[管理番号:5488]
性別:女性
年齢:46才
初めまして。
どうぞよろしくお願いします。
今年の1月に左胸に2.5センチの癌が見つかり、
リンパ節にも3こ転移があるとの事で進行性だから術前化学療法FEC4回TC4回の予定でしたがFEC2回投薬した時点で効いてないと判断してTC6回計8クール半年間治療しました。
7月に全摘リンパ節郭清、広背筋皮弁法で同時再建10時間に及ぶオペをしました。
術後の病理結果で抗がん剤があまり効いてない1aの判定でリンパ節転移7こと言うでホルモン療法に放射線治療が追加になりました。
治療前はしこりの大きさ2.5だったのが1.5に小さくなっているから効いてると言うことではないのでしょうか?
そもそも最初から全摘と決まっていたのに何故術前の抗がん剤がだったのか?
効いてない状態で7ヶ月近く放置されてた状態だからリンパ節転移の数が増えてしまったのかな?
全身に転移してしまっているのでは…と不安になり主治医に相談したところTS-1を1年間予防で飲んでみますか?と言われました。
点滴が効かないのに飲み薬で効くのでしょうか?気休め程度でも飲んだ方が良いのでしょうか?もし効果がない場合1年も免疫が低い状態で過ごすことになるのでリスクが高いですよね?
それを考えたらホルモン剤が効くタイプだからホルモン剤だけで大丈夫なのでしょうか?
私の場合ki67が90%なのにグレードい1と言うことがあるのでしようか?ぐれーど1だから少しは安心したいのですがやはりリンパ節転移が多いから再発率が高いのでしょうか?
主治医には再発率30%~40%と言われました。
田澤先生のお見立てはどれくらいでしょうか?それからオペ10時間はかなりの身体の負担と考えますがその間に進行したとは考えられますか?
病理診断浸潤癌充実腺管癌、大きさ1.5センチ、脈管侵襲ly3.v1乳管内進展+リンパ節転移7?17断端-核異型度1、ホルモン感受性ER5+2.PgR5+3HER2score1+.ki67-90%です。
長文ですいません。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
メールを読んで、(純粋に)手術時間10時間というのに大変驚きました。
当院では「乳房切除腋窩郭清+広背筋皮弁」の手術予定時間は「5時間30分」で申し込んでいます。(実際の麻酔記録を見てみたら「手術時間は5時間8分」でした)
手術時間が長い事は「お互い(術者側と勿論患者さん側)に非常な負担」となります。
大変でしたね。(良く頑張りました)
♯術前抗がん剤を何のためにやったのか不明(リンパ節転移3個だから行うなど、全く理由になりません)ですが、今回の質問内容とは無関係なので、ここにはこれ以上のコメントはしません。
「術後の病理結果で抗がん剤があまり効いてない1aの判定でリンパ節転移7こと言うでホルモン療法に放射線治療が追加になりました。」
⇒これは本来誤った解釈です。
放射線の適応は「抗癌剤の効果」ではなく、あくまでも「化学療法前の状況(画像上、リンパ節転移が4個以上あるのか)」で決まるのです。
♯質問者の場合は(術前画像診断で3個とはいえ)術後病理で7個なのだから、当然(抗癌剤の効果があるとかないとかではなく)「全摘後の放射線照射の適応」となります。
「治療前はしこりの大きさ2.5だったのが1.5に小さくなっているから効いてると言うことではないのでしょうか?」
⇒少しは効いている様です。
Grade1aは無効(Grade 0)ではありません。
あくまでも「軽度の効果(があった)」のです。(ただ、劇的ではないということです)
「化学療法効果」とは「顕微鏡でのダメージの程度」であり、肉眼的(画像上の)評価ではないので乖離はそもそも存在します。
「そもそも最初から全摘と決まっていたのに何故術前の抗がん剤がだったのか?」
⇒これこそ、「最大の問題点」だと思います。
「効いてない状態で7ヶ月近く放置されてた状態だからリンパ節転移の数が増えてしまったのかな?」
⇒その可能性はあります。
だから「安易に術前抗がん剤をしてはいけない」のです。
☆本来術前抗癌剤の適応は「小さくして温存」だけなのです。
「全身に転移してしまっているのでは…」
⇒それは大丈夫でしょう。
「TS-1を1年間予防で飲んでみますか?」
⇒とんでもない!!
完全な「適応外」診療です。
その担当医には「適応外の認識」があるのですか??
是非、『今週のコラム76回目 「手術不能乳癌と転移再発乳癌」は添付文章では「手術不能又は再発乳癌」と一括りにされていることからも解るように、『手術不能乳癌と転移再発乳癌の扱いは一緒』なのです。』をご一読ください。
そして、実際にネットでTS-1の「添付文章」を見てください。
「気休め程度でも飲んだ方が良いのでしょうか?」
⇒絶対に駄目です。(適応外診療です)
「ホルモン剤が効くタイプだからホルモン剤だけで大丈夫なのでしょうか?」
⇒術前抗がん剤しているのだから、当然術後は「ホルモン療法単独」です。
「私の場合ki67が90%なのにグレードい1と言うことがあるのでしようか?」
⇒直接の関係は無いとはいえ・
確かに不自然な気はします。
「Ki67=90%」とは癌細胞の90%が細胞分裂期にある。ということだし、核グレードの中身の記載がありませんが、
グレード1ということは以下の3パターンのみとなります。
1.核異型(核の顔つき)が1点 核分裂(実際に核分裂をしている細胞の評価)が1点
2.核異型が1点で核分裂が2点
3.核異型が2点で核分裂が1点
しかし、上記3パターンいずれにしても「核分裂は2点以下(10視野で10個以下)」となります。
☆つまり「90%の癌細胞が細胞分裂期にある」のに、「10視野で核分裂が10個以下」ということになります。
「リンパ節転移が多いから再発率が高いのでしょうか?主治医には再発率30%~40%と言われました。田澤先生のお見立てはどれくらいでしょうか?」
⇒その10%位は(再発率は)低いと思います。
「それからオペ10時間はかなりの身体の負担と考えますがその間に進行したとは考えられますか?」
⇒確かに、長いですが…
「その間に進行」は、さすがに考え過ぎです。