歳
病名:乳癌
症状:

初めまして。
日々お忙しい診療の中、このような場を設けて頂ける事を感謝致します。

今年11月に右乳房の浸潤性乳管癌と診断されました。

(検査データ)
Her2 2+・遺伝子増幅あり
ER,PgR陽性
Ki67 20-30%

MRIによる腫瘍径 乳房外側2.6cm 乳房内側1.6cm
CT上遠隔転移はみられない。

エコー上気になるリンパはみられない。

stageⅡa-b

担当医師からは、乳房内に腫瘍の拡がりがある事、腫瘍サイズも2cmを超えている事から、術前化学療法をした上で手術をしましょう。
どちらにしても全摘です。
との治療方針を提示されました。
勧める理由として、腫瘍が消える場合もある、そうすれば術後の抗癌剤を減薬できる可能性がある。

サイズが小さくなると手術しやすくなる。

抗癌剤の効果がわかる、と言う事でした。

癌と診断されてから、先生のHPや乳癌学会等の標準治療等を拝読し手術先行ではいけないのかと疑問を持ちました。
何より私は胸を触れば触れる癌を一刻も早く取り除きたいです。

質問①手術先行を希望してよいか。
質問②手術先行すればその後の抗癌剤治療までに1ヶ月空ける必要があり、その期間の無治療を危惧すると言われたが、その心配は必要であるのか?
質問③どちらにしても全摘と言われているが、全摘をするのに腫瘍の大小で手術の易操作性が左右されるのでしょうか?
質問④先生に手術をお願いする場合、最短でいつになりますでしょうか?

以上、よろしくお願い致します。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「どちらにしても全摘です。」であれば、術前抗がん剤をする理由が全くありません。担当医が並べた(どうでもいい)理由など私には興味がありません。

「質問①手術先行を希望してよいか。」
→当然!
 全摘するのであれば術前抗がん剤を選択する理由は全くありません。

「②手術先行すればその後の抗癌剤治療までに1ヶ月空ける必要があり、その期間の無治療を危惧」
→そもそも、「1か月」空ける必要がありません。

 当院であれば(希望があれば)「手術翌週」から抗がん剤はしています。
 
 ★申し訳ありませんが…
  そもそも、「術後1か月も抗がん剤を空ける必要がある=手術精度が悪い(術後の回復が悪いから1か月も空けなくてはならない」ことを露呈していますよ。

「全摘をするのに腫瘍の大小で手術の易操作性が左右されるのでしょうか?」
→手術手技の精度の問題があるのでしょうが…
 本来、まったく関係ありません。

「質問④先生に手術をお願いする場合、最短でいつになりますでしょうか?」
→1か月半が目安です。

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

トリプルポジティブ 術後化学療法
性別:女性
年齢:41歳
病名:
症状:

田澤先生、前回はご丁寧に回答頂きありがとうございました。

お陰様で12月末に、右乳房全摘術+センチネルリンパ節生検(術中迅速では陰性)を受ける事ができました。

度々申し訳ありませんが、今後の治療に関し相談させて下さい。

術後病理診断結果がまだ出ていませんが…
担当医からは、今後の化学療法は結果に左右されない、もう使用薬剤も決まっているとの事です。

今後の治療は以下の通りです。

AC療法→THP→HP

質問①非アンスラサイクリンの選択の余地はないのでしょうか?

質問②早期ではない、と言う事でしょうか?

質問③抗Her2療法に関して情報が乏しく、標準、また選択肢はございますか。

質問④術後の病理診断がなく申し訳ありませんが、田澤先生であればどの薬剤を選択されますでしょうか?

よろしくお願い致します。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「AC療法→THP→HP」
→?

 非アンスラサイクリンレジメンも考慮すべきでしょう。(病理結果を確認の上)
 更にP:pertuzumabが提案されていますが…

 確かに、pertuzumabの術後補助療法は保険適応上問題ありませんが、「リンパ節転移有の場合により有効」であり、全例に用いるのではなく「リンパ節転移あり」で使われるケースが多いと思います。(全例でやっていたら医療経済的にも問題があるように思います)
 質問者は「センチネルリンパ節生検で陰性」なのだから「pertuzumabありき」は如何なものか?(保険適応内だから患者さんからの希望があれば、勿論いいでしょうが、最初から「強制的に」提案するのは…)

「質問①非アンスラサイクリンの選択の余地はないのでしょうか?」
→あります。

「質問②早期ではない、と言う事でしょうか?」
→何を根拠に??(病理で確認しましょう)

「質問③抗Her2療法に関して情報が乏しく、標準、また選択肢はございますか。」
→標準はアンスラタキサン+trastuzumab
 早期では非アンスラサイクリンレジメン

 上記に「リンパ節転移陽性ならpertuzumabを追加」となると思います。

「質問④術後の病理診断がなく申し訳ありませんが、田澤先生であればどの薬剤を選択されますでしょうか?」
→上記(病理結果を確認しましょう)

 
 

 

質問者様から 【質問3 追加腋窩郭清】

性別:女性
年齢:41歳
病名:乳癌
症状:

田澤先生
いつも丁寧なご回答を頂き、ありがとうございます。

病理結果が出たので、また質問させて下さい。

●病理結果●
・浸潤性乳管癌、乳頭腺管癌を認めます。

H.E.標本上の最大径は約1.2cmです。

histological grade1です。

Er:3b,PgR:3b,HER2:2+,ki67約10%です。
切断断端は陰性。

・浸潤性乳管癌、乳頭腺管癌>硬癌を認めます。
H.E.標本上の最大径は約3.2cmです。
histological grade2です。

ki67:約20%です。
明らかな断端陽性所見
は認めませんが、腫瘍と胸壁側断端は近接しています。

・非浸潤性小葉癌を認めます。
E-cadherinn陰性。
切断断端は陰性です。

・リンパ節に悪性所見

今回の受診で抗がん剤の開始日が決められると思っていただけに、追加手術は想定外で病理の結果も思わしくなく気持ちが前を向きません…。

●質問1
術前エコーでは明らかな腫れはなかった
ようですが、病理で転移が認められた場
合、追加腋窩郭清は必要でしょうか?
●質問2
腫瘍と胸壁側断端は近接しているとの所
見が不安です。
全摘していますが、そこへ
の先生はどうアプローチされますか?
●質問3
思いの外、腫瘍サイズが大きかった事、
多発していて拡がりがあるように感じる
のですが、ステージはⅡbなのでしょう
か?
●質問4
どこまでが早期で、その先はどう表現さ
れるのでしょうか?
また、lowriskとhighriskの基準がわ
かりません。
ご教授頂けないでしょうか。

よろしくお願い致します。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

申し訳ありませんが…
「センチネルリンパ節生検の術中迅速陰性だった」のですよね?
それでいて(手術病理で)「リンパ節転移陽性」ということですね?

勿論、(術中迅速診断は、あくまでも「仮診断」だから)術後の病理で「陰性→陽性」となる場合はあります。
★ただし、常識的に考えれば「術中迅速で陰性」であれば、(もしも陽性であったとしても)「せいぜい、微小転移(≦2mm)」となるでしょう。

今回のメール内容には「リンパ節に悪性所見」とだけありますが…
 肉眼的転移(2mm<)なのか、微小転移(≦2mm)なのか確認しましょう。 「●質問1  術前エコーでは明らかな腫れはなかったようですが、病理で転移が認められた場 合、追加腋窩郭清は必要でしょうか?」
→この質問自体、まったくナンセンス!

 センチネルリンパ節生検の結果でどうするのか? は「術後」ではなく「術前」に取り決めておかなくてはいけないのです。
 『今週のコラム 163回目 乳癌診療の基本2 腋窩リンパ節の取り扱い 「そりゃ、もう大騒ぎさ」』をご参照してください。

「●質問2  腫瘍と胸壁側断端は近接しているとの所見が不安です。 全摘していますが、そこへの先生はどうアプローチされますか?」
→大胸筋浸潤していない限り(そのような記載はないようです)「術者が自信をもっていれば」全く問題ありません。
 『今週のコラム 86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです』をご参照ください。

「●質問3  思いの外、腫瘍サイズが大きかった事、多発していて拡がりがあるように感じるのですが、ステージはⅡbなのでしょうか?」
→物事はシンプルに考えなくてはいけません。

 ステージの定義に「多発は無関係」です。
 あくまでも「(沢山あったとしても、その中で)最大浸潤径」と「リンパ節転移の個数」で決まるのです。(今回の記載内容からは不明、担当医に聞きましょう)

「●質問4 どこまでが早期で、その先はどう表現さ れるのでしょうか?」
→決まった基準はありません。
 担当医の主観となります。

 
 

 

質問者様から 【質問4 追加腋窩郭清】

性別:女性
年齢:41歳
病名:
症状:

田澤先生

いつも丁寧なご回答を頂きありがとうございます。

一週間経たずの質問になりますが、早急に判断をしなくてはならない状況にありますのでどうかご教授頂けないでしょうか。

SNB術中迅速病理で陰性で術後病理で悪性所見があり、追加腋窩郭清術が必要かもしれないと質問させて頂きました。

リンパ節転移の程度は、3~5mmと微小転移ではありませんでした。

リンパ郭清は迷うところです。
Her2陽性で悪性度が高い癌で、これから手術するとなると抗がん剤投与が遅れて、全身に散らばってあるであろう癌細胞も心配で…と言われ何に向かい治療に臨めばよいかわからなくなりました。

田澤先生に「ナンセンス」と言われてしまうかもしれませんが、質問させて下さい。

●質問1
リンパ節転移(1個)が3~5mmであれば、リンパ郭清するべきか。

●質問2
リンパ郭清した場合、放射線は必要ですか?
照射が必要であれば範囲を教えてください。

●質問3
腫瘍径3.2cm、リンパ節転移、Her2陽性は悪性度が高く、予後不良となるのでしょうか。

●質問4
術後補助療法は遅れた分、転移再発に影響するのでしょうか。

よろしくお願い致します。

 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。

「●質問1 リンパ節転移(1個)が3~5mmであれば、リンパ郭清するべきか。」
→前回、回答したように…

 それは「術前に」主治医と取り決めておくべきことです。
 (それが、「どういう取り決めとなっていたのか?」は私には知る由がありませんが)今更、それを変更すべきではありません。

「●質問2 リンパ郭清した場合、放射線は必要ですか?照射が必要であれば範囲を教えてください。」
→不要
 

「●質問3 腫瘍径3.2cm、リンパ節転移、Her2陽性は悪性度が高く、予後不良となるのでしょうか。」
→ステージ2Bだから、(抗HER2療法を行えば)再発率は10%程度となるでしょう。

「●質問4 術後補助療法は遅れた分、転移再発に影響するのでしょうか。」
→しません。
 ご安心を。