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抗がん剤TCかTS-1の選択について

[管理番号:1228]
性別:女性
年齢:38歳
始めて質問させて頂きます。
8月に温存で手術をしました。転位はありませんでした。
術前の針生検では、
女性ホルモン陽性、グレード1、Ki67 14.6
の比較的おとなしめの乳ガンだといわれていて、術後は女性ホルモンを抑制する治療
と放射線治療をすると言われいたのですが、術後の検査結果が、
グレード3、Ki67 35.6となり、術後に抗がん剤治療を追加したほうがいいと言われていて、
点滴によるTCか、経口薬のTS-1どちらかの選択をするように言われいます。
経口薬は比較的副作用が少なく脱毛しないようです。自分では
決められず、田澤先生のご意見をお伺いできないかと
思って質問させて頂きました。この2、3週間なやみ決めきれず、来週には答えをだし、
10月から治療しないと間に合わないのではと焦るばかりです。
すみません。どうぞよろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
メール内容は了解しました。
この回答は極めて容易です。
それはTC療法しか『ありえない』という回答です。
質問者をはじめ、一般の方が「ご存じで無い内容」があります。
今まで色々なQandAに回答してきて、当然気づいていました。
本来、担当医が「乳腺専門医」ならば決して誤ってはいけない内容である筈なのです
が、「必ずしもそうではない」事が明らかになりました。
『適応外使用』です。
この機会に(転移再発や手術不能ではない)術前術後乳癌に対する
①標準治療 
②(標準ではないが)適応内ではある治療 
③『適応 外治療』 
について、解説します。
①標準治療
 アンスラサイクリンまたはタキサン
 ・術前術後の化学療法では、『標準治療はこれだけ』です。
 ・術前抗がん剤で「薬剤の効果を知っても仕方が無い」と私が主張している根拠
は、まさにコレです。(効かないからと言って、他の抗がん剤を使用することは不可
能なのです)
 ・具体的レジメン 
  タキサン TC
  アンスラサイクリン EC, AC, FEC
  アンスラ+タキサン アンスラ(EC or AC or FEC)+タキサン(DTX or PTX)
②(標準ではないが)適応内ではある治療
 UFT
 ・術前術後療法として唯一使用できる「経口」抗がん剤
 ・かつての「標準療法であるCMF」に対する非劣性試験で「非劣性を証明できな
かった」治療法⇒だから「標準治療にはなり得なかった」
 ・アンスラタキサン以外の唯一の選択肢
③適応外治療
 TS-1を含め、その他すべての薬剤 
 ♯ アブラキサンも貼付文章に「本剤の手術の補助化学療法における有効性及び安
全性は確立し ていない」と記載があります。
 
★TS-1を術後補助療法として、今回担当医が「選択肢として」勧めている理由には検
討がつきます。
 それはSELECT BCという臨床試験です。
 この試験で「タキサン系に対する非劣性を証明したから」という根拠でしょう。
 ただ、これについては「検証作業が未」であり、当然ながら「貼付文章でも『手術
不能又は再発乳癌の場合 (1)術前・術後補助化学療法として、本剤の有効性及び安全
性は確立していない。』という記載なのです。
★以上、TS-1の術後補助療法としての使用は、明らかな『適応外使用』なのです。
 それを承知として「確信犯」として使用するつもりなのでしょうか?

回答

「点滴によるTCか、経口薬のTS-1どちらかの選択をするように言われいます」
⇒TCです。 TCしか選択できません。
冒頭にコメントしたように『TS-1は適応外使用』となります。
もしも「経口薬を選択」するならば、(標準治療からは外れますが)「UFT」しかあ
りません。
○質問者は「TS-1が適応外使用」であることを担当医から告げられていますか?
 薬剤には「適応症がある」のです。
 もしも「予想外の有害使用」があっても「適応外使用では、製薬会社の責任は問え
ない」可能性があります。