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HER2と投与の適正について

[管理番号:2103]
性別:女性
年齢:37歳
はじめまして。
9月に左乳房全摘手術をし、先生のご回答を心の支えにしております。
宜しくお願い致します。
HER2と、投与の適正についてお尋ね致します。
データは以下の通りです。
・乳頭腺管癌>硬癌
・腫瘍の大きさ3.5センチ(他に小さいものが散らばっていました) T2
・悪性度 2
・リンパ節転移 2/28 N1a
・ER,PgR 強陽性
・リンパ管侵襲 あり
・血管侵襲 なし
・断端 陰性
・Ki-67 5~10%
T2,N1a,MO ステージ2B
よって、ルミナールBの治療を開始しております。
提示された内容は
FEC4回、ドセタキセル4回、放射線(50G)25回、TAM+LHRHアゴニスト5~10年です。
このレシピは過剰投与とはなっていないでしょうか?
何故このような疑問を抱いたかというと、沢山のデータを持っている病院(都会)の先生だと、少ない投与を提示される事もある(8クールではなく4クールで終了等)と聞いたからです。
(術後の方針は地域性がある??)
また、過剰投与の場合、乳癌で死ぬ事はなくても心臓で死ぬかもしれない、とも。
既にドセの1回目まで終了し、個人的には標準治療に全信頼を置いて、
迷いも不安もなくここまできましたが、改めて確認・納得できたらと思います。
HER2は2+と出ましたので、FISH法で再検査したところ、1.8という数字でしたので、陰性とみなしハーセプチンは適用外となりました。
しかし、陽性に近い陰性である為、本当にハーセプチンをする意味はないのか?希望したところで保険適用外となるのか?と、モヤモヤしております。
明らかな陰性であれば諦めもつくのですが。
以上宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT2(35mm), pN1, pStageⅡB、luminal Aですね。
私であれば、ルミナールAで「リンパ節転移2個」ならば「ホルモン療法単剤」とし
ます。
LH-RHagonistの適応はSOFT試験からは「35歳未満」となりますが、「37歳」であれ
ば、併用も考慮となります。
「FEC4回、ドセタキセル4回、放射線(50G)25回、TAM+LHRHアゴニスト5~10年」「このレシピは過剰投与とはなっていないでしょうか?」
⇒私であれば「化学療法はしません」
 ただ、「もしやるとすれば」質問者のいうように4クール(TC療法)とします。
 その意味では「アンスラサイクリン+タキサン」は「ルミナールAで行う化学療法としては、(私は)決して行いません」
 
「また、過剰投与の場合、乳癌で死ぬ事はなくても心臓で死ぬかもしれない」
⇒「アンスラサイクリン」は「生涯投与量」さえ守れば「心臓で死ぬ」ということは
ありません。
 そのように言われているのは「心疾患が(日本に比べて圧倒的に多い)アメリカ」
の事情です。
 
「HER2は2+と出ましたので、FISH法で再検査したところ、1.8という数字でしたので、陰性とみなしハーセプチンは適用外となりました。しかし、陽性に近い陰性である為、本当にハーセプチンをする意味はないのか?」
⇒意味はありません。
 その辺りは検討されているのです。
 
「希望したところで保険適用外となるのか?」
⇒決してお勧めしません。
 
「明らかな陰性であれば諦めもつくのですが。」
⇒HER2 2+(FISH negative)は「明らかな陰性」なのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

お忙しい中迅速なご回答を本当にありがとうございました。
先生の見解は承知致しました。
術後の説明では、ギリギリルミナールAだが、思った以上に浸潤していたり、発症年齢とかを考慮したら、ルミナールBと考えていいだろうという事でした。
それで既にFECは終了し、ドセの一回目も終わっていますので、もっと早く御意見をお伺いし、比較検討すべきだったと後悔しましたが、過ぎたことなので(このまま最後までドセ、放射線と進むしかないかと…)今後の不安を再度お尋ねさせて下さい。
・もし過剰投与だとして、それに対するデメリットと、デメリットに対する対処法を教えて下さい。
・ホルモンは5~10年と提示されておりますが、やはり10年は続けた方が良いのでしょうか?
・遺伝性による乳癌を疑っておりまして、10代の娘がいることから、遺伝性乳癌の治験に申し込んでみようと思っております。
(ホルモン陽性も対象になると聞きました)
もし通った場合、提示されている治療内容が変わることはありますか?
また、治験に参加することによるデメリットを教えて下さい。
以上宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「Ki67 5~10%」で「ぎりぎりルミナールA」とはどういう意味でしょうか?
「ぎりぎり」ではなく、「完全な」ルミナールAです。
 
「もし過剰投与だとして、それに対するデメリットと、デメリットに対する対処法を教えて下さい。」
⇒デメリットは副作用です。 
対処法は「副作用を緩和する薬剤」となります。
 
「・ホルモンは5~10年と提示されておりますが、やはり10年は続けた方が良いのでしょうか?」
⇒「ATLASの長期結果」からは、そうなります。
 
「・遺伝性による乳癌を疑っておりまして、10代の娘がいることから、遺伝性乳癌の治験に申し込んでみようと思っております。(ホルモン陽性も対象になると聞きました) もし通った場合、提示されている治療内容が変わることはありますか?また、治験に参加することによるデメリットを教えて下さい。」
⇒治験もいろいろあるので、「参加する前に担当医」にきちんと聞いておくべきです。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

いつもご丁寧なお返事をいただきありがとうございます。
先生からのご回答で、理解と納得を得られております。
深く感謝致しております。
今は8回の化学療法が無事に終わり、解放感と安堵の気持ちで精神的には落ちついてきましたが、新たな悩みを抱えております。
宜しくお願い致します。
術後38才になりましたが、乳がんと分かるまでは子ども(2人目)を望んでおりました。
抗がん剤を使用する前に主治医が、お子さんを望みますか?
もし望むのであれば卵子凍結をしましょうと仰いましたが、その時は考える余裕もなくNOでした。
しかし8回目の後、再度お子さんは望みますか?と尋ねられ、精神的に落ち着いてきた今、迷いが生じております。
要約すると、
○抗がん剤を使用した後の卵子は奇形を伴っていないか。
○早ければ今月末から放射線照射が始まるが、卵子に影響はないか?
あるとすれば放射線照射は中止し、卵子凍結を先にするべきか。
○タモキシフェン、アゴニスト製剤を使用すると閉経してしまい子どもは望めないのか?
○そもそも、もう1人望めたとして、私にはその子を育て上げる寿命は残っているのか?
すみません、自分でも、不安と迷いばかり露呈していると思います。
ネットの情報では、もっと若い方が、ホルモン療法5年経過後に体外受精をなさった記事もありましたが、私の場合ですと43才になってしまい現実的ではないと考えております。
尚、主人は、卵子凍結の為に時間がかかり、次の治療(特にホルモン感受性が強いのでホルモン療法)が後回しになることで、本命の治療が延期されるぐらいなら、子どもは望まずに私の命を守りたいと言っています。
主人の子を産んであげたい、でも怖い(今いる子どもは障害を持っています)タイムリミットが近づくにつれ、希望と現実の狭間で堂々巡りしております。
どうかお力をお貸し下さいませ。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「○抗がん剤を使用した後の卵子は奇形を伴っていないか。」
⇒大丈夫です。
 抗ガン剤使用による「催奇形性の増加」は否定されています。
 
「○早ければ今月末から放射線照射が始まるが、卵子に影響はないか?あるとすれば放射線照射は中止し、卵子凍結を先にするべきか。」
⇒放射線は局所療法なので関係ありません。
 
「○タモキシフェン、アゴニスト製剤を使用すると閉経してしまい子どもは望めないのか?」
⇒タモキシフェンは無関係です。
 LH-RHagonistは投与中は「無月経」となりますが、殆どが「可逆的」であり、「投与終了後再開」することが解っています。
 
「○そもそも、もう1人望めたとして、私にはその子を育て上げる寿命は残っているのか?」
⇒考え過ぎです。
 根治する可能性の方が高いのです。
 
○なお、妊娠出産は「再発率をあげない」ことが解っています。
 治療をここまで頑張ったのだから、前を向いて「本当に望んでいる事」に進んでください。