[管理番号:1758]
性別:女性
年齢:44歳
田澤先生 はじめまして。
7月に乳がんの診断をされ、10月に左乳房全摘手術を受けました。
病理検査の結果で、主治医から勧められた治療方針はホルモン療法でした。
抗がん剤治療については自己の判断に委ねられる模様でしたが、再発リスクの軽減を考えるとAC+タキサン(8クール)かTC(4クール)の抗がん剤とのことでした。
私は抗がん剤を使用しない場合の再発・転移のリスクと、予防のための抗がん剤治療でQOLの低下リスクを比較してみて、抗がん剤を使用するメリッ
トが少ないのであればホルモン療法のみを希望します。
そこで先生に質問です。
・私の場合は、サブタイプはルミナールAとBどちらの分類になりますか?
また、抗がん剤の上乗せ治療は必要でしょうか?
・針生検での結果で、ホルモン受容体のみ+プレパレートではMIB-1は50%だったので、主治医に
抗がん剤の上乗せ治療を勧められていました。しかし、病理診断では、MIB-1が高い所で20%だったので、
抗がん剤については、自己の判断に委ねると変わったことから、治療方針は病理の結果だけを
以って検討するのですか?
・サブタイプはKi-87が低いとルミナールA、高いとルミナールBで分類されると聞いていますが、
この境界線の値は何%ですか?
・診療ガイドラインでKi-67の評価方法は標準化されておらず、研究によりさまざまで一定していないと
記載されていました。Ki-67の信ぴょう性はあるのですか?
以上、先生の見解を伺いたくよろしくお願いいたします。
<針生検>
浸潤性乳管癌・乳頭腺管癌
ER陽性95%程度 PGR陽性95%程度 MIB-1陽性率50%程度
核グレード2相当(核異型度2+核分裂像2)
<病理>
Invasive ductal carcinoma of the left breast, mastectomy.
-Lt.A, 2.2×2.0×1.7㎝(腫瘍浸潤径),f,ly,-,v-,ER+, PgR+, HER2:-, sn(1/2)(mi)+n(0/14), margin(-).
Nuclear gradeは2(核異型:中等度(score2)、核分裂像:7個程
度/10hpf(score2))。免疫組織学敵に
HER2は陰性,Estrogen receptor陽性(80%程度、weak~
moderate)、Progesterone receptor陽性(80%程度、
weak~moderate)。MIB-1陽性率は高い所で20%程度。
リンパ節sn(1/2)(mi)+n(0/14)。
L-001:リンパ節レベルⅠ+Ⅱ, (0/14)
L-002:センチネル①、(0/1)5分割。腫瘍の転移なし。
L-003:センチネル②、(1/1)4分割。最大約1mmの転移巣あり。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT2(22mm), pN1mi, NG2, luminalAですね。
通常であれば、「化学療法は不要」と思います。
回答
「私の場合は、サブタイプはルミナールAとBどちらの分類になりますか?」
⇒ルミナールAです。
「また、抗がん剤の上乗せ治療は必要でしょうか?」
⇒「抗がん剤による上乗せ」は7%となります。
「一桁」では「副作用とのバランス」からは(私は)勧めません。
「治療方針は病理の結果だけを 以って検討するのですか?」
⇒その通りです。
「針生検はあくまでもサンプリング」です。
○針生検では「ルミナールB」となり、「化学療法の適応」と考えるべきでしたが、「手術標本ではルミナールAとなった」のです。
ルミナールAでの「化学療法の追加」はSt.Gallen 2015からは「リンパ節転移4個以上」と考えています。
「この境界線の値は何%ですか?」
⇒「10~30%」は中間ゾーンと呼ばれるようになりました。St. Gallen 2015の
publishより
ただし、元のvoting結果では「その境界が20-29%にある」と考える人たちが最も多かったのです。
よって「20-30%に境界が存在する」と考えています。
「Ki-67の信ぴょう性はあるのですか?」
⇒あります。
Ki67は施設によるバラつきなどの問題点も確かに多いですが、いまだ有用と思います。
St.Gallen 2015でも「Ki67は臨床的に有用」と最終的に結論しています。