[管理番号:2740]
性別:女性
年齢:41才
田澤先生はじめまして。
いつもこちらで勉強させていただいております。
今回どうしても自分で判断できないことがあり、質問させていただきます。
4月上旬に右胸の全摘手術を受け、昨日病理の結果が出ました。
invasive carcinoma of the right breast,total mastectomy.
Rt. B area 1.2×1.2cm 2b3 f(++),margin negative,
1y0 v0,n(0/2=0/2+0/0).
ER8=5+3,PGR6=3+3,HER2:0,ki67:8%程度
主病変:
右B area,Bt+SNB→fr(-)→Ax(-)
断片(-)
腫瘍径:3.8×1.9cm(×4.2程度)浸潤径(#7-8):1.2×1.2 cm, multiple.
組織型(規約17th):2b3,invasve lobular carcinoma with LCIS and DCIS comconent.
uicc 7th:pT1c,pN0
NA:2,MC:1→NG1
TF:3→HG:II(6)
組織学波及度:f(++),脈管侵襲:1y0(HE),v0(HE)
in situ(+):lobular,cribriform,flat.
EIC(-),comedo necrosis(-),石灰化(-),TIL:0(#8)
背景乳腺症(+)
コメント:
多中心性の発育を呈し、E-cadherin(-),34βE12(+)を示す浸潤性小葉癌の所見。
個細胞性~索状の増生パターン、targetoid pattern
やindian file patternが見られる。
乳管内病変を多数認め、大半はLCISの所見を呈するが一部にE-cadherin(+)のDCISの所見を呈する成分が認められる。
以上。
主治医はフェアストンとリュープリンを勧めてくれていますが、
田澤先生ならどういう治療を勧めてくれますか?
(リュープリンは本当にしたほうが良いのでしょうか?)
また経口薬治療だけの再発率とリュープリンもした場合の再発率を教えていただけますでしょうか?
また、とりあえず経口薬をはじめて副作用の様子をみてから、
リュープリンを始めるのは駄目でしょうか?
次の診察で、治療を決定しなくてはいけません。
効果があるならやりたいですが、
副作用も心配ですし経済的にも不要な治療は受けたくないと思っています。
田澤先生のご意見をお聞かせいただけますと幸いです。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1c(12mm), pN0, luminalA(Ki67=8%), NG1
典型的な大人しい小葉癌です。
ただ、(これまた、典型的な小葉癌にみられる)「多中心性」であり、「全摘を選択」して正解でした。
「主治医はフェアストンとリュープリンを勧めてくれています」
⇒そもそも何故「タモキシフェンではなく」フェアストンなのでしょうか?
もしかして「CYP2D6」を行っていますか?
(10. 10)などホモタイプなのでしょうか?
○担当医が「LH-RHagonistを勧めている」理由は質問者が「41歳」というところでしょうか?
それに「小葉癌特有の拡がり」を気にしているのでしょうか?
「田澤先生ならどういう治療を勧めてくれますか?
(リュープリンは本当にしたほうが良いのでしょうか?)」
⇒タモキシフェン単剤です。
LH-RHagonistは使用しません。
このQandAの場でも、度々登場していますが…
①35歳未満 SOFT試験より
②ステージⅡ以上 ASCOの2016ガイドラインより
質問者は、これら①②ともに当て嵌まりません。
「また経口薬治療だけの再発率と
リュープリンもした場合の再発率を教えていただけますでしょうか?」
⇒タモキシフェンのみ 11%です。
♯ LH-RHagonistの併用での「上乗せは不明」です。
「また、とりあえず経口薬を、
はじめて副作用の様子をみてからリュープリンを始めるのは駄目でしょうか?」
⇒そう言う方法もあります。
「田澤先生のご意見をお聞かせいただけますと幸いです。」
⇒タモキシフェン単剤です。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、お返事ありがとうございます。
フェアストンに関して、
私の状況は先生のご質問のような、特別なものではありません。
主治医も「ノルバデックスと効果は変わらないけど、どっちかと言えば
フェアストンがオススメ」という感じなので、ノルバデックスにしたいと伝えます。
一番悩んでいるLH-RHagonistに関しては、
私もこちらのQ&Aで勉強していたので
「適用にならないのでは?」と思い主治医に質問したところ
薦める理由を年齢(41)としつつ、また私の病状を「ギリギリステージ1」
という表現をされていました。
質問1
前回説明を補足しますと私は小葉癌(pT1c,pN0)で
エコーで診てもらうと1cm前後のしこりが3つ串だんごのように並んでいて、
少し離れたところに5mmくらいのものがありました。
(病理のコメントでは小葉癌とLCIS,DCISが多数混雑とのことですが、
これら4つのしこりの全てが小葉癌で+LCIS,DCISなのか、
小葉癌1つ+3つのLCIS,DCISなのかわかりません)
串だんご状の並んだしこりが繋がって見えていたからか
術前の診断ではステージ2でした。
そういった(複数のしこり、拡がり有り)状況を考慮して、
病理結果はステージ1であってもリュープリンを薦める判断は妥当でしょうか?
質問2
LH-RHagonistの効果について、主治医は
「(死亡する群から?)経口薬のみで4人に1人救えるのが、
LH-RHagonistの併用で3人に1人救えるようになる」
という表現をされていました。
そもそもの基準となるリスクがわからないので、
無治療の場合の再発率と生存率も教えて頂けますか?
また前回もタモキシフェン単剤の再発率(11%)を教えて頂きましたが、
再発率とは遠隔転移再発、対側新規、局所再発すべて合算した確率ですか?
質問3
そのような(LH-RHagonistの)効果のデータ或いは田澤先生のご経験からの実感はありますか?
前回の先生の回答はタモキシフェン単剤ですが
主治医の推奨が強いので、私は小葉癌で多発だし例外のパターンなのかな?と思い再質問させて頂きます。
最後に、田澤先生がお忙しい中このようなQ&Aを設けて下さっているおかげで、私の場合「全摘」という正しい判断がすんなりできたと思っています。
大変感謝しております。
ありがとうございました。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「主治医も「ノルバデックスと効果は変わらないけど、どっちかと言えばフェアストンがオススメ」
⇒フェアストンが「閉経後に適応」であることの認識は必要です。
保険上「閉経前でも許可されているのは、特定措置」なのです。
「そういった(複数のしこり、拡がり有り)状況を考慮して、病理結果はステージ1であってもリュープリンを薦める判断は妥当でしょうか?」
⇒妥当とは思いません。
小葉癌での拡がりは、通常のことです。
「無治療の場合の再発率と生存率も教えて頂けますか?」
⇒
再発率 | 生存率 | |
無治療 | 17% | 95% |
ホルモン療法 | 11% | 96% |
♯但し、生存率は他病死2%を含むので、「乳癌が原因で亡くなる確率は無治療で
3%、ホルモン療法をすると2%」となります。
「また前回もタモキシフェン単剤の再発率(11%)を教えて頂きましたが、
再発率とは遠隔転移再発、対側新規、局所再発すべて合算した確率ですか?」
⇒再発率とは「遠隔転移再発と局所再発の一部」を含みます。局所再発でも(温存した場合の乳房内再発や、リンパ節の手術時の取り残しは含みません)
「質問3そのような(LH-RHagonistの)効果のデータ或いは田澤先生のご経験からの実感はありますか?」
⇒実感はありません。