[管理番号:6590]
性別:女性
年齢:51歳
突然のメール失礼します。
自分の症状についていろいろ探していたところこちらのサイトにたどり着きました。
是非ともご教示頂きたくよろしくお願いします。
私の両乳房内にはまるで葡萄の房が入っているかの如く嚢胞が多発している為、地元の病院で長年年一回定期検診をしてきました。
(検査方法:最初はエコーとマンモでしたが現在はMRIのみ←見つけやすいとのこと、年数回痛みを感じた際嚢胞内の水を抜いてもらっている)
今回MRIにて嚢胞内に1センチ弱の腫瘍が見つかりました(昨年にはなかった)。
そこで紹介状とCDROMを
持参し大学病院へ行き、そこでバネ式の針生検を3箇所ほどして現在結果待ちです。
いずれにせよ悪性(非浸潤癌)なら勿論のこと、良性(乳頭腫)でもその嚢胞は摘出することは決まっています。
先生に伺いたいのは処置方法です。
現在以下の方法が話されております。
①該当嚢胞のみ部分切除
②乳頭乳輪温存皮下乳腺切除
場合によっては同時再建
③両胸とも嚢胞多発しているので乳
頭乳輪温存皮下乳腺切除
再建なし
①②良性ならセンチネル&放射線なし、悪性ならセンチネルあり、放射線なしとのこと。
③はこんな多発しているならいっそのこと両胸の乳腺を切除するのもどうかという提案でした。
たしかにこの嚢胞を切除したところで新たな嚢胞が次々に現れるという状況、また今後残っている嚢胞についても同様な症状がおこってしまう可能性は捨てきれず人よりその確率は数が多い分高く、ずっと検診をし続けて場合によっては複数回手術になってしまうのかもという不安もあります。
そこで教えて頂きたいのですが
a)嚢胞は年齢と共に減っていくものなのでしょうか。
(数年前に比べ嚢胞内の水を抜いてもりう回数が減ってきております)
b)また減るなら代わりに今回のような症状は増加傾向になるのでしようか。
c)先生ならこのような症例の場合どのような処置なさいますか?
突然で申し訳ございませんが何卒よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
メール内容を読みました。
癌の診断がついていない状況で「乳腺全摘や再建など」を提案すること自体、大きな誤りです。
もう一つ指摘しなくてはいけないのは「嚢胞と嚢胞内腫瘍は全くの別物」という事実です。
今回のケースで許されるのは「外科的生検(excisional biopsy)」もしくは「乳腺部分切除(外科的生検+マージンをつける)」だけです。
♯excisional biopsyや乳腺部分切除については、 『今週のコラム 134回目 これでADHならば「ADHは確定診断」してもいいのです。(FEAも同様)』をご参照のこ
と
「たしかにこの嚢胞を切除したところで新たな嚢胞が次々に現れるという状況、また今後残っている嚢胞についても同様な症状がおこってしまう可能性は捨てきれず」
→全くの勘違いです。
嚢胞と嚢胞内腫瘍は全く異なります。
嚢胞内腫瘍は嚢胞の中に腫瘍ができるのではなく、「乳管の壁にできた腫瘍が、その乳管を閉塞して(結果として)嚢胞を形成する」ものなのです。『今週のコラム 51回目 嚢胞内腫瘍 これは嚢胞ではありません』
☆「嚢胞が嚢胞内腫瘍になる」などは絶対にないのです。
「人よりその確率は数が多い分高く、ずっと検診をし続けて場合によっては複数回手術になってしまうのかもという不安」
→全く「誤った発想」です。
そう思わせている診療に問題がありそうです。
「a)嚢胞は年齢と共に減っていくものなのでしょうか。」
→そもそも…
物事を「black box」に入れてしまわないようにしましょう。
嚢胞とは何か?
(特に更年期に起こるホルモンの変化で)乳腺全体に線維化が起こり、正常乳管が(それで締め付けられ)閉塞し、分泌液が貯留したものです。
つまり、閉経すれば、自然に(乳管の閉塞が解除され)分泌液が流れて(それにより)嚢胞は自然と減少していきます。
「また減るなら代わりに今回のような症状は増加傾向になるのでしようか。」
→全く無関係。
そのような勘違いを患者さんにさせること自体、その診療に問題がありそうです。
「c)先生ならこのような症例の場合どのような処置なさいますか?」
→嚢胞内腫瘍は外科的生検(excisional biopsy)します。
「癌であってもいいように、大きめにとってほしい」と(患者さんから)希望されれば、「マージンをつけて切除(乳腺部分切除)」を行います。